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第八話 迷いの森とオーガ

「ねぇー!まだ歩くんですかー!?少し休憩しましょうよー!」


後ろからラピスのやかましい声が聞こえてくる。


「まだ歩き始めてから一時間しか経ってないぞ」


「一時間も歩いてるんじゃないですかー!」


全く。だらしのない。冒険をしていると一日中走り回ってないといけないときもあるんだぞ。その途中で戦わなければいけないときだって。



俺たちが街を出ると、そこは森だった。

巷では迷いの森林と呼ばれているらしく、人界と魔界を隔てているのだが、奇妙な魔法がかかっており位置を把握出来なければ必ず迷うようになっているらしい。


俺は人界で魔王と対峙したので有ることは知っていたが、実際に来たのは今日が初めてだった。そのせいで、俺たちは絶賛迷子中だった。


有難いことに殆ど遭遇した魔物が話せばなんとかなり、話の通じない魔物と遭遇しても、精々木の棒で倒せるレベルの奴らのばかりだったので、なんとかなってはいるが。


ちなみに魔物を倒すと必ず後ろでラピスがキャーキャー騒ぐ。


「出口はどこなんですかー!もう!」


「そう慌てるなよ。のんびりと進もう」


「お腹がペコペコなんですよ本当!」


「お前のその赤ちゃん言葉みたいなのなんとかならないのか」


「ご飯くれたらなんとかします」


全く。とんだ女だ。

こんなことなら一緒に行ってあげるなどと言わなかったら良かった。

過去の俺が憎くて仕方がない。



瞬間、強い気配を感じる。

俺は不意に明後日の方角を向いた。


「どうかしたんですか?」


「静かに。何かが、いる」


気配を探ってみる。嫌に危険な気配だ。


「た、助けてくれぇ!」


男の声が聞こえてくる。恐怖に染まった声だ。

暗闇の向こうから四十代程の男性が走ってきた。

さらに後ろからドスンドスンと大きな足音も聞こえてくる。


「グオオオオオオオオオオ!」


猛々しい咆哮を放ったソイツは、オーガだった。

見るからに巨体で、身体は赤く染まっており、大きな角も生えていた。


「あ、あれって!オーガじゃないですか!?激ツヨの!あの方、やられそうです。助けましょうよ!そうだ!同じ魔物だし、また、話を聞いてくれるかも!話してみましょう」


「いや、オーガは同種族を最も大事にする個体で、他の種族は人魔物関係なく考えている。また、知能もそこまで高くなく群以外は敵と見なし襲い、喰らうんだ」


「戦っても強い。話も通じない。それって、詰みじゃないですかー!」


「お、お二方、助けて下さい!」


男はこちらに気付いたのか、必死に懇願してくる。

オーガはお構い無しに男に向けて攻撃をする。


さて、どうする?オーガはかなり強い個体だ。

軽い攻撃ではびくともしないぞ。あれを使えば一瞬だが…。


仕方がない。使いたくは無かったが。


「神聖剣」


俺は右手に神聖剣を召喚した。白く光るその剣をしっかりと握り締め、オーガのいる方へ移動した。


「剣技 <白龍の吐息(ホワイトブレス)>」


瞬間、俺はオーガの腹部を貫いた。

オーガの腹部に円状の穴が開き、少し遅れで血が噴出した。

オーガは前にゆっくりと倒れた。


俺は剣を消すとオーガの元に駆け寄った。


「すまない。安らかに眠ってくれ。」


「グ…オォ…」


オーガはこちらを見つめていたが、やがて絶命してしまった。


手を合わせる。オーガは知能が低い分、仲間を大切にしている。だから、オーガは必ず群れでしか行動をしない。

もしかするとコイツは仲間を守るために襲ったのかもしれない。そう思うと、申し訳なく感じる。


「た、助かりました。あのオーガ、突然こちらを襲ってきて」


男はこちらに近づきながらそう言った。


なるほど。この男は何もしていなかったのか、と言うことは迷ってる途中でオーガの群れに近づき過ぎたのだろう。


「いえ、無事で何より。きっと近くに群れが有ったのでしょう」


「それは悪いことをした」


そう言うと男はオーガに手を合わせた。遅れてやって来たラピスもすぐに察したのか、手を合わせてくれた。


オーガを丁重に弔った後、男は笑顔でこちらにやって来た。


「それにしても、本当に助かりました。そんなことより、お二方はこんなところで何をやっていたんですか?見た目的に魔王退治って訳でも無さそうだし…。あ、お兄さん。あんたもしや…」


「はい。魔物です」


もはや隠しても意味は無いだろう。それなら言う方が楽だ。


「そうでしたか。ですが、なんと言うかあなた様は怖くないですな。魔物なのは確かなのですが、何処と無く我々人間に似ている」


まぁ、当たり前だ。元々は人間だったのだから。


「それよりも、貴方のお名前はなんですの?」


「おおっと、これは失礼。私はナセス。商人をやっている者です。この度、優れた素材を手に入れるために遠路はるばるこの森までやって来たのですが…。先程の様なことになってしまいまして。」


ナセスは少し演技ぶった口調で自己紹介をした。


「私はラピスと申します。ナセスさん。宜しくお願いします」


「ほぅ、ラピス? 何処かで聞いたことが…!そうだ!クリスタル王国の王女様の名だ!」


「あ!ご存じなんですか!?」

 

「勿論。有名ですよ!魔界からの襲撃で大打撃を与えられた国。王女も誘拐されて、大変な騒ぎでしたから!もしや、誘拐したのが」


「違いますよ」


「ハッハッハッ。冗談ですよ。誘拐されたにしては王女が元気すぎる」


ナセスはからかったように笑った。

全く。商人というものは掴みにくいから苦手だ。


「俺はライト。こちらからもお願いします」


「ライト…。お兄さん、紹介ついでに一つ質問しても宜しいかい?」


ナセスは神妙な顔つきになり、こちらを睨んできた。

なんとなく、質問は分かっている。


「何故、あの剣を持っていたんだい?」

どうも。無咲 時雨です。

第八話。見てくださりありがとうございます!

オーガとの戦い。一瞬でしたねw 

商人ナセスの質問の意図とは? 次回も是非見てください!


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