あーそーぼー!!
どうも、遅刻常習犯です。毎度ごめんなさいィィィ!
「「智夏ちゃ~ん!あーそーぼー!!」」
…みなさんこんにちは。御子柴智夏です。現在諸事情により公園の遊具に隠れています。
「お兄ちゃん、ここに隠れてるのバレてるよ?」
世の中は冬休みに突入しているので平日でも公園には子供たちがいっぱいだ。そしてそんな幼気な子供たちに協力してもらって、2人の女性から身を隠している。…バレたみたいだけど。
なんでこんなことになったんだっけ?
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お星さまカフェでアイドルの二人にクビがかかった作曲依頼をされたのだ。
「お願いします。どうかLuna×Runaに曲を作ってください!」
「お願いします!」
ミルクティーみたいな髪色だけど大人な雰囲気の本田月子さん。そして桜色の髪色だけどすっごい暗い猫平瑠奈さんの二人はLuna×Runaという名で活動しているアイドルだ。しかし次の曲が売れなければ会社をクビになりそう、ということで俺に曲の依頼がきたというわけだ。
「少し、考えさせてください」
「わかりました。色よい返事をお待ちしていますね」
「ま、待ってます」
とりあえず連絡先を交換しましょう、と本田さんから提案されてスマホを取り出して連絡先を登録する。
「では、失礼します」
伝票を取って会計を済ませて、香苗ちゃんとカフェを出る。このあと別の用事があるという香苗ちゃんとカフェの前で別れて駅に向かって歩いていると、背後から交互に声が聞こえてきた。
「私達と一緒に曲作りをしましょう」
「き、きっと楽しい。あぁ…パリピになんか見られてるぅぅ」
「智夏ちゃんにとっても良い経験になるはずです」
「い、一生消えない冬の思い出に、なる。うぅ…子供にピンク頭って言われたぁぁ」
さっき「返事を待つ」って言われたよな?え?この人たち全然待ってくれないんだけど。後ろからめっちゃ催促してくるんですけど。
「あの、本田さん、猫平さん」
「は~い」
「は、はい」
「返事を待ってくれるのでは?」
「はい。だからこうしてアピールしながら待っています」
「さ、催促するなとは言われていない」
屁理屈だ…。そっちが大人げなくそういうことをやってくるなら俺だってやってやる!
「すみません!」
戦略的撤退、敵前逃亡、なんとでも言うがいい。俺は逃げる。情けなくとも女性二人から走って逃げる!
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全力で走って近くの公園に駆けこんで。子供たちに頼んで遊具の中に隠してもらって。
「「智夏ちゃ~ん!出ておいでー!!」」
なのになんでバレたんだろ?全力で逃げたのに余裕で追いつかれるとかカッコ悪すぎだし。
さすがに周りの奥様方からの視線が怖くなってきたので観念して遊具から出た。
「ずっと付いてくるんですか?」
公園の端に3人で移動して、後ろにぴったりと付いてくる2人に質問をする。
「さすがにトイレには付いて行けませんね」
「お、お風呂にも行けない」
「……家まで付いてくる気ですか?」
「「お邪魔します」」
このとき、俺は根負けしてしまった。このままでは順応力が高い香苗ちゃんと秋人と冬瑚にこの2人が受け入れられて居候することになってしまう。一瞬でそんな未来が見えた。だから、受け入れる方が楽だと思ってしまったのだ。
「わかりました。依頼、お受けします。作りますから居候しないでください」
「「居候?」」
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Luna×Runaの二人の居候化をなんとか阻止した翌日の朝。
「「おはようございます!!」」
Oh…誰だよ家の場所を教えたのは。さすがはアイドル。笑顔が眩しいぜこんちくしょう!
「おはようございます。…どうしてここに?」
「智夏ちゃんに私たちのことを知ってもらおうと思いまして」
「ス、スタジオを借りてきました」
「車で行きましょうか」
てっきり車を運転するのは本田さんだと思っていたのだが、運転席に乗ったのは猫平さんだった。
「あぁ…いま私が運転するのは意外だって思われた。ショック…く、暗くても運転くらいできる」
「すみません!」
「ふ、ふふ。少しからかっただけ」
「非常にわかりづらいからかいをどうも!」
「お、おおおお怒られたぁぁ」
「猫平さん、前!前を見て!!」
「仲が良いですねぇ」
スリリングな運転でなんとかスタジオに着いたときには、車酔いが酷かった。
「うっ…気持ち悪い」
「瑠奈ちゃんの運転はいつも楽しいですね~」
「え、えへへ。照れるよ月子ちゃん」
よれよれと歩きながら借りたスタジオに入ると、本田さんから一枚の紙を渡された。
「これは、歌詞ですね」
「はい。私達はいつも自分たちで作詞しているんです」
この歌詞…なんというか。
「ふわふわしてますね」
かわいい言葉でひらひらとラッピングしてふわっふわな歌詞。何が伝えたいのかいまいちわからない。
「あの、一度歌ってもらっても?」
「もちろんです」
二人の持ち曲を聞いて、それぞれ別々に歌ってもらって。最後に思い付きで国歌を歌ってもらって。散々考えて、結論を伝える。
「どうせ最後の曲なんですから、好きなように歌いませんか?」
甘い声で歌うときよりも、高音域で歌う方が伸び伸びとしていて、とても気持ちがよさそうだった。それに、2人ともかなり歌唱力が高い。それを十分に活かせる曲を作ってみたい、と思ったのだ。
~執筆中BGM紹介~
聲の形より「恋をしたのは」歌手・作詞・作曲:aiko様




