男たちの野望は尽きない。
目の前にはチョコレート。
今日は、バレンタインデー。
乙女がもっとも心を震わせ、男が期待した心を打ち砕かれる日だ。
そして、そんな男たちの目の前には、プルリと揺れるチョコレート。
「な、なんて言うものを作ったんですか。」
「これは・・・凄いですね。」
「この弾力は素晴らしい。」
上からフォードさん、マードック、王様、の順だそして、
「駄目ですよ。こうそっと、優しくしてあげないと」
ついでに言うが、これは俺じゃないジークだ。
こんな男ばかりでバレンタインに何をしているのかというと、ちょっとした好奇心で始まった実験だった。
それは、あの日。ちょっとした報告をしに王様に資料を出すだけの筈が、なんだかんだで何故か話し始めてしまい。
「異世界には、そのような行事があるのか」
っと、いつものように王女様からの相談に対してのとりあえずの解決策と、鈍感主人公を字で行く浩輔にソロソロ自分でどうにか対応をしてもらう為のある意味解決策だ。
あいつだって、バレンタインは、知っている。
俺的にも、俺にも彼女がいないのになんでそんな他人の恋の相談やら応援やらをしなければならないのかと言う想いだが、いい加減。
鈍感主人公には、はっきりと想いを伝えないと絶対気づいてない。
訓練中物陰から覗いて様が、あからさまに会う頻度が偶然にしては回数が多すぎるとか気にしてないだろう。
乙女の想いは難しいのだ。
社会には社会の乙女には乙女の仕組みがあるのだろう。
なので、いい加減面倒くさ・・・ごほん
とにかく。バレンタインデーと言うチョコレート会社の、策略の為に始まった日本の恋愛イベントを王様に説明している最中だった。
それに女の子だけが、知っていても仕方ないイベントなため、門番や兵士そして、王様に下町でも噂になってる自分の世界の文化を話していた。
まあ、ここまで準備するのに1ヶ月。
しかし、準備中俺は気づいた。
「俺って、こんなに頑張ったけど貰えないパターンじゃね?」
そう、ここでも気づいてしまった。
まさか異世界でも、チョコを貰えないなんてこと。
・・・あり得る。なんたって、義理チョコなんて教えてない。
ここで俺は、また考えた。
どうせ。貰えないなら、もう作っちゃえばいいんじゃない。
え?見栄のために作りますよ。
当たり前じゃないっすか。もう、異世界だから母親からさえ貰えないそんな残念なバレンタインなんていやだ。っという訳で王様に一室借ります。っという承諾を貰いました。
そして、俺は、異世界の知識を総動員して作ってみたもの。
最初は無難にトリュフ。
次はチョコケーキ。
最後にウィスキーボンボン
え?お前は料理出来るのかって、何でもできるが心情ですよ。岩は、割ったりできないけどね。
ちなみに婆ちゃんの商会に作りかたを売っておくのも忘れない。
そして、こっそり作っていた筈の俺の所には、知らない間にラビィ、ジーク、マードックさんそして、何故かフォードさんに王様までそれも
「異世界には美味しいものがいっぱいじゃな。」
「他には、どのようなものが?」
勝手に食ってるし、まあ、いいけどさぁ。
おれのチョコなのに
「えーっと、中にジャムを入れたりしたのもありましたし、姉からは去年は嫌がらせに確か胸の形を模したチョコレートを貰いましたね。」
「なに?!」
ここで盛大に反応したのは王様だ。
「それは、柔らかいのか?」
「いや、硬いですよ。チョコレートですし、形だけで」
「柔らかくは出来んのか」
いやできねぇだろ。
っと心の中で盛大に突っ込んでいるとジークげ
「そういえばこの間マードックが兵士の依頼で岩を柔らかくできればっといって硬いものを柔らかい流動体に出来ないかっと言って魔法陣を書いてたよな」
何故お前が知ってるんだっとこの国の情報漏洩酷すぎるんじゃないかっと思ったが、王様は、気にしてない様子。
それどころか皆マードックを見つめている。
「出来るかもしれません。研究費を出してくださるなら・・・」
あっ、ちゃっかり、研究費をねだったな。
