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your name?

○○編の名前が変わるかも~と言って早々変わりましたね。「花車編」です。花車とはガーベラのことで、花言葉は「常に前進」。




中学生くらいの女の子(どこぞのお金持ちのお嬢様)になぜか気に入られ、彩歌さんは”友達1号”そして俺は”友達2号”と名付けられてしまった。一号と二号がこの瞬間に誕生したということは、やっぱりこの子友達いなかったんだなぁ…。


「私たちが友達なら、君のことはなんて呼べばいいっスか?」


彩歌さんナイス!!これで自然にこの子の名前が聞ける!少々ドヤ顔気味の彩歌さんに尊敬のまなざしを送っていると、少し悩んだ末に女の子が答えた。


「あたしの友達なんだから特別に、好きに呼んでもいいわ!」


ありがたく思いなさい!みたいな顔されたけど、ぜんっぜんこれっぽっちもありがたくない。一文字も名前がわからなかった。もう聞いちゃう?いっそ聞いちゃいます?your name?って外国版の映画のタイトルみたいに。


俺は対人スキルが高くないからこういうときはきちんとシミュレーションをして挑むことにしている。うまくいったことはあまりない気もするが。


your name?後の反応予測


①「まだ言ってなかった?あたしの名前は~」普通に答えてくれる。これがベスト。


②「このあたしの名前を知らないですって?」目をつり上げて怒られる。怒られるのは嫌だ。


③「なんであたしが名乗らないといけないのよ!!」泣きながらキレられる。面倒で嫌だ。


だいたいこんなもんかな。3分の2の確率で怒られるかキレられる。けれどまぁ、仕方ない。その時は彩歌さんを連れて逃げよう。うん、そうしよう。


覚悟を決めて名前を聞くことにする。


「君の名h…」

「そういえば名前言ってなかったわ。真壁(まかべ)(ひめ)よ」


姫…ぴったりですね。


「姫ちゃんはいま中学生っスか?」

「えぇ。中学3年生よ」

「受験生っスねぇ。頑張ってくださいっス」

「……もう一回言って」


穏やかに会話していたのだが、急に姫ちゃん…姫さん?…姫さま?が待ったをかけた。


「中学生っスか?」

「違うその後よ」

「受験生っスね」

「その後」

「頑張ってください?」

「もう一回」

「頑張ってください」

「もう一回」

「頑張ってください!」

「もうい、」

「何回言わせるんだよ姫」


何度も何度もまるで部活動の掛け声の練習かの如く繰り返す2人を止める。怒ったかな?と思って姫の反応を窺っていると、くるっと今度は俺の方に振り返ってお決まりのセリフを言ってきた。


「もう一回」

「え、何を?」

「名前」

「名前……?あぁ呼び捨てにしてごめんな」

「謝ってほしいんじゃない。もう一回言って」

「姫、姫、ひーめー」


すると姫はふにゃふにゃと嬉しそうな顔で笑った。


「頑張ってって言われたのも、姫って呼び捨てにされたのも初めて。友達っていいね!」

「やだなにこの子かわいいっス!」


がばっと彩歌さんが姫を抱きしめる。その間も姫の顔はゆるみっぱなし。このままだとゆるゆるに溶けてしまうんじゃないだろうか。それにしても呼び捨てはともかく「頑張れ」も初めてって一体どういう……。


俺としては友達というより、秋人と歳が近いのもあってか姫は妹みたいな感じだ。どうかこの子にこれから友達が増えますようにと、姫の頭を軽く撫でた。


こうして連絡先を交換したあと、俺は再び生放送中のスタジオの客席に戻ったのだった。








テレビ局から出てLuna(ルナ)×Runa(ルナ)の2人と俺の家に行き、早速道中で作った曲をプログラムしていく。本当はすぐにでも演奏したいのだが、俺にはというより正確には俺一人では演奏できないのだ。


俺がパソコンに向かって音を組んでいる間、Luna×Runaの2人がさっきまでの歌番組の感想を言い合っていた。


「やっぱり私たちが見込んだ人なだけあって、演奏する姿は格好良かったね~」

「わ、わわ私達の目に狂いはなかった。で、でも最後の曲もすごかった」

「そうね。あの曲の作曲家さんってたしか…」

「できました。これから色々手直しはしていきますが、こんな感じです」


パソコンのキーを押して出来上がったばかりの曲を再生する。


「複雑な曲ですねぇ」

「ゆ、ゆゆ指が何本あっても足りなさそう」

「そうですね。この曲は20本の指で弾く曲です」

「20本……?まさか」

「そうです。この曲は」

「足で弾くの?」

「ちっっっっっがいますよ!」


なんで足で演奏するっていう突拍子もない発想が飛び出てきたかな!?本田さんはまさか天然か!?20本の指、つまり4つの手で演奏すると言ったら――


「れ、連弾?」

「そうです。この曲はピアノを2人で弾く曲です」


1台のピアノで2人の奏者が演奏する二重奏のことを連弾、four-hand performanceという。


「俺はこの曲をLuna×Runaの2人に弾き語りしてもらいたいと思ってます」

「ひ、ひひひひひひひひ弾き語り!?」


ひ、の多さに動揺具合が窺える。


「でも私達ピアノは弾けないわ」

「知ってます。だからこれを機会にピアノに挑戦してください」


どうせ最後と思えばなんだってできる。もちろんこの曲『星屑の軌跡』をLuna×Runaの2人の最後の曲にさせる気はさらさらないが。そのために手回しもした。使える人脈は全て使った。フッフフフハーハハハッ!


「智夏ちゃんが悪い顔してるわ」

「き、記念に写真撮っとこう」

「やめてください」


今すぐにピアノを弾けるようになるわけではないので、将来的にライブでそういう演奏ができればいいという話だ。この曲は最後の思い出の曲ではなく、未来のための第一歩の曲である。



~執筆中BGM紹介~

蒼穹のファフナー EXODUSより「DEAD OR ALIVE」歌手:angela様 作詞:atsuko様 作曲:atsuko様/ KATSU様

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