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侍女視点

我が国に勇者様が召喚されました。

国中の一大トップニュースです。


私は直に勇者様に話すことは出来ませんが、私には、宮廷魔導師で友人のマードックという男がおり。


この頃、この男に勇者様のお話を聞かせてもらいます。


今日もマードックを見つけ、私は、話しかけます。


「マードック!」

「なんだ!レジーナか」

「なによ」


残念そうにこちらを振り返った男に睨みつけ、ついキツイ口調になってしまうのは、いつものことです。


「また浩輔様の話か?」

「当たり前でしょ。気になるじゃない」

そう言いながら、ちゃっかり私はマードックの腕を確保します。


「今日は、そんな気分じゃないんだが・・・」

歯切れの悪いマードックに私は聞きかえします。

「どうしたのよ」


「浩輔様の先生がおられる話は、前にしたよな?」


「ええ、なんでもいつも一緒にいてくださって、あの宮廷剣士のアレックス様でも勝たれる浩輔様を助けることの出来る。頼れる方なのよね。」


「そうなんだが、いつものようにその先生の和樹様を思い出されてな。」

悲しそうにマードックが目を閉じました。


「本当に慕っておられたのね」


話を直接聞いたわけではないけれど、和樹様と言われる方は、浩輔様をいつも助けて時には怒り時には教え導くっと言う神様みたいな方らしい。


そんな方と離れ離れに我々がしてしまったと思うと、心が痛む。


「だが、もう一週間だ。いろいろと、覚えていただかなくてはいけないこともあるんだが、なにも頭に入っていかれないんだ。

まあ、私の教え方が悪いのかもしれないんだが」


やっぱり、寂しくて、上の空になってしまうのだろう。

マードックは、とても教え上手だ。

なんたって、彼は平民から上り詰めた努力の人だ。


「ああ、だからなのね、世話役のフォード様がずっと儀式の練習を何度も教えたりなさっているね。」

「まあ、いきなり異世界に呼び出されたんだ。

それも、家族より慕っておられた和樹様も近くにおられないんだ。寂しかろう。」


「きっと、とても頼りになる。立派な方なんでしょうね。」



私は、この時。剣王と呼ばれ、各地を放浪されている。

一度だけお見かけしたことのある。物腰の柔らかな、しかし、どっしりとした落ち着きのある老人を思い出して、きっとあの様な方と各地を旅していたに違いないと勝手に思っていました。



しかし、この数日後。いきなり、物事は、動き出します。

浩輔様が


「俺が来れたんだから、和樹も呼べるだろ。」


という言葉に端を発し、この世界初勇者以外を召喚するという試みが始まりました。

これには、心を砕かれた王女様のみならず、王様まで援助をなさるという一大事業になりました。

我が国は、慈愛と救済を謳った国で有名ですからね。

ちょっと、腹黒い方もおられますが、宰相様とか。


そんな中、和樹様のことを知るために話された浩輔様の話は、一冊の本になり、各地で魔物のような 悪人をバッタバッタと、倒したり交渉をしたりと、和樹様の人となりがわかる一冊が出来あがりました。

それを見た、浩輔さまは、大変喜ばれたそうです。


私も、その笑顔を見たかったです。

だって、浩輔様は、かっこいいですもの。


しかし、勇者様の志は高く。

「和樹のすごさは、これだけじゃないんだ」

と言われたため、ただいま第二弾の本が製作されております。

宰相様いわく。これで研究費用を賄えば良いのです。っだそうです。


私は、こういう本が大好きなので、今度ご本人にもお会い出来た時にお話を伺いたいと思っております。


マードックによると、この本を浩輔様のところに持って行くと本を読みながら、この時のことをそれはそれは素敵な笑顔で語ってくださるそうで、王女様は、顔を真っ赤にされて聞いておられたそうです。


我が国には、まだ王子様がおられませんので、もしかしたら、陛下が、お許しになられればお子が出来る日も近いかもしれません。


そして、ついに一ヶ月というなんとも短い期間を経て、和樹様の召還陣が完成いたしました。

我が国の技術力を甘くみてはいけません。

マードックもいますし。

それも、一発で成功という快挙をなされました。

さすが、勇者様です。


そして、あらわれた和樹様は漆黒の服に漆黒の髪。そして、少し茶色がかった黒い目でキリリっとした雰囲気をお持ちの方でした。


対象的に勇者様は、黄金色のキラキラとした金髪に温かみのある茶色の目をなさっていたのですが、和樹様の話では、勇者様も向こうの世界では和樹様と同様の黒色の髪だったようです。不思議です。


