応えました
主人公のアイリーン視点が全話中の半分以下であることに驚いています…
ビリーが笑顔で手を振りながら4人を連れ飛び立った後、残された私とリヴァルト様は顔を見合わせて笑った。
「貴女を前にすると、ビリーは本当に子供になるな」
「ふふ、一生懸命で可愛いと思いますよ」
「そうだな、特に貴女のことになると真剣だ。まぁ、それは私も同じだが……」
リヴァルト様はそう言って、そっと私の手を取った。その手はいつもより熱を持っているような気がして、もしや先程使った大魔法のせいで疲れから熱が出ているのでは、と心配になったのだけど。リヴァルト様は一つ深く息を吐いて、どこか緊張した面持ちでこう言った。
「アイリーン嬢……先刻、貴女の部屋で聞いた気持ちは、変わらないだろうか」
私の手を少し力のこもった手で握るリヴァルト様。彼が言っているのは、王子一行と対する前の私の一言だ。それを思い出して、小さく笑みを浮かべながら同じ言葉を口にする。
―――事が片付きましたらその時は私を―――
「ええ、変わりません。私をどうか、貴方の妃にしてください」
「……そうか、ありがとう」
リヴァルト様がふわりと優しく笑った。作り物みたいに綺麗な顔が、もっと綺麗で魅力的になった。私は思わずそんな彼の笑顔に見入ってしまって、頬に添えられた手や抱き寄せられた腰や、ゆっくり近づいてくる整った顔がどこか遠くに感じて。唇に感じた熱が離れるまで、状況を理解できなかった。
(今、キス……された……?)
一気に頬が熱くなった。心なしか目も熱い気がする。私の体が熱の塊になったような、全身が沸騰するような、そんな私を可笑しそうに見た魔王は、私の掌に優しく唇を押し当てた。
「魔王リヴァルトはアイリーンの一生の愛を乞う。私の妃となって、私と共に生きてくれ」
「……はい」
それは魔王からされた三度目の愛の懇願。断る理由もない、断れるわけもない。出会ってたったの一か月。けれど私は、彼からたくさんの愛情をもらって……そして自分も、彼に同じものを注ぎたいと思ったから。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
緊張する私の口からでたのは、遠い遠い世界のあいさつで、生まれ育った国の言葉ではなかったけれど。リヴァルト様は笑って「こちらこそ、よろしく頼む」と言ってくれた。
「アイリーン、貴女を妃として皆に紹介したい。幹部たちは近いうちに集めるつもりなのだが……魔物の集落もゆっくり回って行こうと思う」
「魔物の集落、ですか」
「あぁ。魔物は集団で暮らすことで身を護る者が多いからな。集落同士はそれなりに離れているし、結構な旅になるとは思うが……旅は苦手か?」
「いいえ……私はあまり、外へ出たことがなかったので、とても楽しみです」
私はシュマリナ国の外に出ることが、ほとんど叶わない立場だった。次期王妃に何かあっては困る、そんなことより教養を身に着ける方が大事、そういう環境で生きていた。
だから旅というものにはあこがれるし、それに―――これは、新婚旅行というものではないだろうか。そう思うと、乙女心が沸き立つ。本当に、楽しみだ。
「それとビリーが……貴女の息子であるなら、私の息子ということにもなると思うんだが」
「そう、ですね。そうなるかもしれません」
「……今更父親として接することができる気が、しない。どうすればいいだろうか」
リヴァルト様は盛大に困った顔をした。私はそれがおかしくて、笑ってしまった。
私にとってリヴァルト様とビリーは、素敵な旦那様と可愛い息子になるのだろう。ただこの二人は元々上司と部下、魔王とその家来、主と従者、そのような関係にあるわけで……。
当分の問題は二人の関係性を考えること、なのかしら?
ようやくアイリーンと魔王がくっついた…((
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