プロローグ
闇の中から次々に魔物が押し寄せてくる。
何体倒しても続く戦いにもはや疲労もピークに達した。
「ぅ…あぁぁぁぁぁ!」
消えかけの気力をなんとか気合いで持ちこたえ、向かってくる魔物を粉砕する。
「おい…いつまで見てるんだ。バルディオス」
俺は奴を。魔王を呼び寄せる。
今の体力から考えて明らかに勝ち目はない。しかし、奴を倒さなければ戦いが終わることはない。
それに、元凶である魔神の元にもたどり着くことが出来ない。
「勇者ライト。哀れな姿だな」
ぼんやりとバルディオスの姿が見えてくる。奴の声には嘲笑が含まれていた。
「哀れな勇者よ。貴様が死ぬ前に一つ聞かせてくれ。何故いままで仲間を作らなかった。仲間がいればもっと楽に進めることが出来ただろう。己が力に自惚れていたのか?」
「フ…別に自惚れていたわけじゃないさ」
「ほぅ。では何故?」
「そうだな…。それを言う前に!」
後ろにいた魔物の腹部に斬撃を放つ。魔物は化物でも見たかのように目を見開き倒れこんでいく。見た感じでは四天王の一人らしい。
「ククク…良く分かったな。流石は最強と呼ばれた男だ」
「あんな見え見えの殺意に気付かない方が無茶と言うものさ。にしても、四天王も堕ちたものだな。この程度の奴しかいないのか」
俺はバルディオスのことを必要以上に煽る。
「全て倒したのは貴様だろう。ククク…その実力は敵としても敬服している」
煽りの効果は無いようで、相変わらず余裕の笑みを浮かべている。
「さて、では始めようか!」
その瞬間、恐ろしい速度の斬撃が無数に放たれる。呪文を唱えていないところから魔法の類いでは無いようだ。
全力で剣を降り下ろす。その風圧で斬撃を相殺させる。
「まだそんな余力が残っていたのか」
バルディオスは少々驚いた顔をし、にやりと気持ちの悪い笑みも浮かべた。
「術義 <暗黒世界>」
バルディオスの剣先に黒く禍々しい闇が纏われる。
「術義 <月光>」
俺の剣先には白く神々しい光が纏われる。
一撃。俺の体力では一撃が限界だった。たった一撃で全てが決まる。
---------------------------------------------------
「去らばだ。史上最強と謳われた男よ」
気付けば両方の腹部に剣は刺さっていた。抉れた腹部から致死量の血液が流れていく。
「どうやら、先程の質問は言えそうに無いな。最も、私ももはやそれを最後まで聞く体力すら残っておらぬが」
段々と体の感覚が無くなっていく。意識も飛びそうになる。
「今は…死んでしまうが…転生して…今度こそ‥お前に…勝ち…魔神を…倒す!」
「ククク…面白い…。では…決着は…転生後に…とっておこう。そして…質問の…答えも…そこで…き…こ」
魔王の言葉を聞き終わる前に、俺は死んでしまった。