ついでに、和樹様が今現在来ていらっしゃった服は、学ランという服で浩輔様と同じ系統の勇者様用の服をご用意しようとしていたのですが、『一緒の服は、さすがにちょっと』っと申されたらしく。

今、和樹様のために調べて学ランなる服を何着も作っております。


それを伝えた所。和樹様は、

「俺。一生学ラン着ることにならないよな・・・・」

となにやらブツブツ呟いておいででした。

どうしたんでしょうか?


とても、いい生地でかっこいいですよね。この服になにか、問題があるんでしょうか?

私には、わかりません。




しかし、私は、和樹様と浩輔様が同じ歳だったことにびっくりしてしまいました。


わたしは、老人の男性を勝手に想像していたのですが、実は、あまりにも浩輔様が恋しがっておられたため、和樹様は女性ではないのかという噂が出ており、好きな女性だからあんなに必死になっておられるのではないかとの噂もあったのですが、男性で皆、安心しております。

なんでも、王女様がその噂を聞かれた時は、

「この事業を潰した方がいいのかしら。それとも・・・。」

っと悩んでおられたことは、私たち侍女の極少数しか知りません。


しかし、私は、若い和樹様を見て本当に本のような人物なのか?という疑問が出ていたのです。

ですが、そのような疑問など燃えすぎて消し炭になりました。



その理由は和樹様は、異常なまでの短時間での魔道書の習得と、その中にあった魔道書に紛れ込んでいた本により、王族のような洗練された優雅な動きを習得なさったことで悪い噂を消し去ったのです。



その本は、先々代の王様が自ら、作られた『宮廷マナー』っと言う本で。

これは、あまりにも物覚えの悪い王子に見兼ねて、作られたマナー本でした。

もちろん偉大な本なのですが、その後、そうそう活躍することがなくそのまま何処かに消えてしまった魔道書だったのですが、何故か混ざってしまったようです。

まあ、そのことについては、和樹様は、

「まあ、結果オーライということで」


と言われておいででした。




ただ、魔道書は、作るものの悪意によってたまにその物の思想に囚われることがあるのですが、一時期本当に和樹様なのかとの噂も出たことは内緒です。


出来る男は、嫉妬も買うのです。


あと、そうそう、私ついにやったんです。


実は、密かにメイド達の中での競争が、あっていた和樹様の側付きのメイドになんと私が、選ばれました。


最初、『自分でできるし大丈夫だから』と言っておられた和樹さまでしたが、私が『クビですか・・・。』っと半泣きになっていたら、渋々了承なさいました。


私は、マードックに私を押しといてっと、せっせと裏工作をしたなんて事もあったんですが、やっぱり実力でしょうか?

ふふふふふ。

結果名だたる名門令嬢を差し置いて、選べれました。

楽しみで仕方ありません。






王宮で生活始めて一週間が経った。

この日。俺の元にとある本が届いた。


「和樹様の武勇伝 パート2」


「ごめん。レジーナさん俺。目がおかしいらしくて、絶対に読み間違ってると思うから、この本のタイトル読んでもらっていいかな?」


「はい。和樹様の武勇伝 第二巻ですわ」



「えっと、自身過剰って思うかもしれないけど、この世界にも和樹って人がいるのかな?」



「いえ、私の知り合いにも知っている人物にも和樹様の以外を和樹と言う名の方はおられませんよ。なのでもちろん、この本は、和樹様のご本になります。」



「・・・・・」



「・・・・」ニコッ



「・・・・お茶もらっていいですか?あと、少しこの本読むので放置しといてください。」



「はい?・・・では、ご用意いたしますね。」


そして、俺は、速攻で本を読み終えると、浩輔のところへ。



「俺の小学校の黒歴史を異世界で本にしてんじゃねー」



と殴り込みに行ったことは、このあと、俺の知らないところで作られた第三巻に書かれる残念な出来事になりました。



ついでに五日間引きこもったことは言うまでもなく。



そして、引きこもりながら思ったことは、



パート2ってことは、パート1があるってことだよな・・・・。



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