浩輔の1日
『ロックストーン』
この魔術は、名前の通りおっきい岩をストーンと相手の上に落とす魔法。
今日は、浩輔と一緒に森の開けた所にこっそり練習しに来た。
マードックがこの頃私を研究したくて、ウズウズしているから、和樹の所に逃げてたんだけど、今日は、『朝からうるさい』っていって叩き出されてしまった。
ちょっと、煎餅を枕元で食べてただけなのに和樹は冷たい。
まあ、和樹の作るお菓子は美味しいから、許してあげるけど。
そんなこんなで浩輔と廊下ですれ違った時に巻きこんで、二人で外にでた。
浩輔は、あまり魔法が得意じゃない。やっぱり、勇者だから魔法より剣の方が得意なのかもしれない。
『やっぱり、私の方が大きいね』
ちょっぴり、威張って言うと、浩輔から、反論が。
「そうかなぁ?同じくらいに見えるけど」
そんなはずはない。私の方が、大きいに決まってる。
『ほら、ここ!』
少し角ばった所に指をさし
『ふっふーん。この先っちょのちょこんってしている所が、そっちより大きいでしょ?』
ちょっと、自信を持っていうのがコツだ!
「うん。そうかも。」
やっぱり、浩輔は、わかってる。
和樹なら、たぶん文句ばっかり言ってるよ。
浩輔は、素直ないい子に育ってね。
そう思ってたら、いきなり『そこのあんたあんた』っと後ろから呼ばれた。
びっくりして、咄嗟に浩輔の後ろに隠れちゃったけど、別に怖くないんだから。
こんなおばちゃんなんて、私の魔法でけちょんけちょんにしてやるんだからね。っと意気込んで後ろでシャドーボクシングしてたら、いつの間にかおばちゃんと、浩輔の話は終わっていた。
そして、何故か。握られてる漬け物。
『浩輔。なにそれ?』
聞くよね?なんで漬け物持ってるの?
「えっと、なんか石使うからって、その代わりにコレくれたんだ。」
石?そういえば、あのおばちゃんすごいガニ股になりながら、浩輔が出した石を持って行ってた。
うーん。石の代わりにくれたのかなぁ?
でも、なんで漬け物?
くれるならお菓子がよかったなぁ
『ふーん。フォードにでもあげる?』
「そうだね。」
なんかいつも、走り回っているフォードは、この頃少しやつれた気がするから、漬け物でもあげとこう。なんでも喜んでくれるし。
いつも、飴をくれるし、私っていいこ。
やっぱり、たまにはお土産も必要よね。
そんなこんなで漬け物をもって、魔法の練習ってのも、おかしいからお城に戻る事にした。
街の中は、まだ昼前だからガヤガヤしている。
私は、浩輔のポケットの中でちょんと、顔だけ出して外を眺めてる。
和樹にいって私が入りやすいように作り変えて貰ったポケットにスッポリと入る。サイズピッタリで結構居心地いい。
のんびり通りを歩いていると、前からブツブツ言っている人に浩輔がぶつかった。
『うぎゅぅ』
変な声が出てしまった。
もう、かなり痛い。全く何なんなの。
プンプン怒っていると、何故か漬け物と、魚を交換されていた。
なぜ?
『浩輔。魚に変わってるけど?』
「うん。なんか漬け物がどうしても必要らしくて、あげちゃったけど魚嫌い?」
『いや、嫌いじゃないけど』
うーん。・・・・まっ、いいか!
よくわかんないけど、魚は新鮮なほうがいいよねってことで、近くの河川敷で勝手に焚き火をしたがら、魚を焼く事にした。
パチパチ焼ける魚がこんがりいい匂いを漂わせてる。
私が、よだれを垂らしながらまだかな〜って待っていると、後ろから『ぎゅるるるるる』って音が聞こえてきた。
え?
