魔族になる方法とは
ちょっとシモネタかもしれない…です…苦手な方はご注意を。
魔王リヴァルト様と結ばれた私には、二つの部屋が与えられている。
リヴァルト様との共同の部屋と、私がこの魔王城でずっと使わせてもらっていた私のプライベート空間と。リヴァルト様は色々と入用だろうと言って他にも沢山の部屋を用意してしまいそうな勢いだったので、丁寧にお断りしておいた。
今はその、プライベートな部屋でゆっくりしようと思っていたところなのだけど。
「……貴方達、毎日のようにここに来ているけれど……お仕事は?」
「やってるやってる。なんたって俺は海王だし?部下に仕事を振り分けるっていう仕事をしてるわけよ」
「俺は普通に休憩時間だから、問題ない」
当然のように毎日この部屋を訪れては居座るネレウス、セレン兄弟。本当に毎日、今のところ10日連続で訪問してきている。しかも器用にビリーが席をはずしている時を狙って。実は暇なんじゃないかと思ってしまうのだけど。まぁ、彼らが忙しくないということはこの魔王領が平和だという証拠のような気もするし、いいのだけど。
「なぁアイリーン様。魔王様とはどうよ?仲良くやってんの?」
「……突然ね。何でそんなことを聞くのかしら」
「や、だって魔力に変化がないっていうか、全く人間のままだからさ」
言われて思い出した。魔族と結ばれた人間は魔族になる、と。リヴァルト様から聞かされていたことを。けれど自分の体に変化はないし、ネレウスも「人間のまま」だと言っている。それなら本当に私は何も変わっていないことになる。
「結婚すれば、直ぐ魔族になるものだと思っていたのだけど……違うのね」
いつまでも人間のままだったらどうしよう。私だけ歳をとって、私と共に居たいと願ってくださったリヴァルト様を置いて死んでしまうのだろうか。私の時間は魔族からすればとてつもなく短いだろう。ビリーにもあまりにも早い母との別れ、というものを経験させてしまうのだろうか。そう思うととても悲しい。
私が一人で考え込んでいる横で、ネレウスがぽん、と手を打って「分かった」という顔をした。私が魔族になれない原因が分かったのかと顔を向ける。ネレウスの隣でセレンまで微妙な顔をしていて、いったい何だと不安になりつつ二人を見る。
「分かった、魔王様がすごーく奥手だってことが」
「あ~やっぱり……っていうかアイリーン様関係だけ魔王様って変…おっと口がすべった。まぁとにかく魔王様はいつも通りじゃいられないんだし、考えれば分かったよなぁ」
「いやいや、あれだけ熱烈アピールしてた魔王様がまさかここまで我慢できてるとか思わないでしょ」
二人の会話の内容がよくわからず首を傾げていると、二人そろってよく似た笑顔を私に向けて、二人そろって親指を立ててきた。
………何?頑張れってこと?というか何を頑張れと?
「アイリーン様は悪くないわ。悪いのは奥手な魔王様ってことで」
「まぁどうしても早く魔族になりたかったら魔王様を誘惑するしかねぇよ。や、魔王様の鋼の理性が決壊したらきっと大変だろうけど頑張ってくれ」
一体何の話をしているのか。きっと私は何も分からないせいで間抜けな顔をしていたのだろう、二人が顔を見合わせて「初心だ…そういえば貴族のお嬢様だったな」とか「他人との関わりもなかったらしいしな…」とか囁き合っている。
全部聞こえているのだけれどこれは私への悪口ではないのよね?悪意は感じないから、違うわよね?
「あーえと、アイリーン様?」
「何かしら」
「ほら、夫婦になったらさー色々するじゃない」
「そうそう、ベッドでさ」
「……ベッドで?」
…………ちらっと。今世ではまったく無縁だった話を思いだす。女子高生といえばまぁ、恋愛話が好きで、当然その先のことにも興味があったりして、友達と話していれば色々な情報は入ってくるわけで。それを思い出して一気に顔が、耳が、全身が熱くなったような気がした。
「あぁ、うん、つまりさ……子供ができたら自然と魔族になるから!」
再び笑顔と共に親指を立てられる。あぁ、うん、もうそれはいいから。とにかく今は。
「出てってください!!」
ニヤニヤしている兄弟を部屋から追い出し、深呼吸。
―――――あぁ、もう。この後どういう顔してリヴァルト様に会えばいいか、わからない。
久々に更新いたしました。
番外として書ききれなかった設定を時々こんな風に書いていきたいなぁ…なんて思っています。




