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宝石箱

ようやくプレゼントの中身が!




12月25日のクリスマス当時の朝。俺たちサンタは寝るのが遅かったのにも関わらず、冬瑚の反応が気になるのか、3人とも少し早く起きてお姫様の登場を待っていた。


タッタッタッと軽やかな足音が段々と近づいてくるのが聞こえた。そして部屋に入るなり俺たちに自慢するように腕の中のプレゼントを見せてきた。


「サンタさんからプレゼントが届いたの!しかも3つも!!」


本当はプレゼントを見つけたその場で開けたかったのだろうが、皆の前で開封しようと思い直して急いで居間までやって来たのだろう。なんていじらしい。かわいいの宝石箱や~。


「冬ちゃん、開けてみたら?」

「うん!カッター使っていい?」

「テープは僕が切るよ」

「ありがと秋兄!」


ここでわかったのがプレゼントの開け方が冬瑚は秋人と一緒なこと。俺はテープの部分は切らずに剥がしている。なんか疎外感が。お兄ちゃん悲ぴい。


秋人が丁寧にテープを切る。ちなみにテープが使われているプレゼントの包みは一つだけ。残り2つはリボンを解いたり、シールを剥がせばすぐに開けられるタイプだ。


秋人がテープを切り終わり、冬瑚の元にプレゼントを返す。冬瑚は受け取ったそれをそわそわしながら開けた。ちなみに冬瑚が今持っているテープが使われていたプレゼントは香苗サンタからのプレゼントである。


丁寧に包装紙を剥がしていき、中から現れたものは・・・


「カメラだぁ!!」


冬瑚が取り出して見せてきたのはベージュのデジカメだった。


「見て見て!カメラだよ、夏兄、秋兄!!」

「「う、うん。良かったね」」


さすが香苗ちゃん。プレゼントにカメラを選ぶとは・・・!冬瑚は嬉しさのあまりぴょんぴょんと飛び跳ねている。


非常にまずいぞ、これは。RPGで一番最初にラスボスが登場したくらいやばい。俺も秋人もカメラ以上のものを選んだのかと言われれば自信がない。完全に順番をミスったー!!秋人も同じことを思ったのだろう、目が死んでいる。


そんな兄たちの情けない心情など気づいた様子もなく、次のプレゼントに手を付ける冬瑚。手に持ったのはリボンで袋が留められているプレゼント。次に選ばれたのは、秋人サンタのプレゼントでした。・・・つまり俺からのプレゼントは大トリを飾るわけですね。うぅっ授業で音読の順番まわってきた時より緊張する。


「あー!これってもしかして!!」


袋の中身を覗いた瞬間に冬瑚が叫んだ。そして中身を一瞬で理解すると、それを取り出して素早くそれを付ける。


「似合ってるー?」


裾をちょん、と持って聞いてきた。秋人が選んだプレゼントはエプロン。猫がいっぱい描かれたエプロンだ。


「「「可愛い」」」


さすが秋人。サイズが冬瑚にぴったりなのもそうだが、なにより冬瑚に似合っている。猫柄なのもポイントが高い。なんのポイントだよって?そんなの俺の弟が可愛いポイントに決まっているじゃないか。もちろん俺の妹が可愛いポイントもある。


「えへへ。これで秋兄のお手伝いしやすくなるね!」

「だな」


秋人に抱き着いて天使みたいなことを言う冬瑚。秋人も思わずにやけてしまっている。今日も弟妹が尊いです。ありがとう世界!


「じゃあ最後にこれ開けるね!」


エプロンを着たまま最後のプレゼントに手を伸ばす冬瑚。俺からのプレゼントは紙袋にクリスマス仕様の丸いテープが貼られているだけなので、比較的簡単に取ることができる。実際に冬瑚も手間取った様子もなく、紙袋を開けて中身を見る。


気に入ってくれるだろうかー?


「・・・・・・」


え、どうしよう無言になっちゃった。不安になって冬瑚の名前を呼ぶのと同時に冬瑚が香苗ちゃんを呼んだ。


「と、冬瑚?」

「香苗ちゃん!お願いこっち来て!」


わけがわからず言われた通りに冬瑚についていく香苗ちゃん。二人はそのまま部屋を出てしまった。


「え?そんなにダメだった?女子会議開くほどにダメ?」

「兄貴、冬瑚にクワガタでもあげたのか?」

「あの大きさの紙袋にクワガタを入れるわけないだろ!いや、たとえクワガタだったとしても冬瑚は喜んでくれそうだし!」

「確かにな」


俺、お兄ちゃん失格なんじゃ・・・そう思ったときだった。冬瑚がバーンと居間に飛び込んできたのは。


「どうどうどう!?可愛いよねコレ!可愛くて綺麗なの!」


部屋を出るまでは結んでいなかった髪が、今はおさげになっている。冬瑚が興奮した様子で見せてきた紙袋の中身は、たくさんの飾りのついた髪ゴムだ。ちなみに冬瑚がいま付けているのは雪の結晶のモチーフがついた髪ゴム。


「サンタさんはすごいね!だって冬瑚が嬉しくなるもの全部知ってるんだもん!」


つまり冬瑚は髪ゴムを使っている姿を俺たちに見せたくて部屋を出た、と。・・・・・・・・・・・ナニソレ。そんなんもう、もう、カワイイしかないじゃないですか。兄の語彙力はご臨終です。


キャッキャとはしゃぎながら三つ編みを編んだ香苗ちゃんにまで自慢する冬瑚を見ながら秋人がもしかして、と聞いてくる、


「あの髪ゴムを選んだのって、冬瑚が田中とかいう男を意識して最近髪形に凝りだしたのが理由・・・?」

「お察しの通りです・・・」

「兄貴、漢だな」

「ありがとう、ぐすっ」


血の涙を流しながらお兄ちゃんは冬瑚のためにあの髪ゴムを選んだんだよ。わかってくれるか、我が弟よ。


大好きな田中のためにおめかしをする冬瑚のために、髪ゴムを買う兄。


サンタって、サンタって・・・!



~執筆中BGM紹介~

けいおん!!より「天使にふれたよ!」歌手:放課後ティータイム様 作詞:稲葉エミ様 作曲:川口進様


卒業シーズンですね。今は大学の卒業式でしょうか。ご卒業された方、おめでとうございます。4月から新生活の皆様も、特に変わらないよ~という皆様も、新学期?なにそれおいしいの?な皆様も穏やかに過ごせますように。そしてその穏やかな生活のすみっこに本作が寄り添えることができたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] サンタさんを信じる純粋な冬瑚ちゃん。そのまま真っ直ぐに育ってほしいものです。 でも、毎回のように通報されるような行動する兄がいるからなぁ・・・ 今回お勧めするのは、橋本潮さんの「夜の銀ギツ…
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