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番外編 暖房

このタイミングで番外編です。すいやせん!次回こそは本編です!




久々に4人全員のお休みが重なった日の早朝のこと。香苗ちゃんがテーブルの上で手を組んで深刻な表情で俺たちに言った。


「昨晩、ストーブがご臨終しました」

「これから寒さが厳しくなるこの時期に」

「ということで暖房器具を買いに行こー!」

「「「おー」」」

「ぃにゃ~」


香苗ファミリー(香苗ちゃん、俺、秋人、冬瑚)でやって参りました家電量販店。ちなみに香苗ちゃん以外初体験である。※決してやましい意味ではございません


「へぇ〜ここら一体にあるもの全部暖房器具なんだ。多いね」


冬のこの時期に大活躍する暖房器具たちが所狭しと並んでいる。それらを見て目を輝かせる冬瑚と秋人。まったく可愛い奴らだなぁと思ってみていると、まったく同じような顔をして香苗ちゃんが俺を見てきた。いや、そんなにワクワクしてないし!あのボタン押したらどうなるんだろうとか、そんなこと思ってないし!


「ねぇねぇ香苗ちゃん!コタツは?コタツはどう?」

「あ〜いいね〜コタツ。人間をダメにする魔力を帯びしマジックアイテムよ」

「そうなんだ!コタツってすごいね!」

「香苗ちゃん、幼気(いたいけ)な子供に嘘を教えるのはやめてくだい」


ほらぁ、火でも出るのかなぁとか冬瑚が言ってるじゃん。コタツから火が出たらそれはもう凶器ですよね、それ。


「コタツは買わないぞ」

「「え〜?なんでぇ」」


コタツ全否定な秋人に息ピッタリで抗議する香苗ちゃんと冬瑚。正直お兄ちゃんも香苗ちゃん側ですぞ、弟よ。


「こいつはなぁ、」


コタツに手を置いてスン、と表情が抜け落ちる秋人。


「家事してる人を暖めてはくれねぇんだよ」


なるほど、確かに。1番冷える人のことを考えてなかった。


「お母さんごめんな・・・」

「部屋全体を暖めてくれる暖房器具を買おうね」

「お母さんいつもありがとう」


俺、香苗ちゃん、冬瑚の順にすっかり声変わりした我が家の母に言葉をかける。いつも美味しいご飯をありがとう。


「お母さんちゃうわい」


スタスタとコタツコーナーを後にするお母さ・・・秋人の後を追うのだった。





「ねー秋兄!このオイルヒーター?ってやつはどう?乾燥しにくいんだって!」


でっかいパイプオルガンのような見た目の暖房器具を指さして冬瑚が秋人に問いかける。


「乾燥しにくいって言っても洗濯物干せば乾燥しないし別にいらねえ」

「ひゃい」


しかし秋人のお眼鏡には敵わず、冬瑚撃沈。


「秋くん、秋くん、電気ストーブはどう?」


さきほど冬瑚が勧めてきたオイルヒーターより少し小さめのサイズの暖房器具を推す香苗ちゃん。さてお母さんのジャッジは・・・


「それは部屋全体を暖めてくれないから却下」

「ふぁい」


香苗ちゃんも見事に撃沈したところで、とあるチラシが目に入る。


「床暖だって」


足元から暖まるなら秋人母さんもいいんじゃあ・・・と思って弟の顔を見るとそれはもう凄い目で見られた。「何言ってんだこいつ」って目で見られてる。目が雄弁に物語ってるよ。


「何寝ぼけたこと言ってんの?」


ほんとに思ってたよこの子。ペッ!と唾棄されそうなくらい荒んだ目で見られてる。え~そんなにダメですか?


「床暖にかかる総費用を計算してから出直しな」

「サーセン!」


チラシにも床暖リフォームって書いてあった。絶対高コストじゃん。考えなしに発言してまじすんませんした。反省してるのでそんな目でお兄ちゃんを見ないで!



「壊れたやつと同じ石油ストーブでいい?」

「「「異論ありません!」」」


色々見て回ったが、結局は新しい石油ストーブを買って、家に帰った。もちろん荷物持ちはしましたとも。


一苦労してリビングへ大きな段ボールを運ぶと、白猫のハルが興味深そうにクンクンと匂いを嗅いでいた。ハァ可愛い。秋人からの冷たい視線によりボロボロになったメンタルが癒されていく。


「ハル~」


その白くて柔らかい体をギュッと抱き上げて胸に抱こうとするが、後ろ足で胸を押し返された。ツライ。ハルがつれない。いつものことだけど。


ハルを床にそっと下ろしてストーブを段ボールから出して、灯油を注ぎ口に入れていく。毎回給油するたびに思うが、なんだか植物に水をあげている気分になる。


「おっきくな~れ~」

「夏兄、ストーブは大きくならないよ?」

「ソウダネ」


火を噴くコタツには目を輝かせてワクワクしていたのに、大きくなるストーブにはマジレスとは。最近弟妹と猫が冷たい。


「俺を暖めてくれるのはストーブだけか・・・」


準備時間が終わって、正常にストーブが作動する。そのタイミングを見計らったかのようにハルがストーブの前に寝そべった。


「ハルさんや、その席はこれまで準備してきた俺に譲ってくれてもいいんですけどねぇ?」

「ぃや~」

「え?今いやって言った?」

「のぉ~」

「ノーって言った!?」


やだ、うちの子天才!!と思っていたところに


「夏くん、お疲れのようだね~?」

「冷たい反応に凍えて疲れました」

「そんな君にはコレを授けよう」

「こ、コレは・・・!」


ね・こ・み・み!のカチューシャ。ちなみにハルと同じ白色の耳である。


「冬瑚~後生だからコレつけてくれ」

「いいよ!ほら、似合う?」

「「めっちゃ可愛いんですけどぉ!!」」


迷うそぶりを一切見せずにカチューシャを付けて見せてくれた冬瑚。金髪に白い猫耳がまた可愛いのなんの。香苗ちゃんと親バカ兄バカを発動しながらスマホカメラのシャッターを押していく。


「3人ともバカやってないで、食器出して」

「「「は~い」」」

「ハルはお皿の前で待機な」

「にゃ!」


皿を出すために食器棚の前に立った時、秋人からコソッと小声で言われた。


「さっき撮った写真、僕にも送ってよ」

「もちろんですとも」


こうして御子柴家の一日は緩やかに過ぎていく。


~執筆中BGM紹介~

夏目友人帳 伍より「茜さす」歌手:Aimer様 作詞:aimerrhythm様 作曲:釣俊輔様

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― 新着の感想 ―
[一言] 猫は一番暖かい場所を探知する特殊能力があるからなぁ。 幼女にネコミミを付ける事を強制した上に写真を撮りまくる男子高校生・・・これは問答無用で通報案件ですな。 刑事さんを探していたら、特殊金…
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