ラビィが誘拐された日8
「とにかく。移動しましょう。」
そう、兵士に言われて、移動した先は、祭りの間の三日間だけに作られた駐屯所。
テントを張り出しただけの簡単な作りですぐに撤収出来るように作られている。
中に入り、周りを見渡すと、何人もの兵士がもう夜に傾こうとしているのにもかかわらず入れ違いに入ったり出たりしている。
それをぼんやり眺めていると、飛び込んでくる人物がいた。
「和樹の手紙を持ってきたやつは?」
そう叫んだ少年は金髪で少し派手な格好の服を纏い何処か浮世離れした物語に出てきそうな容姿をしている。
一瞬見惚れて、固まるが
「えっと、俺らだが」
なんとか驚きながらも返事を返すと掴みかからないばかりに詰め寄ってくる。
「和樹は?和樹は、何処にいる?」
なんども、和樹とつぶやく少年は、何かに急がされて焦ったように声を荒げる。
「お兄ちゃんなら、ラビィを助けてくれるって」
やっと、回復したクオンがそう言うと、険しい顔で聞き返す。
「一人でか?」
「いや、様子を見るって言ってたが?」
舌打ちをしそうな勢いで美しい顔を歪めた少年は、何処だ。場所は?
っと叫んでいる。
なんなんだこの少年はっと思いながら一応、自分たちも場所は、よく知らないが、手紙に書いてなかったのか?というと、やっと追いついてきたのかテントに飛び込んできた男が、止めに入った。
「浩輔様落ち着いてください。」
「和樹は、暴走するんだ」
意味不明に叫ぶ少年に皆「は?」となるが、少年は続ける。
「和樹は、自分で起こした問題は何故か自分で解決しなきゃっと思ってて、そういう時は特に人に自分から助けは求めない。だから、俺行かないといけないんだ。」
焦りながら喋る少年は、何やら暴走する和樹がしんぱいらしい。
「要点はわかったが、つまりこっちに知らせる前に自分一人で乗り込んでいく可能性があるってことか?」
そうジークが問うと、頷く浩輔。
「それってやばくないか」
ジークは、呟く。やっぱ一緒についていけばよかった。何が様子見だ。
もうきっと、目的地について乗り込んでる頃合いだ。
「場所が今すぐ分かるものないのか?」
ジークが頭をふると、後ろで浩輔を止めていたフォードが閃いたように発言する。
「伝書鶴なんて、どうですかね?」
「は?」
っと皆疑問に思ったがフォードは、続ける。
「あれは、登録した人物に向けて飛び立つ仕様なので、和樹様に向けて飛んでいくんでは?」
「それだ!!」
叫ぶ浩輔は、急いで伝書鶴を取り出すと、魔力を流す。
鶴が動き出すと、「ーーーーーーーーー」そう小さく呟き。
鶴は、飛び立つ。
「行くぞ。」
そういって先頭をきって駆け出す浩輔に続くが、思ったより早い。
っというか早すぎる。しかし、浩輔だけは余裕でそれに追いついていく。
「ちょっと、こうすけさまー。」
フォードが叫んだのは仕方ない。
「あのスピードについていけるとは、やっぱり、勇者様ってすごいですね。」
マードックは、もはや他人事だ。
しかし、
「は?勇者?」
「え?勇者様?」
ここに違うことで驚いていたのは、浩輔が勇者ということを知らない二人だけだった。
次、7/8です。




