同級生
ブクマ登録、評価、感想、おススメの曲ありがとうございます!1月がもう終わりますね。。。
制服姿の鳴海さんと教室、をモチーフにしたカフェでお昼を摂る。机は学校にある机と同じなので、鳴海さんと席をくっつけて向かい合わせの席を作る。
「こうやって机の移動をするのも懐かし~。あ、引き出しの中に何か入ってるっス」
そう言って取り出したのは一冊のノート。俺の座っている机の引き出しには入っていなかった。ノートの表紙にはマジックで『学生生活の恥ずかしい思い出part.12』と大きな文字で書かれていた。12ってみんなどんだけ恥ずかしい思い出あるんだよ。
机の真ん中にノートを置いて広げる。中を覗くと、色々な字のさまざまな恥ずかしい思い出が書かれていた。
「『担任の先生のことをお母さんと呼んでしまった』これはベタっスね~」
「鳴海さんも呼んでしまったことがあるんですか?」
「えェ?そそんなわけないじゃないですか」
「声裏返ってますよ」
この反応は絶対呼んだことあるやつ。鳴海さんのこの挙動不審っぷりこそベタ中のベタではないだろうか。声も裏返っていたが、目も泳いでいた。
「『算数の授業のにて(答えは)いくつ?と聞かれて咄嗟に”11歳です”と答えた小学5年生の冬。ちなみにその日は授業参観で教室の後ろには母がいました。』可愛い失敗ですね、コレ」
「わかる、わかるっスよ。その後クラスのみんなに笑われて顔から火が出そうになったところで改めて質問の答えを聞かれて頭真っ白になって答えられないやつっス」
「この話も経験済みでしたか?」
「ちゃ、違わい!私のときは授業参観なかったっス!」
つまり授業参観の日以外で同じことをしてしまったというわけですね。うんうん可愛い可愛い。頭わしゃわしゃ~と撫でまわしたい。
「うぅぅ!私ばっかり暴露して不公平っス。智夏クンの恥ずかしい思い出の開示を要求します」
少しむくれた鳴海さんが両手を俺に向けて、くれくれと情報を要求してくる。
「恥ずかしい思い出、ですか・・・」
期待のこもった眼差しを向けられるが、これといって思いつくものがない。
「文豪も『恥の多い生涯を送って来ました』と言っているっス。智夏クンにも絶対あるはず。捻りだすっス!」
恥、恥、恥・・・?あ、そういえば。
「思い出しました」
「何っスか?バナナの皮で転んだとかっスか?」
「そんなバナナ」
食パン咥えて角を飛び出したら運命の相手と衝突くらいあり得ない話だろう、バナナの皮で転倒って。
「高校の一つ上の先輩に「受験勉強で疲れた。癒しをくれ」と言われまして」
ちなみにこの先輩とは学校祭でバンド演奏した『ヒストグラマー』のギター担当の西原天馬先輩である。
「昼休みに頭を思いっきり撫でられたんです。別にそこまでは良かったんですけど」
「うんうん」
「その後先輩と別れた後に妙に周りから視線を感じるんです。特に頭上に」
「うんうん?」
「気になって窓に反射する自分の姿を見てみたら・・・」
「(ごくり)」
「頭からウサギの耳が生えてました」
「イヤー!って、うさみみ?」
「はい、うさみみです。ピンと立つ二本の耳を見たときはもう、恥ずかしさと恐怖を感じました」
今思い出しても羞恥と恐怖で震えそうだ。その後来た道を引き返してうさ耳カチューシャを西原先輩に突き返したら「え、お前もう気付いちゃったの?俺の予想では放課後に気付くと思ったんだけどなー」と悪びれもなく言われた。
前髪長くて眼鏡かけてる陰キャがうさ耳つけて歩いてるとかナニソレどんな罰ゲーム。
天馬先輩に心の中で文句を付けていると、鳴海さんがノートに何かを書いているのが見えた。何かってもしかしなくても・・・
「あ!鳴海さん何書いてるんですか!」
「ぷっ、だって、ふふっ、うさ耳付けられたときに気付かないんスか?あ~私もうさ耳智夏クン見たかったっス」
鳴海さんの手元を覗き込むと、綺麗な字で俺の恥ずかし恐怖体験が今まさに書き込まれていた。
「勘弁してくださいよ」
鳴海さんにうさ耳姿なんて見られたら立ち直れない。・・・あれ?そういえば鳴海さんには諸事情により断腸の思いで女装したときに会ったり、女物のかつらを被ったときに会ったりしてたなそういえば。・・・既に手遅れ感がすごい。
「先輩方お待たせいたしました~。本日の給食です」
「「ありがとうございます」」
「ごゆっくりどうぞ~」
本日の給食の献立は白米、サバの味噌煮、春雨サラダ、かきたま汁、青りんごゼリーである。
「そうそうこれこれ!揚げパンとかも給食っぽいけど普段の給食といったらこういうのっス」
今にも鼻歌を歌いだしそうなほどに楽しそうな鳴海さんを見て俺まで楽しくなってくる。
「智夏クンは懐かしくないっスか?」
「えーっと、俺が通ってた小学校は食堂でお昼ご飯を食べてたので、給食を食べるのは初めてなんです」
兄が亡くなる小学4年生の途中まで通っていた小学校。俺の過去のことは鳴海さんにはまだ伝えられていない。俺が痛みを感じない体なのは伝えたが、それ以外は何も。鳴海さんはきっと受け入れてくれる。頭ではそうわかっていても怖いものは怖い。
そんな俺の想いを知ってか知らずか、鳴海さんは春の陽だまりのような笑顔で言った。
「智夏クンの初めて(の給食)頂きましたっス」
「・・・つまらぬものですが」
「初給食のリアクションを見れるのなら、つまらなくないっスよ」
二人で合掌をして「「いただきます」」と言う。お、なんか今の学校っぽい。
初めての給食に舌鼓を打ちながら鳴海さんと和やかに話を進める。
「今は俺たち同級生ですね」
「不思議な感じっスね。小学校っぽい給食を食べて、中学校っぽい教室にいて、高校っぽい制服を着て」
この教室って中学校っぽいのか。小学校は途中まで行っていたが、中学校はまるまる行っていないので未知の領域である。
「鳴海さんはどんな高校生だったんですか?」
「一言で言うと”ギャル”っスね」
これまた意外な単語が出てきた。スマホの写真フォルダから一枚を選び、俺に見せてきた。
「似合ってますね。これ何年生のときの写真ですか?」
毛先にかけて鮮やかな赤色に染まっている髪は、今の鳴海さんよりも長い。
「高2かな。この頃は若かったっス・・・」
「今も若い人が何言ってるんですか」
そっか。俺と同い年の鳴海さんか。
「きっと俺たち同じ歳だったら出会うことはなかったでしょうね」
「それはわからないっスよ?このときくらいからちょうどアニメの声優の仕事をし始めてたから、廊下の隅っことかですれ違ってたかもしれないっス」
俺のマイナス思考をプラスに変えてくれる。
「きっと出会い方は変わっても、私と智夏クンはどこかで出会う運命っス」
あぁ本当に、俺は鳴海さんのそういうところが―――
「好きだなぁ」
~執筆中BGM紹介~
機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズより「Rise your flag」歌手:MAN WITH A MISSION様 作詞:Kamikaze Boy・Jean-Ken Johnny様 作曲:Kamikaze Boy様
読者様からのおススメ曲でした!
ちなみにバナナの皮で滑って転んだのは何を隠そう作者の恥ずかしエピソード。




