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漫才脚本シリーズ

漫才脚本「もしも強盗と鉢合わせたら」

作者: 山田結貴

A……ボケ担当。B……ツッコミ担当。

コンビ名は考えていないので☓☓としました。

   A・B、ステージに上がる。 


A「どうも~☓☓です!」


B「よろしくお願いしま~す!」


   A・B、観客に向かって軽く頭を下げる。


A「B君。実は僕、すごく心配なことがあるんですよ」


B「心配なこと? 一体何ですか?」


A「それはね……僕がいつ、強盗と鉢合わせてしまうかという心配ですよ」


B「え? 強盗ですか? それって心配するほどのシチュエーションとは思えませんけど」


A「いやいやいや! それは世間の世知辛さを知らぬ、愚民どもの発想ですよ! いいですか、今やご時世は、人と人とのつながりは薄れ、他人を傷つけることも厭わないやからが増える恐ろしい社会なのですよ。そんな状況下において、いつ何時強盗と鉢合わせるか心配しないほうが無茶というものですよ」


B「いや、A君が言うほど日本は廃れてませんけど……」


A「僕はそれはもう、毎日が心配で心配で。食事ものどを、一人前しか通らないんです!」


B「生きていく分には充分だと思いますが?」


A「そこで! 今回はB君に、強盗と鉢合わせてしまった時に備えて、予行練習に付き合っていただきたいと思います」


B「はあ? 何でそんなことを練習しておく必要があるんだよ」


A「だって、万が一に備えて練習しておけば、いざとなった時に迅速に対処できるでしょ? ね? 頼みますよ。相方からの、一生に一度以上のお願いです」


B「何回お願いする気だよ。何の希少価値もねえよ」


A「じゃあ、今回は僕の家に、強盗が押しかけてきたというシチュエーションで行きましょう」


B「聞いてねえな、おい」


A「僕は勇敢で男気のある自分を地で演じるので、B君は社会のクズみたいな強盗を演じて下さい」


B「人物設定に殺意を覚えるんだが、それは俺だけかなあ?」


A「僕が自宅でくつろいでいるところに、不法侵入して来てね。ではよろしく! クズ野郎!」


B「俺はクズじゃねえよ! やるならさっさとやるぞ!」


   A・B、それぞれの立ち位置につく。


B「よし、ここがAとかいう芸人の家だな。芸能人なら、金をたんまり持ってるはず。針金で玄関のカギを開けて……ガチャっ。強盗だ! 金を出せ!」


A「きゃーっ! 人が風呂入ってる時に何なんですかーっ!」


B「え、嘘! 入浴中? 俺が開けたの玄関ですけど?」


A「うち、なかなか斬新な作りでして、玄関開けるとすぐ浴室となっております」


B「どういう構造してやがるんだよ。欠陥住宅じゃねえか」


A「(何故かどや顔で)ちなみに今は、言うまでもなく全裸です」


B「余計なこと言わなくていいんだよ! 強盗からのお願いです。頼むから、まともな家に住んでいて下さい」


A「はいはい、わかりました」


   A・B、再び立ち位置につく。


B「よし、ここがAとかいう芸人の家だな。針金で玄関のカギを開けて……ガチャっ。強盗だ! 金を出せ!」


   A、Bに背を向けている。

   鋭い目つきをしながら、はあはあと荒い息づかい。


A「はあ……はあ……。夕子、お前が悪いんだぞ。お前が俺と、別れるなんて言うから」


B「え、あのー……ちょっと?」


A「ははは、愛するお前をこの手で殺してしまうことになるなんて。俺は馬鹿な男だ。でも俺にはまだ、やることがある」


   A、狂気的な笑みを浮かべながら、Bの方を向く。


A「見られたからには仕方がない。あなたにも、死んでもらおうっ!」


B「ぎゃーっ!」


   A、鈍器のような物をBに振り上げる動作をする。


   B、最初はそれに乗っかるが途中で真剣白刃取り

   をする。


B「……って、待てコラ凶悪犯! てめえが強盗以上の罪を犯してどうするんだよ!」


A「いやあ、つい役にのめり込んじゃって。ごめんごめん」


   A、観客の方を向く。


A「ちなみに、この話はフィクションであり、実在の人物とは関係ありません」


B「この場にいる全員わかってるよ! くだらないこと言ってないで、練習するならさっさと済ませるぞ!」


   A・B、またまたそれぞれの立ち位置につく。


B「針金で玄関の鍵を開けて…………ガチャっ。強盗だ! 金を出せ!」


A「うわあっ! いきなり何なんですか」


   A、怯えながら両手を上げる。


B「いいか? 俺は強盗なんだ。金目のものをさっさと出せば、命だけは助けてやる。もし逆らえば……」


   B、拳銃に手の形をピストルに見立ててAに突きつ

   ける。


A「ううん、こりゃあまいったぞ。この男、指鉄砲で人を殺せると勘違いしている」


B「いや、これ、あくまでお芝居だから! 俺は手にピストルを持っています。あなたはそれを突きつけられています。その(てい)でお願いします!」


A「はいはい。想像力を全力で掻き立てますよ!」


B「早く金目の物を出せ。さもないと、こいつをぶっ放す」


A「ううう、わかりました。うちには何もありませんが、頑張って探してみます」


   A、怯えながら部屋を漁る動作をする。


A「確かこの辺りに財布が……あ、それは昨日駅ですられたんだった。じゃあ、なけなしの貯金が入ったカードは……あ、それは詐欺に遭って全部騙し取られたんだった。じゃあ、いつぞやにもらった記念品は……あ、それはこの間空き巣に」


B「犯罪被害に遭い過ぎじゃねえか! どんだけお前、カモにされてんだよ!」


A「(照れ気味に)いやあ、何か、それほどでも」


B「全然褒めてねえからな。しかし、これじゃあ強盗に入った意味ないじゃねえか。本当に何もないのか?」


A「本当に何もないんですよ。強いて言うなら、身体で払えますが……ポッ♡」


B「てめえの身体なんていらねえよ! てか、何でちょっと赤くなってるわけ?」


A「(何故かどや顔で)ちなみに今は、言うまでもなく全裸です」


B「何で言うまでもなく全裸なんだよ! お前今まで素っ裸でしゃべってたわけ? 馬鹿じゃねえの?」


A「さあ、強盗さん。この胸に飛び込んで来たまえ!」


B「うわっやだもうこいつ! バーン! バーン! バーン!」


   B、何度もピストルを撃つ動作をする。


   A、仁王立ちで笑顔を浮かべる。


A「はっはっは。だから、指鉄砲で人は殺せませんってば」


B「ピストル持ってるってさっき言っただろうが! てめえの想像力、全然掻き立てられてなかったんだな、おい! ああもう、やってられねえ。こんなめちゃくちゃな予行練習、何の役にも立たねえよ」


A「いやいやB君。この予行練習には、大いに役立ちましたよ」


B「どこがどういう風にだよ」


A「全国広しと言えど、こんなわけのわかんないことばかり言う奴のところに強盗は入りたがらない。つまり、これで僕が強盗と鉢合わせる確率はゼロに等しくなりました!」


B「それはちょっと言えてるな! もういいよ」


A・B「どうも、ありがとうございました~!」

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