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ちょっと個性的

ブクマ登録、評価、感想、おススメの曲、ありがとうございます!!!!!




いつもと違う髪形に違和感を感じながらも、鳴海さんとの待ち合わせ場所に向かう。今は集合時間の1時間前。待ち合わせ時間になるまで周辺で時間を潰そうと思ってやって来たのだが、どうにも周囲の様子がおかしいことに気付いた。


あちこちから視線を感じるような…。それに日曜のごみごみした人ごみの中を歩いているというのに誰にもぶつからない。というより、避けられているような気もする。普段この道を歩いているときは人の波を縫うようにして歩いていたが、今は目の前に道ができていくような幻覚すら見える。いつもとの違いと言えば髪形が美容師さんのマジックハンドによってイケイケになっているところと、あとはイケイケ髪型によって顔がすべて晒されているところくらいか。


「田中、女子に追いかけられるどころか避けられてるぞ俺…」


避けられてはいるけれど、俺に向けられている感情はマイナスのものではない気がする。うーん、なんだろうコレ。


もうすぐ待ち合わせの場所が見えてくる、という場所でこれまた周囲の様子がおかしいことに気付く。今回は俺に関することではない。ある一点を中心として軽く人だかりができているのだ。


「あの人すっごい可愛いよね」

「可愛いけれど…」

「一人で何かぶつぶつ言ってるね」

「しかもあの子の持ってる本『男心の心得』って」

「可愛いけど変」


どうやら注目を一身に浴びている人物は書店の店先の本棚で立ち読みをしているらしい。少し引っかかるものを感じてその人物が見える位置まで移動する。


ニットのワンピースにロングコートを羽織り、首にはマフラーを巻いている。ショートボブの髪がマフラーから少しこぼれ出ているのが可愛いところだ。


予想通りの人物がそこにはいた。まだ約束の1時間前。一心不乱に謎の本を読んでいるし、邪魔はしない方がいいのだろうか。声をかけるべきか迷っていると、不意に人ごみの中からからかうような声が聞こえてきた。


「お前あの子に声かけて来いよ!」

「あの子一人っぽいし、これいけるんじゃね!」


…。


そうだよな。こんなに可愛い鳴海さんのことを世間が放っておくわけがないよな。いつまでも、彼女が待っていてくれると思ったら大間違いだ。自分の今までの甘い考えを戒めながら、大股で鳴海さんに近づいていく。人だかりからは「お!勇者第一号か!」「がんばれよ~」「先越された」など冷やかしの声をかけられるが、それでも鳴海さんは気づかない。ちょっと心配だな。この様子で普段は大丈夫なのだろうか。


「鳴海さん」

「「胃袋を鷲掴みすべし」そっかやっぱり肝心なのは胃袋なんスね。胃袋を掴んだ後はー」


本に集中しすぎではないだろうか。真横に立って声をかけても気づかないってナニゴト。次は気づいてもらえるように肩を叩きながら名を呼ぶ。あとついでにイタズラも仕掛けることにする。


ぽんぽん


「鳴海さん」


ビックゥ!と小動物が天敵と遭遇したときのように驚き、次いでおそるおそる俺のいる方に振り向く。


むに、と俺の指が振り向いた鳴海さんの左頬に当たる。


「ちなちゅきゅん!?」


彼女の名誉のために最初に言っておく。これは決して鳴海さんの滑舌が急に悪くなったわけではない。俺の指に口の動きを妨害されたためにこうなったのだ。少し名残惜しいが彼女の頬から指を離す。


「おはようございます、鳴海さん」

「お、おはようございます。あ、もしかして待ち合わせの時間過ぎてたっスか!?」


本に夢中になりすぎて待ち合わせ時間を過ぎてしまったと勘違いした鳴海さんが慌てだすのですぐに訂正する。


「いえ。まだ約束の1時間前くらいですよ。なにやら人だかりができていたので様子を見に来たら鳴海さんがいたので声をかけてしまいました」

「人だかり?」

「ほら」


少し立ち位置をずらして鳴海さんから通りの人だかりが見えるようにする。ずっと見られていたことにようやく気付いてあわあわと焦って本を落としそうになったので、横からその本を取って本棚にしまう。


「ありがと、う!?」

「逃げますよ!」


彼女の手を取って本屋の店先から飛び出す。様子をずっと見ていた観衆たちからは「連れがいたのかー」「なにあの顔面偏差値たかっぷる!」「変な彼女連れて行かれちゃった」などなど。みんな暇なのか。ていうか変とか言うな。ちょっと個性的なだけだ。


適当な建物の中に逃げ込み、息を整えながら振り返る。が、俺の声は建物内の騒音によってかき消された。


「鳴海さん」


ピコピコギュララララタラタラタンタンターンガコンガコンガコン


ここはまさかあの!かの有名な場所!ゲームセンター!?人生初の場所に目を輝かせていると、隣から笑い声が聞こえてきた。


「昨日から智夏クンの可愛いところがいっぱい見れて楽しいっス!」

「うっ。どうせならカッコいいと言われたかったです…」

「え?聞こえないっスー!」


鳴海さんの声はこの騒音の中でも良く通るのに俺の声はかき消されてしまう。


「せっかくだし、ゲーセンで遊んで行きませんか!!」


騒音に負けないようにかなり大きい声を出して鳴海さんに伝えると、鳴海さんは嬉しそうに笑って両腕で頭上に丸を作ったのだった。



~執筆中BGM紹介~

CR地獄少女 弐より「赤い花 闇に咲きて」歌手:椎名へきる様

読者様からのおススメ曲でした!


人生初ゲーセンにわくわくする智夏とそれをにまにまと見守る鳴海の図。

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― 新着の感想 ―
[一言] えっと、次回に備えて渋い日本茶かブラックのコーヒーを用意した方がいいですかね? くっ、冬瑚ちゃんの出番がないから幼女絡みでの通報が出来ない!次回こそ・・・きっと通報する機会が来る筈!
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