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正しく理解する

今回は!遅刻せず!

…毎回遅刻している理由は、ストックしていないせいですね。毎回書きたてほやほやの新鮮な状態です。ぴっちぴちです。普段は予約投稿しているのですが、遅刻しているときはだいたい書きたてのときです。




「どうせ最後の曲なんですから、好きなように歌いませんか?」


俺の突拍子もない提案に首を傾げるLuna×Runaの二人。今までのアイドルとして歌ってきた曲を否定するわけじゃない。でも、いままでと同じではきっと…。


「す、好きな、ように…」

「つまり、アイドルっぽい曲をやめる、ということでしょうか?」

「そういうことになります」


猫平さんと本田さんが顔を見合わせ、次いで頷き合った。


「私達は、今まで会社の意向で言われるがままアイドルをやってきました。嫌々やっていたわけではないんです。ファンの皆さんにも本当に感謝しています。ですが、ずっと不安だったんです。このままじゃきっと先はないって」


両手をぎゅうっと握りしめ、その両目は不安に揺れているが、決して否とは言わなかった。


「わ、私たちがアイドルを卒業することは、ファンのみんなを裏切る行為になる。で、でも、それでも!私たちは未来を自分たちの手で切り開きたい!お願いします!どうかLuna×Runaだけの曲を!作ってください!」


今までやってきたことをやめて、新しいことに挑戦するのにはとても勇気がいる。しかもこれからの人生がかかっているのだ。生半可な覚悟では手を出せない。それでも二人は「やる」と言ったのだ。だから俺はその気持ちに答えられるように全力を尽くす。


「それでは今からお二人は社長さんにアイドルのLuna×Runaではなく、歌手のLuna×Runaとして曲を作ることの許可をもらってください。俺も許可をもらってきます」

「私たちはともかく、智夏ちゃんにも許可がいるのですか?」

「……いる、です」

「いるです?」


スタジオブースの端に寄って彩歌さんに電話をかける。出るかどうかは運次第だったのだが、幸いにもすぐに電話は繋がった。


「彩歌さん、いま大丈夫?」

『ちょっとなら大丈夫っスよ。どうかしたの?』

「えーと実はですね、―――――」


電話をかけた目的を話したあと、数秒くらい沈黙が続き、かと思えばスマホの向こうから笑い声が聞こえてきた。


「さ、彩歌さん?」

『うん、ごめん。でも、なんだか嬉しくって。私のことを大切に思ってくれてるんだなーって伝わってきて、幸せを噛みしめてたっス』


彩歌さんは俺が不安にならないように、よく自分の気持ちを言葉にしてくれる。それがどれだけ救いになっていることか。


『いいっスよ!智夏クンなら大丈夫って信じてるっスから。……でも、浮気はダメよ?』

「ある人のことが好きすぎて浮気なんてする余裕ないですよ」


自分でも呆れるほどに、好きになってしまった。


『ちょっ!?いま職場なんでそういうびっくりすること言わないでくださいっス!』

「最初に言ってきたのは彩歌さん…ま、いいか。忙しいときにありがとう。またね、彩歌さん。…浮気はダメですよ?」

『しないっスよ!?もう!またね!』


よぉし彼女からの許可ももらえた。そして次は…社長かな。会社から支給されているスマホを取り出して社長に電話をかける。


『どうだ?曲作りは順調か?』

「そうですね。方向性は決まりました」

『それはよかった。で?何の用だ?』

「提案がありまして。いま作ってる『月を喰らう』の劇場版の件で…」

『ほほう?』


社長との交渉も順調に進み、スマホをカバンにしまって後ろを振り返ると、本田さんたちもちょうど電話を終えたところだった。


「どうでしたか?」


結果を聞くと、二人ともホッとした表情で答えてくれた。


「思いっきりやれ、だそうです」

「さ、最後の思い出作りに、って意味だと思う。けど、都合が良い」

「そうですね。そちらの社長をぎゃふんと言わせる楽しみも増えました」

「なかなか良い性格をしていますね、智夏ちゃん」

「お褒め預かり光栄です」


紳士風に頭を下げて見せると、猫平さんに呆れたような目を向けられてしまった。


「ち、智夏ちゃんの方の許可も、取れたの?」

「ばっちりです。これで心おきなくお二人の曲を付きっきりで作れますね」

「「付きっきり?」」


息ぴったりに聞き返してくる姿は、長年アイドル活動で培ってきたチームワーク故か。


「はい。これから一週間お二人に付いて回りますので、よろしくお願いします」

「「えー!?」」


今までソロ曲は作ったことがあっても2人の曲は作ったことがないし、何よりLuna×Runaの二人のことをまだ何も知らない。


「俺はLuna×Runaの魅力を最大限引き出せるような曲を作りたいんです。が、まだ魅力がよくわからないので、この一週間で探ろうかと思いまして」

「智夏ちゃんは正直ですね」

「み、魅力がないって言われた気がする…」

「魅力がないとは言っていません。よくわからないと言ったんですよ」


落ち込む二人に慌てて言葉を重ねる。


「さっき歌ってもらって、魅力の一つはわかりましたし!」

「それは一体……?」

「歌唱力です。しっかりと高音域を安定して出せるその技術はLuna×Runaの主たる魅力であると思います」

「歌唱力…そ、そんなこと初めて言われた」

「たとえお世辞であっても嬉しいですね」


謙遜だろうかと思ったところで、その考えを否定した。この二人は謙遜しているわけでも恥ずかしがっているわけでもなく、褒められ慣れていないのだろう。だから俺の言葉に戸惑っている。


「本心ですよ。お二人の魅力は、高い歌唱力です。そしてこれから一週間でさらに魅力を見つけていきます」


自分の実力を正しく理解すること、それは高みを目指すのに必要な過程ではないだろうか。




~執筆中BGM紹介~

ハイキュー!!より「イマジネーション」歌手:SPYAIR様 作詞:MOMIKEN様 作曲:UZ様

読者様からのおススメ曲でした!

俺は行くよ~Oh、Oh!

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― 新着の感想 ―
[一言] アイドルの少女二人に粘着する男子高校生・・・単なるストーカーでは警察は動いてくれないかな? ストーカー規制法の原因となった埼玉県警上尾警察署なら動いてくれるかな?地元だし・・・ 夏君、また…
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