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紡ぎ紡がれ物語る  作者: おひろ
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主人公って何ですか?

今日は俺の所属するサークル、『旅家』の活動日だ。


俺、相坂 紡はサークルでとある理由のために仲の良い三人を呼びつけ、今回の旅行先を決めた。


俺を含めた三人で列車に乗り込む。俺ら以外に客はいない。


「寺院神社に行こうなんて、よく思いましたね?」


グミの袋を対面している座席に放り投げながら、そう俺に問い掛けてきたちっこい少女は、今回の旅に付き合ってくれた後輩の木南(きなみ) 由奈(ゆな)だ。

肩まで伸びている黒髪が列車の窓からの日光を反射し、光っている。

端正な顔立ちであるがいつも眠そうな目をしている。


「全くだよ、あの神社何の噂も見所も、それどころか検索結果すら無いのに『とりあえず行ってみよう』って何さ?」


木南から投げられた袋をキャッチし、中身からリンゴ味のグミを取り出し発言する女の子は鞠乃 梨杏(まりの りな)

綺麗な茶髪をボブカットしており、服は髪色に対比させて暗色だ。お洒落に相当気を使っているのを感じるが、今回行くところにそんな気合いを入れる必要があるのかは甚だ疑問である。現役モデルとしての職業病だろうか。


「寺院神社…こんな変な名前、絶対何か面白いのがある。そう思うだろう?」


適当に返事をする。実際、大きな理由は無いのだ。


全ては冬休みの蟹鮭イクラの海産物ツアーのためである。例え鬱陶しいセミの鳴き声が響く疎ましい夏であろうが、サークルのノルマだけは達成せねばならない。



『旅家』は不定期に旅行を楽しむのが目的のサークルであり、今時珍しい、ノルマがあるサークルだ。


ノルマとは『春休み夏休み冬休み…長期休みの際は三人以上一組でどこか遠いところに泊まりにいくこと』である。

遠い所の定義は飛行機、もしくは船を使わねば行くのが難しい所だ。


面倒なノルマではあるが、それに見合うメリットもある。


すなわち『旅行費の軽減』である。


このサークルを作った者は三年ほど前に既に卒業しているが、何と在学中から今年になってまでずっとサークルへの寄付と言う形で資金援助をしているそうだ。どんな金持ちなんだろうか?


旅行に軽く行ける友達も金も、そうそう出来ないからここで作っちゃいなよ!

と言うのが現部長の誘い文句だ。



長々と書き連ねたが、つまり、僕の言いたいことは『人の金で旨いもん食いたい!』である


そんな本音を隠しつつ、僕はキリッとした顔で問う。


「寺院神社については着いてから話そう(正直名前以外話題がないし)。そんなことよりあの筋肉絵描きはどうしたんだ?来るといってたと思うんだが」


「あの人なら先に着いてるみたいです。リネンに書いてます、写真付き…違うなコレ。絵付きで。」


「アイツは旅は場所に着きさえすれば良いとでも思ってるんか?」


「あの人は旅先の絵を書くことに楽しみを覚えているタイプですからねぇ。いいんじゃないですか?先輩の絵、サークル勧誘に持ってこいですし」


会話しつつチャット型SNSのリネンを起動する。


件の写真(絵)とやらを見てみると、確かにリアルかつ迫力ある神社の絵がアップされている。絵の質感や陰影があまりにもリアルだったため写真と勘違いしてしまってもおかしくはない。だが現実とは明らかに違う、遠近法を狂わせたものとなっている。


ん?アイツはいつもリネンに絵をアップするときは、絵の右下にサインをしていたと思うんだけど…?


「というかこいつは何で絵以外には何も発言していないんだ?」


「お。たったいま『やべぇ』ってリネンがきた。確かにこの妙に雰囲気のある絵だな、一言だけのチャットなのが気になるが」


「こんだけ本格的な絵を描いちゃって精魂尽き果てたんじゃないですか?」


「普段アイツが描いてる絵より心なしかリアルだな」


「まぁ、絵を描くためににいちいち止まれないし、先に描いてもらってたら私たちも楽だよね。道中に話したかったもんだけど」


「先輩達は旅の過程を結構重視しますもんね」


「私は人と話すのが好きだからね、旅は話題が尽きないからいいよ」


「僕はご当地飯やご当地品を買って楽しむのが好きだな、旨い飯があれば尚良し。」


「何でそんなご飯食べて太らないんです?」


「……アイボーさんグミでもいかが?」


「それ私のなんですけど…」


「貰っても教えることなんてなぁ…カロリー使ってりゃそうそう太らんよ、頭使って散歩しな」


とりあえずもらったリンゴ味のグミを口に放り込む。


「おっと、そんなこと言ってる間に、だ」

ガタガタン…シュゥ


「着いたぞ。寺院神社に最も近い駅だ。さぁ、こっからちっとばかし歩くぞ」


~~~~~~~~~



「…遠くないですか」


「車じゃいけない山奥だからなぁ。ま、あと五分くらいで着くぞ、踏ん張れ後輩」


「というか坂道とはいえ、まだ20分くらいしか歩いてないよ、へこたれるなー?」


「…はい」


「なんつーか…さっきの話じゃないけど運動した方がいいぞ?バイトとかもやってないのか?」


「バイトは家庭教師してますよ」


「あーうん、それは運動しないよね…」


「頭脳系の仕事はどうしても運動不足になるだろうな」


「先輩方は何か運動してるんですか?」


「俺はサークル関係だな、ダイビングと釣り。後TR…オタサーと旅家」


「入りすぎじゃないです?」


「意外と楽しいぞ?それに旨いもん食えるんだこれが」

具体的に言うとダイビングは自然と遠出になるため遠方の飯を楽しめるし、釣りは言わずもがなだ。


「木南と毬野もサークル入ってない訳じゃないだろ?」


「私と木南は料理研究のサークル入ってるよ。料理は出来て損ないからねぇ」


「…」


「どうしたんだい木南ちゃん?この料理下手なにいってんだみたいな顔して」


「…いえ…」


「おい鞠野、後輩をいじめるな。木南、後であいつの手料理について詳しく教えてくれ」


「ここぞとばかりに弱味を握ろうとするな?」


「そういえば、鞠野は運動は?」


「うん?モデル業してたら運動くらいするよ。それなりに筋肉が必要だからね」


「あぁ、なるほど」



そんな話をしつつしばらく歩けば…

「ん?お、着いた。寺院神社だ。」


俺らはどこか雰囲気のある、不思議な神社の鳥井に到着した。



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