うしろにちょっと、ボロボロになったローブを着た男の人が立っていた。
幽霊みたい私はゆっくり浩輔の後ろに回った。別に怖い訳じゃない。
「あの・・・・。その魚くれませんか?少しでもいいんです。お腹が減って・・・・・。』
いい匂いがする。少しやつれた感じの男を見ながら、警戒は、怠らない。
魚がプツプツいって、香ばしい匂いが漂う
美味しいそう。
でも、警戒はする。
いい匂い。
怪しい男め!
いい感じに焼けて・・・
いやいや、警戒しないと・・・
そして、パクッと一口。
やっぱり、食い気には勝てないよね。
きゃー。美味しい。
パクパク頬張っていると、いつの間にか3匹いたはずの魚が、なくなってた。
見ると、ボロボロの男が、両手に二つの魚をもって黙々と食べていた。
あれ?浩輔たべてないよね?
私の手には、小さく齧られた魚が・・・・。
恐る恐る魚を差し出す私
『浩輔たべる?』
「いいよ。ラビィが食べて」
浩輔たべてないのに、美味しいのに。
でもでも、食べていいって。
食べたい。
でも、浩輔にもあげなきゃ
うーん。食欲と理性の狭間で迷ってると、サッとさっきまで魚をパクパク食べていた男が、私の持っていた魚を取り上げパクパクと食べ出した。
『あぁーーー』
ちょっと、涙目になりながら、
睨むけど、ペロリと食べられてしまった。
『うぅ・・・』
浩輔のポケットに飛び込んでつい泣いてしまった。
なんか目がしばしばする。
ポケットから顔を出すと、ちょっと周りは暗い。もしかして、寝ていたみたい。
「おきたのラビィ?大丈夫?」
浩輔は、心配そうに顔を覗き込見ながら尋ねてきてどうやら心配させてしまったみたい。
うぅ、お姉ちゃんとして、失格かもしれない。
ちょっと、落ち込んでたけど、なんと浩輔が、帰りに屋台のお菓子を買ってくれるらしい。反省?そんなのおかし食べてからで良くない?
ふっふーん。お菓子は、なにがいいかなぁって、考えてたら、浩輔が朝から、預けていた剣を取りに行くらしい。
だから、ちょっと、回り道。
ちょっと、胡散臭そうなお店に入ると、いつも、うるさいおじさんが、珍しくカウンターでにいて、もう、酒を飲んでいる。
酒臭い。
いつも、カウンターにいるおばちゃんは、どうしたんだろう?
お菓子くれるのに。
「剣だろ。ほらよ」
そういって、渡された剣を浩輔は、鞘から引き抜きながめている。
本当綺麗に研がれている。腕だけはいいんだよね。
「うん。ありがとうございます」
そういって、腰に剣を挿すと、肩から掛けていた鞄の口を開けて財布を探しているみたい。
探すのに邪魔な少し大きい鉱石を取り出しつ鞄を漁っていると、おじさんが、目を瞬いている。
「お前。それどうした。」
「これですか?」
そういって、おじさんに持ち上げられた、それは、淡くひかり輝いている。
「おい。まさかオリハルコンか?」
「いや、わからないけど、貰ったんですよ。」
そういって、おじさんと喋り出した浩輔は、少しすると、いつの間にかおじさんにあの石をあげる事になったらしい。
あんな石持ってたかなぁ?いつ貰ったんだろう。
そんな事をぼーっと考えてたら。
「タダじゃ、ダメだからな。これをやる。」
カウンターから、ちょっと離れた戸棚から取り出された酒は、きっと隠してあったんだろう。
少し見た目が、古めかしい珍しい白い瓶にはいっていて、お酒が入っているとは思えない結構大きい瓶に入っていた。
「名をドワーフ殺しっていう名酒だ
。こんないいもんくれたんだ。ついでに今日は、代金はいらん。」
そういって、渡されたお酒をみた。
うーん。
確か和樹が浩輔はまだお酒を飲んじゃいけないって言ってたよね?
そうだ!これは、私が預かっとこう。
そして、そのまま忘れ去られたお酒は。
数日後。ドラゴンのところに行ったときに、ドラゴンに気に入られ。
ドワーフ殺しのお酒が、ドラゴンの鱗に変わることになる
仮題。わらしべ長者です。
のんびり回です。