天の声
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糖分ございますのでお茶請けかブラックコーヒーと一緒にどうぞ・・・
ゲームセンターの喧騒の中を鳴海さんと二人で歩く。いろんなゲームが所狭しと並んでいていくつ目があっても足りない。ゲーセン初心者なので鳴海さんにおススメを聞いてみると、花が咲きそうな笑顔でとある機械を指さした。
「『襲い来るゾンビを撃ちまくれ!!ゾンビ・シューティング』」
「怖いの苦手っスか?」
「苦手じゃないとは思うんですけど、えっとほんとにコレをするんですか?」
「はいっス!」
ホラー系のアニメを見たときは勉強のため、という意識が強く怖くなった記憶はないし、お化け屋敷やホラー映画は未体験だしな…。これ以上カッコ悪いところは見せたくない。やるしかないな。
プリクラの機械のようなボックスの中に入ると、チュートリアル画面が始まる。俺たちはどうやらバギーに乗っているらしい。手元には銃があり、画面に向かって試しに撃ってみたところ。
『いいぞいいぞ!君は筋がいいな!HAHAHA!』
お褒めの言葉を頂戴した。右に立つ鳴海さんを見ると、立ち姿がもう、狩人だった。
『もしや君は伝説の……いや、なんでもないさ!君たちならこの森をきっと抜けられる。健闘を祈っているぞ!HA-HAHAHA!』
鳴海さんのときだけ反応全然違うんですが。伝説の、ってなに。困惑しているうちにゲームが始まる。
『ギシャー!!』
叫び声をあげて前からゾンビが一体出てきた。
「智夏クン、お先どうぞっス」
「ではお先に」
照準をゾンビに定めて引き金を引く。
ババババババッ
『グルルr、』
あ、この銃って連射なの?一回引いただけで連射したからびっくりしたー。でもなんとかゾンビは倒せたかな。隣の彩歌さんの様子をチラッと見ると、そこには玄人がいた。
ババッ
『グルルr、』
バババッ
『グルルr、』
ババババババッ
『グルルr、』
『グルルr、』
『グルルr、』
俺が目の前のゾンビに夢中になっている横では伝説の狩人が表情一つ変えず、最小限の動きでゾンビを屠っていた。
「お、お強い」
「えへへ。次は後ろっスよ」
ゾンビをいくら屠っても表情一つ変えなかったのに俺の言葉でデレッと笑うの何それ可愛い。ていうか、後ろ?
『後ろからもゾンビが来たぞ!!』
え、後ろ!?案内役のケビン(仮称)の言葉に従って後ろを振り向くと背後にも画面があり、ゾンビが追いかけてきていた。
もう銃の機能は把握したので目の前に迫りくるゾンビを鳴海さんの動きを真似て倒していく。すると隣でそれを見た鳴海さんが、ぽんっと俺の肩を叩き、
「背中は任せたっス」
と言って前を向いて銃を構えた。そのセリフって2次元以外で使えるんだーとか、鳴海さんに触れられてドキッとしたーとか刹那の間にいろいろなことを思ったが、すべてケビンの言葉にさえぎられる。
『前からも後ろからもゾンビが来たぞ!二人で協力してこの森を抜けるんだ!』
案内役のケビンの声より早く動く彼女はきっと展開を知り尽くしているのだろう。この二人用のゲームに誰と来ていたのか気になってモヤモヤするが、鳴海さんの背中を任されたので目の前のゾンビを倒すことだけに意識を集中させる。
何度か危ない場面はあったが、なんとかゲームクリアすることができた。
『この森を本当に抜けられるなんてな!お前ら最高だぜ!!』
とケビンの声も実に晴れやかだ。
「ナイスファイトっス、智夏クン!」
「鳴海さんも伝説の名に恥じぬ闘いっぷりでした」
「えへへ。でもやっぱり二人用のゲームは二人でやった方が楽しいっスね」
うん?二人用のゲームは二人でやるのが普通なのでは?
「私このゲーム一人でよくやってたよ。ほら、右手と左手で銃持てるから」
いやいや、ほらって言われても。そんな職人芸誰にもできませんて。
その後いろいろなゲームを楽しみ、最後にやって来たのは女子が集うプリクラコーナー。場違い感がすごい。
「実は私、プリクラを撮るのが久しぶりでして。あまりよくわからないのです」
「奇遇ですね。俺もさっぱりでして」
機種もよくわからないので近くにあったものに入る。ゾンビのものとは打って変わって真っ白な空間だ。荷物を置いて、指定された立ち位置に立った瞬間。
『じゃあ撮るよ~3・2・』
「「えぇ!?」」
『1』
パシャッ
『こんな感じで撮れたよ~』
と言って見せてきたのは急に撮ると言われてカメラがどこにあるかわからず焦る俺たちの顔。
「こ、これは」
「ぷふっ。変な顔してるっス」
『次はカメラに向かって指ハート~3・2・』
「指ハート?」
「親指と人差し指でハートを作るっス」
「こうですか?」
『1』
パシャッ
「「あ」」
鳴海さんが俺に指ハートをレクチャーしてる様子を撮られてしまった。この天の声苦手だ。ケビン呼んできて。
『次はハグして~3・2・』
「え?え?」
「鳴海さん、失礼します」
『1』
パシャッ
俺の腕の中にすっぽりと鳴海さんがおさまり、カメラがシャッターを切る。鳴海さんの可愛い顔がばっちり写ってる。うん、天の声最高。
その後も何枚か撮ったが、鳴海さんの顔は赤いまま、俺はほくほくしながら落書きコーナーに移動する。
「うぅー。智夏クンは楽しそうっスね」
恨みがましい目で見られるが、それすら可愛く見えてしまう。
「実際楽しかったですから」
「私は心臓がもちそうになかったっス!」
「それは、すみません?」
各々さっき撮ったプリクラに落書きしながら言葉を交わす。それにしても・・・
「最初に撮った一枚すごいですね」
「ぷふっ。二人とも半目なの凄いっスね」
良かった笑ってくれてる。鳴海さんの笑顔を見て安心していると、落書きの時間が終わったようで、印刷されるのをプリクラ機の横で待つ。
「鳴海さん、今日の服可愛いですね」
「あ、ありがとうっス…」
巻きなおしたマフラーに恥ずかしそうに顔をうずめる鳴海さん。それを見つめていると、反撃と言わんばかりに鳴海さんが口を開く。
「智夏クンは今日めちゃくちゃカッコいいっスね!声かけられたときどこのモデルさんかと思ったっス!びっくりして呼吸止まって本落としかけたっス!」
「あの、鳴海さ、」
「あんまりにも見るたびにドキドキしすぎて見ないように、触れないようにしてきたのに!でも無理!見ちゃう!そんなにカッコいいの反則っス!」
まだまだ話し出しそうだったので、思わす手で鳴海さんの口を塞ぐ。恥ずかしすぎて直視できず、横を向きながら情けない声で降参する。
「参りました。すみません俺が悪かったのでもうやめてください心臓が破裂しそうです」
数秒間沈黙が続き、次いで鳴海さんの笑い声が聞こえてきた。鳴海さんの手が口を塞いでいた俺の手を剥がし、頬にあてる。
「耳真っ赤っスね」
「……鳴海さ、」
『できたよ~また来てね~』
プリクラが印刷されて、天の声が知らせてくれた。
本当に、天の声大っ嫌いだー!!
~執筆中BGM紹介~
東方Project 砕月アレンジより「酔花雨」
読者様からのおススメ曲でした!めっちゃいい曲!




