執筆速度について
なぜ西尾維新氏のような異常な執筆速度を維持できるのか。ずっと疑問だったので考えてみることにした。
どのような仕事でも効率化が求められる。短い時間で多く書けるならそれだけ多くの回数出版できて、多くの人の目に触れやすくなって、知名度が上がって、売り上げも上がる。
ではどうすれば効率が良くなるのか。
僕の場合は、物語を作るときの効率が非常に悪い。今まであまり自覚はなかったけど、しっかり面と向き合って考えてみると、何度もプロットを書き直していることに思い当った。しかも、本文を書きだしてから納得がいかなくなってプロットを組みなおす。これは普通だと思っていたけど、もしこの部分を改善できるならとてつもない効率化が可能になる。
プロットを書き直す原因、納得がいかなくなる原因は、調査不足、知識不足、他にも何かぼんやりとした理由が思い浮かぶ。何とか言語化していきたい。
調査・知識不足はどうしても避けられない。とはいえ、書きたいことがあって、書きたい世界を構築するために、今ある自分の知識だけで何とかしようとしてしまう癖だけはさっさとなくしたほうがいい。我慢できなくて、物語を考えてしまうのだ。今ある知識の中で最高の話が作れたと思っても、少し冷静に見返せば穴だらけ。そしてその穴を埋めるために調べ物をすると、新しい知識を基にしたもっといい展開が思い浮かび、そのたびにプロットを書き直す。これは避けようがないと思うけど、自分で情報収集の期間を決めて、その間は一切練らずにぱっと浮かんだアイデアをメモする程度に留めるというのはどうだろうか。
プロの作家さんはどのようにこの衝動に対応しているのだろう。プロと言えど知識に限界はある、むしろプロだからこそ普段から知識の取得を欠かさない。毎日の知識の積み重ねの速度の差が、プロと有象無象の差なのかもしれない。西尾維新氏や森博嗣氏の執筆速度は例外中の例外にしても、年に三冊出版できるだけで十分早い部類に思える。
執筆が速い人は知識の取得だけではなく、書きたいテーマを自分のスタイルに当てはめるのが得意なように思える。これはもう自分のスタイルを理解して確立するしかない。書き続けるしかない。
一方で年に一冊ペースの人もいる。決してダメというわけではなく、単に本業が忙しいとかいろいろな理由があるのだと思う。僕はそれを乗り越えての執筆速度を手に入れたいのだ。自分のできる範囲で最も効率的に速く、いや、できない範囲に飛び出すために効率を改善したいのだ。
単純に考えれば、今三か月で収集している知識を一か月で手に入れられれば、その分速く書けるということになる。森博嗣氏は、「小説家になりたがる人は小説を十分に読んでいるから、小説以外の本を読んだほうがいい」というようなことをエッセイの中で言っていた気がする。作品の方向性を固めたらひたすら関係のある本を読みまくるしかない。どうやったら速く書けるようになるか、という「やり方」を求めるのではなく、プロの人たちの「あり方」を模倣することで、自然と「やり方」が身についていく、実行できるようになっていくのだと思う。
さてここで、ぼんやりとした理由を具現化したい。知識以外にも改善できるところがある気がするのだ。
たぶん、書き方だ。帰納法とか演繹法とか、ほかにも言われているけど、自分に適した書き方を理解していないのだろう。僕は冲方丁氏が大好きなので彼の書き方講座的な本を参考に初めは書いてみたのだが、その時は知識が足りなくてしょぼいファンタジーしかできなかった。
そのやり方だと、最初にキーになる伝えたいテーマが決まる。そこに周りをくっつけていくのだけど、実際のところどうなのか。いいのか悪いのか、自分に合っているのかダメなのか、皆目見当もつかない。他の書き方というものを試してみる必要がある。
今書いている作品は「記憶のバックアップができる世界」というのが最初のメモ書きで、そこから話を考えていった形跡がある。メモをはじめから見返してみると、最初は「世界」そっちのけでストーリーを考えている。記憶のバックアップを利用した素敵なお話を考えようとしている。そして途中で友人に相談したところ、「世界観の割に話が小ぢんまりしていて、世界観のポテンシャルを阻害してる」という意見を貰った。それからは、「記憶のバックアップができるようになるまでの技術進化の年表」や「記憶関連の技術が世界に与える影響」「記憶に関係する心理学」を一つ一つ、足りない頭なりに調べながら考えていった。今は、「技術的特異点」、簡単に言えば人を超える人工知能に関しての考えの整理はSFに必要不可欠だと気づいてそちらの知識をつけようと頑張っている。
また知識の話に戻るが、最初にアイデアをメモしてから約一か月で三度はプロットを大幅に方向修正した。一番ひどいときは二日間パソコンの前に座ったままで一ページも書けなかったことだ。たぶん合わせて10時間くらい進展がなかった。この状態が知識欠如なのだと気づいて、気晴らしに適当な漫画を読んだところ、次の日には進展があった。
懲りずに情報収集の途中でまたプロットを書いてしまっている。早く書きたいと頭が唸っている。そしてまた知識を入れないと先に進めなくなって、調べ物をした後にまた書き直すのだろう。これではだめだ。そう思ったから自分のことを整理するためにこうして文章にしてみている。みんなからコメントがあったら嬉しいけど、一番は自分のため。
ここまで考えて、なんとなく見えた解決策、というか次に試してみたい解決策はさっきも言った通り。最初にこんな話が書きたい、と決めて、その分野の知識を一か月くらいかけて集める。それまで一切プロットを書かない。これでどうなるか。良くなるにしても悪くなるにしても、進歩はあると信じている。
記憶の心理学を勉強しているうちにいい言葉を聞けた。「過去のやり方に従って生きる人は過去から変化することはない」
変わりたければ安定した自分の法則から外れる恐怖を受け入れて、自分史上にない方法を、方向へと進むことだ。