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ブレザーですか?セーラー服ですか?

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プリクラ機から出て天の声に絶妙に邪魔をされた後、俺たちはゲーセンから出て駅に向かっていた。


「その髪、スパイラルパーマってやつっスか?いや~いまどきの男の子って感じっスね」


隣を歩きながら俺の髪を指先でいじってくる鳴海さん。年下なのは事実なのだが、どうにもお子様扱いされているようで眉間にしわが寄ってしまう。


「鳴海さん、子ども扱いはやめてください」


22歳と17歳。社会人と高校生。


「子ども扱いしてたっスか?」

「それはもう」


お姉さん風を吹かせてくるというか、いやそこも可愛いところなんだが。だがしかし、男としては立つ瀬がない。


「ふふっそれは申し訳なすび」

「笑わないでくださいくら」


子ども扱いはやめろと言った時点でかなり子供じみていたことに今さら気づいて羞恥心が襲ってくる。



電車に揺られることおよそ20分。降着駅からさらに5分ほど歩き、着いたのはとあるビル。


「気分上がってきたっス!」

「それはこのお店を見つけた甲斐があったってものです」


階段を上った先のどこか見覚えのある扉には『あの日の学校cafe』の看板が掛けられていた。このお店は鳴海さんのリクエストにより事前に見つけた特殊なカフェ。店名からもわかる通り、教室をイメージしたカフェである。


「いらっしゃいませ、先輩方」


このお店ではお客のことを先輩と呼ぶらしい。応対している女性の店員さんは制服を着ている。奥にいる男性の店員さんは学ランだ。それを見た鳴海さんの目がキラッキラし始めた。


「予約してた御子柴と鳴海です」

「御子柴先輩と鳴海先輩ですね~こちらの更衣室にどうぞ~」


案内された更衣室には所狭しと制服が並んでいた。部屋の3分の2ほどが女子制服で残りが男子制服が並べてある。それを見た瞬間に走り出した鳴海さんの後を追いかけると、制服の一つを手に取った鳴海さんが満面の笑みで振り向く。


「智夏クン、これなんてどうっスか?」


目の前にバーンと掲げられたのは大人サイズの園児服。ポケットがチューリップの形になっているのがなんとも可愛らしい。


「俺がそれを着るときは鳴海さんも同じものを着てくださいね」

「えぇ!?」


死なばもろともですよ。急いで園児服を片付ける鳴海さんに苦笑しながら、俺も男子制服のコーナーを物色していく。


桜宮高校の制服はありきたりなブレザーなので、着たことのない学ランでも着てみようか。いやそれにしても数が多い。制服ってこんなにあるんだな。


「決めたっス!」

「ブレザーですか?セーラー服ですか?」

「ブレザーっス」

「じゃあ俺もブレザーで」


今の髪形に学ランは似合わないし。なにより鳴海さんと合わせたいしな。我ながら女々しい思考回路である。


それぞれ試着室に入って着替えを始める。普段着ているものとは別物といっても着方は大して変わらないので慣れた手つきで着替えを終える。試着室から出ると、まだ誰もいなかったのでベンチに座って待つことにする。


「お待たせしました~」


普段の2割増し楽しそうな声で鳴海さんが試着室から出てきた。チェックのスカートに紺色のブレザー。そして右手には桜色のネクタイ。


「いや~この歳で制服を着るのはなんか恥ずかしいっスね」

「いいえ?そんなことありません。現役のJKと遜色ありませんよ。なんならこのまま高校に潜入できそうです」


鳴海さんの右手からネクタイを取り、一言断りを入れてから彼女の細い首にネクタイを巻いていく。ここでスルスルっと手際よくネクタイを巻けたら格好良かっただろうが、自分でやるのと相手にするのとでは全然難易度が違うことに気が付いた。


「あれ?こう?いや逆か?」

「ぷふふっ、ネクタイ持ったときはカッコよかったのに」

「いやいや対面でネクタイ結ぶのは難しいんですって」


と言ったところで気づいた。対面でやるから難しいんだ。いつもの視点からやればいいのか。彼女の後ろに回ってネクタイを巻いていく。うん、これならいつも通り巻け……る。


あれ?この態勢って後ろから抱きしめてるみたいじゃ…?いやでもネクタイ巻いてるだけだし問題ないのか?これは意識した方が負け的なあれですか?負けとか巻くとかもうわけわかんなくなってきた。


壁に設置してある鏡越しに目が合った。鳴海さんは口をぱくぱくとさせながら真っ赤になっていた。じわじわと俺の顔も真っ赤になっていく。それでも手はキュッとネクタイを結び終えて役目を終えた、けど…


コンコン


「先輩方、お着換えそろそろ終わりましたか~?」


パッと咄嗟に両手を上に移動させる。見た目は銃を突き付けられた犯罪者だ。未遂だけど。いや待てそもそも罪を犯そうとしたわけでは。


「は、は~い」


しどろもどろになりながら鳴海さんが応じる。うん、この密室がダメなんだな。出よう出よう。……でも、店員さんもう少し声かけるタイミングが遅くても良かったんですよ?


熱が集まった顔を手で仰ぎながら部屋を出る鳴海さんを追いかけるのだった。




~執筆中BGM紹介~

ファイブレイン神のパズルより「Now or Never」歌手・作詞:ナノ様 作曲:nanovish様

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― 新着の感想 ―
[一言] 男子高校生に幼稚園の園児服着せようとする成人女性か・・・性別が逆ならば即通報案件なのですが。 こうしてみると、男だと通報有罪でも女ならば無罪という事はかなりありますね。 とりあえず葛飾区…
[良い点] てぇてぇ [一言] アニメ『うる星やつら』より『ラムのラブソング』をオススメします。
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