「だす。ただしF以上だぞ」
おい。
「・・・王様・・。即答はちょっ「やるぞ」
「「やるぞー。」」
何故かこの時フォードさん以外止める者がいなかった。
そう、もうこの時ジーク以外はかなり酔っていたのだ。
俺が作ったウィスキーボンボンの酒によって・・・。
ついでに言い訳するなら、王様がこの酒を入れたいだのジークがこの酒は合わないだの色んな酒を試しに入れて作りまくったせいで味見だけでも大量に飲んでいたのにもかかわらず誰かが(ラビィ)純度の物凄く高い酒を混ぜていたことに俺は全く気付いていなかった。
その後。今まで密かに静かにやっていた試作品作りは、酒の威力を借りた男たちの変な盛り上がりと興奮により冒頭に戻る。
目の前のそれは、まさに大きく艶かしく揺れている。
「これ触っても崩れないな」
「ええ、そこは頑張りましたから」
なんだかんだで一番頑張っていたマードック
「じゃあ、最初の試食は誰にしますか?」
その言葉に固まる男たち。
「ここは、一番偉い余がしよう。」
「いや、しかし、陛下に毒味もさせずお食べ頂くわけには・・・・。」
「そうだな。ここは、一番下っぱの俺が食べよう。」
「まあ、まて早まるな。」
などなど言い合いながら、王様が権力でその最初の一口目をもぎ取りその小さく尖った場所に口付けようとしたその時。
コンコン。ガチャ
「うるさいですが、なにをしておられるんですか?」
「「「え?」」」
そこに現れたのは、何故かレジーナさんと・・・。
「あなた一体なにを食べようとしておられるんですか?」
冷たい目をした王妃様が、王様を貫くように見ていた。
王様の手には、揺れるチョコレート。
シーンと静まり固まる男性陣と、入ってきた女性陣。その女性陣の肩にはラビィが座っていたのを俺は見逃さなかった。
だが、俺は、ちゃっかりマードックさんの後ろに下がると逃げ出した(テレポート)した。
うん。
みんなごめん。みんなの犠牲は忘れない。
そんな事を誓いながら、周りを確認。
「よし。ここまでくるば、大丈夫だろう」
そこは、訓練場に続く通路。どうやら、テレポートは、うまくいったらしい。
逃げ出したいっという。俺の想いが奇跡をよんだらしい。
「あれ?和樹?」
いきなり名前を呼ばれてギギギ・・・っと振り返るとそこには浩輔。
「お、おう。なんだ浩輔か」
なんだお前かよ。っと思いながらレジーナさん達じゃないことに安堵する。
「珍しいね。こんな所に」
「ああ。ちょっとな。なんとなく浩輔元気かなぁっと・・・」
我ながら苦しい言い訳を言いつつ
まあ、言われてみれば俺は、あまり訓練場に寄らない。別に隊長さんが暑苦しいとか訓練強制参加させられるからだとかそんなことは決して、決して思ってない。
そんなことを思いながら、テレポートする時につい持ってきてしまったチョコレートの乗った皿を見る。
これどう処分しよう。
ちらっと見ると、浩輔がチョコをみている。
「食べるか?」
「え?まじでいいの?疲れてたから嬉しいよ。」
そういって、嬉しそうに頬張る浩輔。
「全部食べていいぞー。食え食え。」
そういって、俺の証拠は消滅(完食)させた。
しかし、俺はこの時気付いていなかった。
浩輔にチョコレートを渡すために浩輔が来るのを張っていた女の子達がたくさんいた事に。
そして、俺は後日知ることとなる。
『バレンタインのチョコレートを和樹様から浩輔様にプレゼントされ、浩輔様がそれを喜んで受け取り食べていた。』
そして、想い通じ合った2人は付き合い始めたという噂が広まり王女から呪いの人形が送られてくることになるなんて事を。
それも、何故か俺が浩輔にやったウィスキーボンボンは、2人の愛を叶えた品として、売れ行きと、バレンタインの愛の宣伝になるという。要らない福音までもたらした。
もちろん。俺が久しぶりに引きこもったことは言うまでもない。
バレンタインの話最終話です。
落ちになってるのか?
笑ってもらえたら嬉しいです。
ここまで読んでもらえてありがとうございます。




