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第九話 長い話

とある辺境に一人の少年がいた。

少年は齢六歳にして、村を襲ってきたオークの群れをたった一人で撃退した。


その噂はあらゆる国々に広まり、ついに王国に呼ばれることとなった。


「貴方がオークの群れを一人で撃退したと言う少年ですね?」


不思議な光が人の形をして、少年に話し掛けてきた。

その光はとても暖かく、母のような暖かさを感じた。


「はい、そうです。貴方は…」


「私は創造神クラウリン。貴殿方人間が神と呼ぶものです」


人の形をした光は、静かにそう答えた。


「貴方には、勇者としての才能が有ります。戦いにおける天賦の才も優れておりますが、それ以上に…貴方には他の勇者には無いほどの光、正義が有るのです」


クラウリンは静かに、だが、威厳のある声でそう言った。


「さぁ、前に来なさい。私の部下である神人なるものが、貴方に力を授けましょう。勇者としての、力です」


少年は前へ進み、その手を差しのべた。


「それでは、力を授けましょう。ユア、頼みましたよ」


「分かりました。クラウリン様」


光の向こうから一人、少年と同じ歳ほどの少女がやって来た。

彼女が先程言っていた神人だった。

ユアと呼ばれた神人は少年の手を取り、不思議な呪文を唱え出した。

瞬間、少年に眩い光が差し込み、膨大な力を受け取った。


「有難う御座います。創造神クラウリン様」


「いえ、構いません。貴方が魔物達を打ちのめし、魔神を倒すのを心待ちにしております。ユア、貴女には彼のパーティーとして戦って貰います。良いですね?」


「分かっております。クラウリン様」


「宜しい。では、最後に。勇者には代々自分だけの剣と言うものを得ることが出来ます。貴方に本当の危険が起こったとき、初めて契約することが出来るのです。その剣は他のどの剣よりも貴方に合う物になるのです」


「心に留めて置きます」


その後、少年は四天王との戦いの途中で、彼だけの剣である《神聖剣》を手にしたのだった。






「何故、あの剣を持っていたんだい?」


ナセスは神妙な顔付きでこちらを見つめる。

まぁ、使用した段階で質問される事はなんと無く分かっていた。

だからこそ、使用するのか悩んだのだ。


「あの剣はかつて史上最強と呼ばれた勇者、ライトの物のはずだ」


この男性、どうやら出来る商人だ。

光輝く剣を持つと言うことは勇者の証なので、疑問に持つのは普通なのだが、まさかあの一瞬で俺の物と分かるとは。


「名前と言い剣と言い、アンタ、なにもんだ?」


話して見て分かる。こいつに嘘は通じない。

さて、どうする?正体がバレれば魔界の連中からも襲われる上、信じないであろう人間からも襲われてしまう。

だから、出来ることなら正体がバレる事は避けたい。

とは言え嘘は通じないだろうし、はぐらかす事も難しそうだ。


まさしく、八方塞がりだよ。ちくしょう。


「だって!ライトさんは私の勇者なんですもん!だって私を助けてくれたんですよ!」


ラピス、コイツ…本当の馬鹿だったのか?


「いや、お姫さま、そういうことじゃ無くてだな」


「ライトさんは私の勇者なんです!異論は認めませんよ!」


強くそう言うラピスに、ナセスは戸惑ってしまっていた。

ラピスはフンッと鼻息を鳴らすとこちらを向いた。


「なにか事情があるんですよね?ここは私がなんとかします」


ラピスが静かにそう言った。

どうやら助けてくれていたようだ。なのに馬鹿とか考えちゃって、ごめん。

「助かる、ありがとう」


「後で私には教えることと、服屋に付き合って下さいね?」


やれやれ、抜け目の無い女だ。


「…まぁ、お姫さまがそう言うのなら、そうなのでしょう。それに、勘ではありますが、先程のオーガに対しての弔い…。貴方に悪意などないのでしょう。ですから、この話は一旦無かったことにしますよ」


ついにナセスが折れてしまった。

いやー。王女様って偉大なんだなー。


「それで、お二方は何故ここへ?」


「クリスタル王国に行こうと思ってるんです」


「ほぅ」と、ナセスが呟く。興味深い、と言った顔だ。


「お姫さま、お言葉ですがあの国は襲撃以来、魔物どもの巣窟になっております。元々城があった所では魔物が夜な夜な不気味な催しを行っています。それに、あそこに侵入しようとした者は誰も帰って来ていないと言う噂ですよ?」


魔物の巣窟、という言葉にラピスは悲しそうな顔をした。


「お父様…」


やはり少女なのだ。突然襲われて、淋しく、怖く、不安なんだろう。

なんとか、俺が助けてやらないといけないんだ。


うん?なにか引っかかる。

さっきの発言には、矛盾があった。


「ナセスさん。貴方の知っている情報を全て教えてくれませんか?」


そう言うとナセスはこちらを見つめながらにんまりと笑みを浮かべた。


「分かりました。助けて貰った御恩もあります。知っている情報を、お教え致しましょう。まず始めに…。あそこには、四天王がおります」


その瞬間、ラピスが震え出した。きっと遭遇してしまったのだろう。家族でも襲われたのか。

それとももしや…


それにしても…四天王。懐かしい言葉が聞こえる。

魔王に引けを取らない強さで、四人揃えば魔王すら倒せると言われる存在。


そんな危険な存在が、クリスタル王国にいるのか。

これは、思ったより大変な旅になりそうだ。


俺はこれからの戦いに少し、嫌気が差した。

第九話、ご覧くださりありがとうございます!

投稿がかなり遅れてしまいました。

これから起こる戦い、四天王の存在、奴隷商。

これからの話も是非ご覧ください!


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