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婚約破棄された悪役令嬢は魔王に求婚されています  作者: Mikura
本編

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26/31

※崩れる国

前書きあとがきを忘れてUPしてしまってました…

今回は久しぶりのアーサーの弟、第二王子視点です。


ちょっと修正しました

僕、イスターン=ウィル=シュマリナは聖シュマリナ国の第二王子だった。そして、つい最近正式にこの国の王太子となった。


事の発端は魔の森に一人の元公爵令嬢、アイリーン嬢を追放したこと。彼女の消息が知れなくなってから暫く、魔王の城へ捕らわれていることが分かり、彼女の救出隊が作られ、500人ほどの軍が国を出発した。

僕はそれを、今更何を考えているのかと冷めた目で見送ったが……500人の兵は少し数を減らして慌てて逃げかえってきた。共に出立したはずの第一王子である兄上と、その婚約者と、騎士団長と、次期宰相確実の大魔導士を置いて。


重要人物(兄上の婚約者を除く)が魔王に捕らわれ帰ってこないという報告は国の重鎮たちをひどく混乱させ、緘口令が敷かれたが逃げかえってきた兵たちの中に目立つ4人の姿を見なかったという住人達も多く居て、この国は一気に不安に包まれた。


……まぁ、その問題の4人は後日、無事帰ってきたのだが。それがさらに問題を起こした。


まず、アイリーン=テンペジアの無実が分かった。馬鹿な兄はようやく事実を知って深く反省していたようだが、僕としては許せることではないし、本当に何を今更、という気分だ。

そしてそのアイリーン嬢は魔王と仲睦まじい様子で、もしかすると二人は特別な仲かもしれない。という話が兄上からもたらされた時の……大臣たちの青ざめた顔は少しばかり面白かった。魔王が鉄槌を下しにくるかもしれないだの、この国が滅ぼされるかもしれないだの、謝罪がどうのこうの……阿保らしいことだ。魔王が極悪というのがこの国の認識だが―――おそらくそれは事実ではないのだろう。毎年丁寧に講和条約の提案をしてくる魔王だ。現国王も兄上も大臣たちも信用せずに書簡を破り捨てているが、僕なら受け入れる。だって、あの優しいアイリーン嬢が選んだ相手だ。悪人だとはとても、思えない。


それから、騎士団長だったウォルフ=フォーク。彼は魔王に完膚なきまでに叩き潰されたのか、剣が抜けなくなった。精神的なものが原因であるらしく、それさえ解決すればまた剣が握れるらしいのだが。どうも、上手くいきそうにない。何せ剣を持とうとするだけで手が震える。誰かと一対一で向き合うことすらできない。彼はもう騎士ですらない。ただの臆病な大男になってしまった。


次は大魔導士アイン=ロドルフ。若いが、彼の持つ魔力はシュマリナ随一。頭もよく、兄上が国王となったとき傍で支える宰相となるはずで、プライドが高く、誰にも弱みを見せようとしない男だった。

それが部屋に引きこもり、怯えて泣き叫ぶばかりだという。魔王には誰も勝てない、この国は滅ぶんだ、とか。全部あの女のせいだ、とか。元の姿は見る影もないらしい。魔法は精神に強く影響されるのだ、報告の通り乱れた精神では魔法など、まともに使えないだろう。哀れなことだ。


そして、兄上とその婚約者だ。魔王に特別な魔法をもらってきたらしい。

兄上には「真実の耳」という、対する者の本音が聞き取れてしまう魔法を。おかげで兄上は媚び諂う大臣たちの知らない方が幸せだった本音を聞くことになり、精神を病んでしまったらしい。大臣たちのことだ、おべっかを使いながら内心で馬鹿王子は使いやすいだのなんだのと言っていたに違いない。帰って来て数日で寝込んでしまい、王になどなりたくないと弱音を吐きまくる兄上を現国王である父上も見放した。そして僕が新たに王太子となり、いずれこの国を継ぐこととなった。


あぁ、兄上の婚約者のことを忘れるところだった。……いや、元婚約者か。彼女が魔王にかけられた魔法は「真実の口」というもので、建前を言おうとすると本音が周りに拡散されるというもの。……妄想を吐き出し周りに悪態をついている、それがリザベラ=サマスディアという女の本性だと知れ渡った。しかも、魔王城では兄上に刃を向け、殺人未遂を犯したという話で。アイリーンのこともすべてリザベラ嬢が仕組んだということも分かったし、彼女は罰を受けることとなった。

しかし、魔の森に追放するわけにもいかない。更に魔王の怒りを買いかねない、危ない橋はわたりたくない。結果、彼女は身分を剥奪され少しばかりの金銭と身一つで放りだされることになった。一度、魔の森に向かおうとしたので国内から出ることを禁じ、常に監視をつけている。

……報告によると、酷い有様らしい。「真実の口」の効果で周りを見下した発言を繰り返し、ゲームがどうだのヒロインがどうだの、気味の悪いことを口走るという。あまりの態度に誰も救いの手を差し伸べない状態だとか。恐らくこの先生きていくのは難しいとは思うが、救いの手を差し伸べてやるつもりはない。



この国の中心だった人物が皆、壊れてしまった。父上は現状を嘆き、近日中に僕へ王位を譲り、隠居すると言っている。ただ手に余る現状を僕に丸投げしたいだけだと思うが、僕としては都合がいい。

王も大臣たちも皆、魔王の報復を恐れて大人しく震えている。僕が国王になれば即、魔王と講和条約を結ぼう。



「一度崩して、僕が再生させるしかない」



阿保共の所為で僕は面倒な役目を引き受けることになったが、馬鹿な兄が国王を継ぐよりははるかにマシだ。

それに、魔王と講和条約を結び、お互いの国が友好的な関係を築けたら……いつか、アイリーン嬢の姿を見る機会があるかもしれない。兄のせいで冷たい表情を張り付けることになってしまったあの人が、笑って幸せそうにしている姿が、僕は見たいのだ。アイリーン嬢が選んだ相手なのだから、きっと彼女を幸せにするだろう。出来なかったら許さない。



「さて、やるか」



目標ができれば、やる気がでるもの。筆をとり、この国の再生計画を練りつつ書き連ねる。

一体どれほどの時間がかかるか分からない。それでも僕はやろう。この国の王として、ねじ曲がってしまった国を正しい方向へ導くために。


―――まずはアイリーン嬢を見殺しにしようとした無能な大臣を首にするところから始めるかな。



簡潔にまとめたかったのだけど文章だけだと読みにくいかもしれないと思いつつ書いておりました…次回はまた魔王側へとお話を戻します。


ブックマーク、評価、ご感想いつもありがとうございます。



「第二王子のアイリーンに対する恋について」

彼の初恋はアイリーンでしたが、それは兄の婚約者である人を好きになってしまったことで完全に諦め、失恋しております。それから長い年月が経っているので…今は尊敬や人間としての好意が強い感じですね。でもやっぱり初恋の人だから幸せになって欲しいと思っています。だから魔王と仲睦まじそうだった、と聞いてもショックを受けるのではなく「やっと幸せになれそうなんだ」という思いで素直に受け入れられたわけです。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第2王子の恋心の変化についての描かれ方で、作者さんのお人柄が重なりますね。 病みがちですから、一般的には。
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