黒い生物の予感。
机の引き出しから変な音がする。
カリカリ、パリパリと不思議な物音。
最初は気のせいかと思ったのだが、日に日に音は大きくなり、もちろん気になって何回も引き出しを開けてみるが異常なし。
別に変わったものは入れていない。
ノートや教科書(元の世界の)等が入っているだけでその他には漬けペンやら異世界の物が入ってるが決して音を自ら出すものは入ってないはずである。
いや、入ってないはず。実は俺が知らないだけで動くとか?
・・・ありえないって言えないのが異世界だ。
まあ、別に変わった物を入れた覚えがないが、確実に机の方から音がする。
問題なのは、探すとならない事。
出来れば携帯を探してる時みたいに鳴らしっぱなしにしたいが、気分屋なその音を鳴らしている物はむかつくことに音の原因を探し出す前に音が止むのだ。
ただ、今回は違った。
俺は音が鳴り止まないうちに引き出しを開け放ち確認すると、すぐに閉じた。
どうやら、音はやはり、引き出しではなかったらしい。
「なんの音だ。」
発信元を探して聞き耳を立てる。
机の引き出しというより下の方から音がする這いつくばるように覗きこむと机と壁の間の方に何か挟まっている。
頑張って、腕を伸ばし引き出すと、それはこの間の竜からもらった。
・・・いや、無理やり渡された宝箱だった。
あの後。帰ってきたそうそうラビィが『和樹と旅に出ます。探さないでください、』っと紛らわしい置手紙を置いていったらしく。城は大騒ぎ。
それでノコノコ帰ってきた俺達を捕まえ。
説教と言う名の拷問があり、それも、何故か俺だけと言う理不尽。
フォードさん曰く
『精霊の本質はイタズラ好きなので一緒にいる和樹さまが〜〜〜』以下省略
だから、本能のまま生きているラビィを怒れないらしい。精霊さまバンザーイ。
そんな訳でラビィのせいで怒られた俺は荷物を適当に机らへんに置いた覚えはあるものの悪い思い出は削除とさっさと忘れてしまったのだ。
そして、目の前にはガリガリと音のする箱。
『ガリガリ・・・バリバリ・・・』
そう言えば帰る前ラビィは、なんていってただろうか・・・。
アバババババ・・・
あ、違った。
『なんかコレ。いい匂いするね。』
たしか、そう言ってた気がする。
って事は、俺はまだこの世界でG的なものを見た事がないがラビィがいい匂いっと言ったのだ絶対的食べ物が入ってたに違いない。
開けたくない。
見たくない。
日本にはいい言葉がある。
見ざる聞かざる言わざる。
うん。見なかった事に。
また元の位置に直そうとする俺に気づいたのか。箱の中で暴れる音。
慌て降ろそうとするが無残にもガチャンっと落ちて蓋が開く。
『ーーーーーーー』
「は?」
箱の中から声がする?
生き物。もしかして、これって動物的なもの?
おそるおそるゆっくりと蓋を開けると、そこには俺の知識の中では黒猫と呼ばれる生き物がいた。
ゆっくりと開けた箱を閉じようとするが体当たりで箱の蓋がまたいき良いよく開いた箱の中から後ずさった和樹の前に飛び出した。
グワァーっと伸びをするように身体を伸ばしながら羽根を広げている。
「・・・。」
「・・・。」
お互いが見つめ合う事。
約3分ちょうどカップラーメンができる時間である。
しかし、残念な事に3分で作れるカップラーメンは、ここにはない。食べたいけどね。
因みに味噌が一番好きな味だ。
え?現実を見ろって、いや俺はこれから夢に生きていく。
いや、もしかして夢・・・。
うん。夢に違いない。
きっとこの頃疲れてたから、黒猫とか不吉な物が目の前を横切っては、いないがいるに違いない。
もう一回寝ようと立ち上がる為についた手に痛みが走る。
そっと、手元を見ると指には・・・いや、指を咥えた黒猫もどき。
いたみを堪えながら睨みあうこと数秒。
「いい加減離せ!!」
ブンブンと手を振回す様に動かすが、離れない。するといきなり身体から魔力が流れ出ていく感覚と何かが流れ込んでいく感覚に本能的にやばいと感じ近くにあった短剣で身体を狙い振り下ろすがそれを察知した様に空を切り床に短剣だけ残ったが、手からは離れた様で一安心したのも束の間。
噛まれた指を見ようとして、さっきまでとの違いに気づいた。
「なんだこれ・・・。」
俺が腕にかかえている黒猫もどき
「和樹様。それはなんですか?」
それは、俺が聞きたい。だが、俺は自信を持って答える。
「サラマンダーだ。」
「いえ、サラマンダーっいうのは」
「違うんだ。サラマンダーなんだよ。」
かぶせる様に言ってみるが
「いえですから。サラマンダーっていうのは」
『サラマンダー』
「だから違うと、」
『サラマンダー』
「だから違・・・・・・」
『サラマンダー』
「いま、しゃべりましたよこの猫。」
『サラマンダー』
「いや。喋ったんじゃなくて、これ鳴き声みたいなんだよね。たぶん。」
『サラマンダー』
「サラマンダー・・・」
「だから、サラマンダーって名前にした。」
珍しい緑の目の黒猫(羽生えてるけど)は、何故か俺のペットになりました。
「おしまい。」
「おしまい。じゃないですよ。」
俺に叫ぶ様にフォードさん突っ込む。
そして、俺の横には俺の手の甲を見ながらマードックさんが早口で捲したてる。
「これ契約獣の紋章ですよ。種族によって形が違うんですが、見たことのない紋章ですね。・・・さすがというか。やはりというか」
カオスだ。
手の甲の入れ墨みたいになったやつを『これなんだとおもう?』っと軽い調子に聞いてみたらまさかの説教が入り現在にいたる。
いや、俺悪くない。
その前に指を手当てしたいんだけど・・・。
「契約獣には、魔力の受け渡しと術者の血の媒体。ああ、これですね。」
「いたい!!痛いって!」
ぎゅっと指を握られて、涙ながらに手を振り払う。
「意外に深かったんですね。」
うん。うんと頷きながら、俺の手から目をはなさないマードックさんの目をみて、こりゃダメだわ。
この人。いつもはある程度まともなんだけど研究とか興味のあるものがあると、研究しか考えない。
他のことをそっちのけで研究をする。
まあ、結果を出すのも早いから、宮廷魔導師としてそれなりの地位にいるんだけど、いままで研究対象になってたラビィを哀れに思っていたが、まさか自分がなるとは、背中に悪寒が走った。
この後。ある程度、解明されるまでマードックさんのストーカーが続いたのは、言うまでもない。




