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あたまが、

またまた遅刻です。ごめんなすび。あと、女性に迫られるのもちょっと先の話ですた。フライングしてすんまそん。


今回は冬瑚視点。






最近みんなの様子がおかしい。


香苗ちゃんは使っていない部屋で一人ゴソゴソと何かを探していたし、夏兄と秋兄は二人だけでどこかに行く約束をしていたの。


香苗ちゃんはともかく、夏兄と秋兄が一緒にどこかに行くなんて冬瑚が知る限り初めてのことだから付いていきたかったんだけど、その日は津麦(つむぎ)ちゃんと遊ぶ約束があったから付いていけなかった。少し気持ちが沈んでいたけど、そんなこと津麦ちゃんに会ったらすぐに忘れちゃった。


「津麦ちゃーん!!」

「とーうこー!!」


学校で別れてからまだ一時間くらい?しか経っていないけどぎゅぎゅうと抱き合いながら再会を喜んでいると、津麦ちゃんの後ろから声が聞こえた。


「おーっす、冬瑚ちゃん」

「お、おおおおおおお兄しゃん!?」


右手を上げて笑顔を向けてきたのは津麦ちゃんのお兄さん。今日も素敵・・・!あ~なんで噛んじゃったの~!お兄さんに笑われたらどうするの!


恥ずかしくて顔を上げられない冬瑚の頭にポンポン、と温もりが落ちてきた。涙目で顔を上げると、お兄さんが冬瑚の頭をなななな撫でていた!


頭を撫でられて嬉しい!けど、子ども扱いされたのは悲しい!心の中で相反する気持ちになっていたとき、津麦ちゃんが冬瑚の手を取って走り出した。


「冬瑚!今日はお買い物に行くぞ!」

「にぇ!?お買い物!?」

「お金は?」

「言われた通り持ってきたよ」

「じゃあ行こう!」

「え?え?どこに行くの?」


津麦ちゃんに引っ張られながら一緒に走る。後ろをチラッと見たらお兄さんも一緒に付いてきていた。えー!ほんとにどういうこと!?


着いたのは近くのバス停で、そこには先客が待っていた。


「久しぶり冬瑚さん」

「征義《せいぎ》君だー!」

「征義も来てたの?」

「兄さん一人だけじゃ心配だからね」

「兄の威厳はどこ行った」


津麦ちゃんの双子の弟の征義君がバス停で本を読みながら待っていた。何の本を読んでいるのか気になって表紙を覗き込んだら『10代の世間の歩き方』ってタイトルだった。内容のイメージが全然わかなかったけど、冬瑚たちはまだ10歳にもなってないよ?


結局行き先はわからないまま津麦ちゃんと征義君とお兄さんと冬瑚の4人でバスに乗った。バスに乗る直前に「知らない人について行ってはいけません!」って脳内で秋兄がなぜか割烹着を着て叫んでたけど、みんな知ってる人だし大丈夫。




着いた先は駅前のお店がいっぱい並んでいる商店街だった。そろそろ気になるので、隣を歩く津麦ちゃんの腕をつつく。


「どこに行くの?」

「それはねぇ、あ!じゃ~ん!このお店で~す!!」

「ん~?なんか甘いいい香りがする!」

「このお店でサンタさんへのお礼のクッキーを買うのです!」


バーン!と今回の目的を告げたのは津麦ちゃん・・・ではなくて征義君だった。


「ちょっと征義ー!!津麦が言いたかったのになんでセリフ取っちゃったの!!」

「ごめん出来心でつい」

「小学二年生で”出来心”とか言うのお前くらいだろ」


田中兄弟の仲睦まじい様子を見て、少し兄達が恋しくなってしまった。すると津麦ちゃんにヘッドロックを掛けられていた征義君が青い顔で向こうを指さした。


「あの人って冬瑚さんのお兄さんだよね?」

「え?・・・あ!夏兄と秋兄!」

「あれが噂の秋兄かー!会いに行こうよ!!」

「あ~やめとこ。俺たちはクッキー買いに行こうな」

「「「え~」」」


3人をグイグイ店内に押しながら夏兄たちと離れていく。この場で唯一田中だけが智夏と秋人が冬瑚のクリスマスプレゼントを買いに来ていることに気付いたので、空気を読んであえて引き離したのだった。その帰り際、逆に智夏と秋人にたまたま冬瑚と二人っきりになったときを思いっきり見られていたとも知らずに。




海と水族館で思いっきり楽しんだ12月24日の夜。寝る前にいそいそとこの前買ったクッキーを3つ机の上に置いておく。すると置いた途端にハルが机に飛び乗った。


「な~お~」

「ハル、これはサンタさんにあげるから食べちゃダメだよ!」

「にゃん~」


ネコに日本語ってわからないかな?


「にゃにゃ、にゃにゃにゃ~にゃにゃ!」

「にゃ~ん」

「あ、通じた!」


謎の達成感に浸りながらベッドにもぐりこむと、すぐに夢の世界に吸い込まれていった。その数時間後、サンタとハルの攻防戦が横で繰り広げられている中、冬瑚は綿菓子に乗って空を飛ぶ夢を見ていた。







今までで一番楽しかったクリスマスが過ぎた数日後。夏兄の様子がおかしかった。クリスマス前みたいなおかしさじゃなくて、なんていうか変だった!


「夏兄、変!」

「いきなり変とかお兄ちゃん傷つくよ?」


と言いながらフラフラ歩いてる。これは相当変だ!


「香苗ちゃ~ん!秋兄!夏兄が変なの!!」

「兄貴が変なのはいつものことだろ?」

「そうそう」


口ではいろいろ言ってるけど、すぐに2人とも夏兄の部屋に来てくれた。元はと言えば終業式なのになかなか起きてこない夏兄を心配した秋兄が冬瑚に「起こしてきて」って頼んだんだけどね。


「え~みんな、ひどぉ~ととと!?」


力が抜けたみたいに秋兄に倒れ込む夏兄。


「うぉわ!兄貴どうしたんだよって、あっっっつ!」

「そんなに?って夏くんお熱でてるじゃん!」

「夏兄死なないでー!!」

「いや死なないからね。あと冬瑚、もうちょっと声を小さく・・・」

「え?そんなに大きい声出してないよ?」


秋兄にベッドに放り込まれながら「あ~」とか「う~」とか唸っている夏兄。


「、、、が、、ぃ」

「「「え?」」」


息苦しそうに話す姿はとってもつらそうで、夏兄が何か言ったけど聞き取れなかった。


「あたまが、」

「「「あたまが?」」」





「い」

「「「い?」」」





「いたい」








「「「な、なななんですとぉー!?」」」

「大きい声出さないで・・・」




~執筆中BGM紹介~

「正解」歌手:RADWIMPS様 作詞・作曲:野田洋次郎様

読者様からのおススメ曲でした!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 遂に無痛症が治った⁉︎ 痛いのに治ったというのも変だけれど。
[一言] クリスマス終わったし、これで夏君を通報し放題だあっ!・・・と思ったら冬瑚ちゃん視点だから通報する隙がないっ! 冬瑚ちゃん、夏君が変ではなくなったらそれは既に夏君ではないのです。なので変な夏…
感想一覧
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