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ひときわありがたいおんな


「この子が最強の妖術師である名読みなのね」

「左様でございます。聖女様」


 聖女? はて、教会所ではそんな役職習わなかったぞ?


 郊外の邸宅の屋根に到着したウェヒクルムがそのまま屋内に収納されて、着いたお部屋は薄いピンクを基調としたバロック? ロココ? な、とにかく猫足っぽい家具がたくさんある部屋だった。


「わたくしのために申し訳ないことを致しました」


 そう言いながらお辞儀をする女性は、ピンクの膝丈ゴスロリ衣装を着ていた。

 眉間に皺が寄りそうになるのを気合で防ぐ。


 この世界にお辞儀はない。御礼も謝罪も口から出る言葉が全てである。

 どんな形であれ、お辞儀やそれに類する動作はない。

 そもそも会話中は相手の目を見るもので、お辞儀などで視線を途切れさすのは論外である。


「わたくしは聖女。この世界に平等をもたらすために遣わされました」


 椅子を勧められたので素直に座る。

 部屋の中は、ぐるっと人に囲まれていて自称聖女様以外は臨戦態勢。

 こちとら魔法の1つも使えないので、行動に移されたら瞬殺である。


 あと、部屋の隅で眠りこけてる男性がめちゃくちゃ気になる。宝石付けまくってるので貴族だろうが、銀髪なんて嫌な予感しかしないんですが?


「うふふ。王弟様をお運び致しました。ただの眠り薬ですのよ」


 え!? 生きてんの!? 私冤罪?!?


 よし、落ち着け私。王弟生きてる。アライブ。つまり無実。

 わたくしの為に申し訳ないってことは元凶はこやつでいいんですかね?


「平等、ですか?」


 とりあえず困ったときはミラー話法を発動してみるの巻。


「聖女としてこの地に降り立った時、わたくしに天啓が降ったのです」


 聖女ってなに?

 そもそもそんな単語聞いたことないけど、周りはウンウン頷いてるし、とりあえず”彼女=聖女”は肯定の方向でいくしかないの?


「平和の国ジパングでは、”全ての人が平等であり、いかなる差別もなしに平等な保護を受ける権利を有する”そう考えられています」


 盛大に”法の下”という単語が抜けている気がするが、そこから聖女氏のご高説が始まり周りの合いの手が入り、要約すると、王政廃止・身分差撤廃・職業選択の自由アハハンな話だった。



 お譲ちゃん勘違いしてる。



 この国の貴族は全員が魔法使いか呪術士、妖術師であり、お役御免になるまでずっと肉体的にも精神的にも”きつく”て辛く、未開地や歩行困難地に単独で行かねばならないので”危険”で、休日無しの長時間労働なのに仕事はどんどん湧いて出てくるので”帰れない”、常に魔術を展開しっ放しの為に”気持ちが悪く”なり、拘束時間の割には”給料が安い”、”きつい、危険、帰れない、気持ち悪い、給料が安い”の5Kをパーフェクトに備えた階級である。


 何がしかの魔術が使えるのにあえて隠す人もいるぐらい過酷であるし、身内に貴族がいれば殆どの人が自分は貴族になりたくないと口を揃えるものである。


 あ、私は生憎身内がド素人ばっかりでした。。。


 そりゃね、生涯年収は絶対的に高いんですけどね、優遇もされるんですけどね、休みが全く無いんで、使う暇がない。 王様からお金を頑張って使えと厳命もされているので、お屋敷を無駄にでかくしてみたり、服をキラキラにしてみたりするわけですよ。重いし機動力なくなるんで嫌なんですけどね、金糸とか宝石付きの服。

 あと、休みたいから結婚するとか意味わかんない事もちょいちょいありますよね。

 結婚式で全国民を招待すればお金を消費できて結婚休暇が5日貰えて一石二鳥なんですけど、気がついた時には貴族の再婚は5回までと制限がついていたという。あまりにも無慈悲。


 貴族って響きで特権階級っぽいんだけど、実際はこの通りの超ブラック。しかも加点制じゃなくて減点制だから、出来て当たり前、少しでも間違えると矢の批判!!

 職業選択の自由っていうけど、貴族と平民って括りで考えるからそんな事が言えるのであって、そもそも魔術覚えられないから、才能とかそういうんじゃなくて、男が子供産むぐらい無理無理無理だから。

 もし貴族に羽根があったり、色が違ったりとかだったら、別種族と思われてるよね。それぐらい貴族と平民って違う存在。まぁ、皆ぽややんさんだから、そんなこと考えないんだろうけどね。

 で、逆に平民は魔術職につけないってだけで凄く自由だし、むしろ貴族の仕事割り振ってるの平民だし、文官とか平民ばっかりだし、そもそも仕事の割り振りが鬼過ぎるんですよ、文官の皆さん……。


 あー、なんだっけ。只の愚痴になっちゃったけど、そんな世の中で職業選択の自由アハハンとかやられたらそりゃお貴族の皆さん、やんやで賛同するわなぁ。根本的に絶対数が少なすぎるんだよね。


 一応聖女ちゃんが色々発明?して聖女ちゃんと親しい人の仕事は少しだけ軽くなってるらしい。汚水を直接浄化するんじゃなくて浄化槽作るとか、水が流れやすいように勾配つけるとか、腐葉土を入れてから土壌を活性化するとか。


 たしかに、それ聞くと悪くないんだが、聖女っていうより賢者とかじゃないの?


 う~ん、それにしてもさっきから聞いてたら、平民を助けるつもりの聖女ちゃんと、仕事から解放論だと思ってる貴族達の齟齬が酷い。誰か指摘してあげてよ・・・・・・・・・。


「最強の妖術師である貴女がわたくしたちに賛同してくれれば、この国は、いえ、この世界は、きっと一つ上のステージに上がれるわ!」


 上がってどうするの?



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