歳はとっても
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海でひとしきりはしゃいだ後、近くにある水族館にやって来た。ヨシムーがこれまた運転して水族館まで連れてきてくれたのだが、着いた瞬間に
「寝る」
と宣言して運転席のシートを倒して眠ってしまった。だがしかし。海での触れあいを通してすっかり懐いてしまった冬瑚は、うるうると潤う目で可愛く訴えた!
「ヨシムー行かないの?」
「うっ。んん・・・寝るっつったら寝るんだ俺は」
「そっかぁ」
しょぼーん、という顔文字の如くしょんぼりした冬瑚の頭を撫でる。
「ヨシムーはテストの採点を夜遅くまでしていてあんまり寝てないんだよ。だから寝かせてあげようね」
「まるで俺が駄々っ子みたいじゃねぇか」
「それならしょうがないね。冬瑚は大人だから諦めるよ」
「冬瑚は偉いね」
「へへっ」
ヨシムーが水族館行きを断ったのは、実際にテストの採点で寝不足というのもあるだろうが、俺たちに遠慮したのだろう。後者の理由は言わぬが花ってやつだな。
香苗ちゃんが狸寝入りを決め込むヨシムーの助手席にドカッと座り込むと、俺たち3人にむけて軽い調子で言ってきた。
「先にチケット買ってきて~」
「な、もごっ」
「わかった。先行ってるね」
「すまんね」
なんで?と純粋な曇りなき眼で香苗ちゃんに質問をしようとした冬瑚のお口を手で塞ぐ。
「「行ってきます」」
「もごー!!」
秋人と抱っこした冬瑚を連れて水族館の券売所に、空気を読んで向かうのだった。
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空気を読める賢い子供たちが去ったあとの車の中。
「今日は来てくれてありがとさん」
「おう」
「旭」
「なんだ?」
「私はもう自分勝手に物事を考えられない。何をしても、何をしようとしても、まず最初にあの子たちの顔が浮かぶの。それくらい大切な存在。私の宝物」
「おう」
目を閉じると、思い浮かぶ。夏くんと秋くんに初めて会った日。敵意むき出しで威嚇してきた秋くんが今では懐かしい。冬ちゃんがうちに来た時も、なにもかすべての思い出がキラキラと私の中で光り輝いている。
「だからね、少なくとも夏くんが高校を卒業するまでは旭とどうこうなるつもりはない」
「どうこうなるつもりはないと言いながらこうやって呼びつけるんだもんな。そういうとこは昔のまんまだ。歳はとっても何も変わらない」
「こんな女のどこがいいの?」
「我がままで欲張りで女王様で」
「うぐっ」
「お人好しで、笑い上戸で、親バカなとこ」
あれ?あんまいいとこない?親バカくらいしかいいとこなくない?
「気長に待つさ。何年片思いしてると思ってんだ。今さら待つことくらいなんでもねぇよ」
「・・・良い男め」
「俺もそう思う」
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「香苗ちゃん遅いよ~!」
「冬ちゃんごめんね!寂しかった?」
三人で入り口近くのペンギンを眺めていたとき、走って合流してきた香苗ちゃんに可愛く文句を言う冬瑚。
「寂しくはなかった!」
「それもそれで寂しい!」
パシャッ
「いい写真いただきました」
「あ~夏兄それ盗撮って言うんだよ~」
「堂々と撮ってるから盗撮じゃないよ。多分」
「夏くんその写真頂戴ね」
「了解です」
「それと、」
俺と秋人の肩を抱き寄せる香苗ちゃん。どちらも香苗ちゃんより背が高いので少し屈む体勢になった。
「ありがとう、お兄ちゃんズ!」
「なんのことだろうね、秋人?」
「知らね」
「愛いやつらめ!」
頭をガシガシと大型犬の如く撫でられたところで、いつの間にか少し遠くに行っていた冬瑚が俺たちを呼ぶ。小さい子から目を離すとすぐいなくなってしまうって本当だったんだな。気を付けよう。
「みんなー!これ撮ろうよ!!」
3人で駆け寄り、冬瑚が指さす方を見ると、そこには穴が開いたパネルがあった。
「なにこれ?」
「夏兄知らないの?この穴から顔を出して写真を撮るんだよ」
「へー面白いね」
確かにイルカ・ペンギン・チンアナゴの顔の部分がちょうど穴が開いている。それにしてもこの動物の組み合わせは何だろうか。水族館でTOP3の人気を誇る動物たちか何かだろうか。
「・・・僕が撮るから行ってきなよ」
「な~に言ってんの秋くん!ここは兄弟3人で撮るところでしょうが!」
「ここはやはり長子である俺が撮るべきでは?」
パネルにある穴は3つ。そしてそのうち一つは冬瑚が入るならば残る穴は2つ。そして俺たちは3人。結果、こうしてカメラマン争奪戦が開幕したのだった。
話し合いでは決まりそうもないので、最終手段にでることにした。
「「「冬瑚は誰と撮りたい?」」」
「は~い撮りますよ~3・2・1」
パシャッ
「こんな感じでどうですか?」
「良い感じです。ありがとうございます」
「いえいえ~それにしても仲のいいご家族ですね」
「ええ本当に」
スマホ画面にうつる写真には、イルカ(香苗ちゃん)・ペンギン(秋人)・チンアナゴ(俺)そしてその真ん中に満面の笑みでピースサインをしている冬瑚が映っていた。
「ペンギン無表情すぎでしょ」
「イルカは笑顔が強張ってるね」
「眼鏡かけたチンアナゴに言われたくないわ」
中学生の秋人ならばまだしも、高校生にもなってこの写真はつらいものがある。田中に見せたら軽く1時間は笑われそうだ。
俺たち3人の表情とは対照的に眩しい笑顔を振りまく冬瑚は満足げだ。最近冬瑚にSの片鱗がチラチラと見える気がする。お兄ちゃんは今から心配です。
~執筆中BGM紹介~
魔法少女 俺より「NOISY LOVE POWER☆」歌手:大橋彩香様 作詞:こだまさおり様 作曲:本多友紀 (Arte Refact)様
読者様からのおススメ曲でした!
【皆様にご報告】
なんとか感想に返信できる状態になりましたので順次返させていただきます。作者に似てポンコツになっちゃってまぁ。PCと飼い主は似るんですかね。え?PC(飼い主)と作者(駄犬)の間違い?




