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それ、突撃ー!

幼馴染と彼女、邂逅ー!




「お疲れさまでした!」


スマホゲームのアフレコを終えて、声優の鳴海彩歌は趣味の散歩に勤しんでいた。


(あのパン屋さん閉店しちゃうんスね)

(JKのスカート短いな~)

(冷蔵庫からっぽだからスーパー寄らなきゃ)


ストーカー被害にあった当初は控えていた散歩だが、変装することを条件にまたこうして仕事帰りに歩いている。街の様子を何気なく眺めていたら、制服を着たカップルが多いことに気付く。


(そっか、今の時間はちょうど放課後っスね)


智夏クンも今頃学校が終わったころかな?私がもし同級生だったら、周りの子たちと同じように放課後デートに繰り出せたのにな。などとたらればの話を考えながら、街の中を一人歩いていく。


(そうだ、今から智夏クンに電話してデートを・・・いやでも、智夏クンの高校生ライフを邪魔しちゃ悪いっス)


自分が高校生だったときは、友人とよく放課後は遊びに出掛けていたものだ。大人になってから学生時代を振り返ると、もっと遊んでおけばよかったと思うのだ。”放課後”という特別な時間は、もう二度とやって来ない。だから学生のうちにもっと堪能しておけばよかったなと今更後悔するのだ。


取り出したスマホをまたポケットに戻し、駅に入る。あ、改札通るんだからスマホ戻す必要なかったな、ともう一度スマホを取り出したところで、視界の端に見知った顔が映る。


「智夏クン?」


一瞬ちらっと見えただけなので確証はなかったが、確信めいたものならあった。人ごみをすり抜けながら一瞬見えた方へ向かう。


(あ、いた!)


学校帰りのようで、制服を着て駅の外へ向かっている。


「ちなーっ?」


彼の名を呼ぼうとしたところで、彼の隣にもう一人いることに気が付いた。


(な、ななななななな!なにあの美人さんは!?)


後ろ姿だけでわかる。あれは絶対美人だ。だって周りの人たちみんな見てるもん。ちょっと顔赤くして見てるもん!同じ色の制服を着ているから同じ学校の人っていうのはわかる。でも、なんで2人っきりで歩いてるの!?


その場で棒立ちになって彼らを呆然と見ていると、ふいに美人が智夏クンの頭を親し気にペシッと叩いた。


(え、漫才?彼女差し置いて夫婦(めおと)漫才ですか?)


こういう場面で可愛げのある子だったら瞳をうるうるさせてその場に泣き崩れるのかもしれないが、生憎とそんな可愛げは持ち合わせていなかった。


(気になったら即行動、が座右の銘。ということで。それ、突撃ー!)


と息巻いたところで、後ろから来た人とぶつかって、そのまま前につんのめる。


「うわわわぁ!?」


咄嗟の事態に情けない声しか出せずに、来たる衝撃にそなえて両目をつぶる。しかし、いくら待てども衝撃は来ない。その代わりに、大好きな香りが自分を包んでいることに気付く。


「彩歌さん、大丈夫?」


頭上から降ってきた声に思わず顔をあげると、そこにはさっきまで美人さんと歩いていたはずの彼氏の顔があった。


(というか顔近いっス。あれ?本当に顔近いっス!)


超至近距離に顔があるし、智夏君の右手は自分の腰に、左手は咄嗟に伸ばしたであろう自分の右手を握っている。例えるなら、社交ダンスで向かい合っているかのような・・・


「ぅおっほん!!」


ポーっとのぼせていたときに、隣からやけに勇ましい咳払いが聞こえてきた。


「チーちゃん、彼女は誰?」

「チーちゃん!?智夏クン、このお方はどなたでございまするか!?」

「彩歌さん、落ち着いて」


かなり親し気にチーちゃんと呼ばれていることに動揺してしまって、口調が武士になってしまった。よくあるよね、そういうこと。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






4限目の体育をサボったことをみんなにいじられながら、迎えたその日のSH。


「で、まぁ帰り道の話し声がうるさいというクレームが学校に入ったそうだ。声のボリュームには気を付けろ~」

「「「えぇ~?」」」

「あートルストイ」

「エレナで大丈夫ですよ」

「じゃあエレナ。教科書一式が近くの本屋に届いてるから取りに行ってきてくれ」

「本屋?」

「場所わからんか。なら御子柴、一緒に行って荷物持ちしてやれ」

「え、なぜ俺に」


いきなりお鉢が回ってきたのでつい本音がポロリ。


「だって仲良さそーだったしよ。気心知れたやつの方がエレナもいいだろ?」

「ダー。その通りですわ」

「そんじゃ解散~」


周囲の男子に恨みがましい目で睨まれる。そんなに行きたいなら代わりますよ、是非代わらせてくださいお願いします。


「荷物も、チーちゃん、ほら立って!」

「いま荷物持ちって言おうとした?ねぇ?」

「細かいところを気にするのはほんと昔から変わってない」

「そっちもな」

「どういう意味?」


ギロリと睨んでくるエレナの目を軽く流しながら教室を出る。と、そこで香織に声をかけられた。


「智夏君大丈夫?私も一緒に行こうか?」


ここに来て初めて俺を心配してくれる人が出てホロリとくる。


「大丈夫だよ。ありがとう、香織」

「う、うん。わかった。じゃあまた明日ね。エレナちゃんも!」

「また明日」

「御機嫌よう」


エレナとは、きちんと話をしたいからな。近くの駅に行って電車に乗り、一つ先の駅で降りる。それにしても「御機嫌よう」て。


「お嬢様か」

「お嬢様ですわよ。オホホ」

「高笑い似合ってる」

「褒めてるの?」


他愛もない話をしていたところで、ふいに足を止める。


「チーちゃん?」

「あ、いや、声が聞こえた気がして」


彩歌さんが俺を呼んだような。周りをきょろきょろと見渡すがそれらしい人物は見当たらない。


「え。やだ怖い話?」

「怖い話苦手だっけ?」

「そりゃ女の子だからね」

「ぷっ、女の子って」


ペシッ


頭をさすりながらなおも周囲を見ていると、人の影に一瞬ちらっと見えた気がしてその場に駆け寄る。何回か人にぶつかりながら近づくと、そこにはやはり俺の彼女がいた。声をかけようとすると、彩歌さんの体が人にぶつかって前のめりに倒れるのが見えたので、咄嗟に彼女を受け止める。


「彩歌さん、大丈夫?」


彩歌さんは転ぶと思ったのかぎゅっと両目を閉じていたが、ふいにクンクンと鼻を鳴らした。犬ですか?可愛いけど。


しばらく2人で見つめ合っていたが、置いてきたエレナがそれはもう勇ましい咳払いで現実に戻してくれた。


「チーちゃん、彼女は誰?」

「チーちゃん!?智夏クン、このお方はどなたでございまするか!?」

「彩歌さん、落ち着いて」


俺は武士を彼女にした覚えはないよ。




~執筆中BGM紹介~

マクロスFより「ライオン」歌手:May'n様/中島愛様 作詞:Gabriela Robin様 作曲:菅野よう子様

読者様からのおススメ曲でした!


あれ?紹介したことあったっけ?まぁ被ってても気にしないでくだせぇ!何度聞いてもええ曲!

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― 新着の感想 ―
[一言] 夏君が荷物持ちとして酷使されるのは宿命だから放置するとして、彼の同級生男子一同に夏君の髪の毛入りの藁人形と五寸釘をプレゼントしたいのですが送り先は学校でよろしいですか?
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