後編
この人たちに、
そうだヒケンシャだ、それにセンセイが、
見えないところに置いたボールの場所を、
あてずっぽうでもいいから指差して欲しい、と、
こう頼むわけですよ。
するとね。
これが、けっこう当たるんですって。
目には見えてないんですよ。
本人たちも、そんな気がするってェだけなんです。
でも、ちょっと偶然とは言えない確率で、
正しい場所を指しちまう、
それどころか、
そのボールが何色かまで当てるってんですから、
驚くじゃありませんか。
ヒケンシャさんにしたって、見えるとは分からない、
でも実際、見えてるワケでしょう。
私はそういう経験ないんで、ハッキリとは言えませんが、
いまこのジブンが
見えてると思ってることが全てじゃない、
この歳まで生きているとね、
そのくらいは分かります。
そんでもって、まあ、
夜中なんかに便所に立って、
鏡の前に向かったときね、
ふいに背中がゾッとする、
後ろにどうもナニカいる、
あの感じ。
おそるおそる、鏡を見てみる、でも何もいない、
そんで安心して「なあんだ」ってワケでしょう。
でもそうじゃなかったら。
このヒケンシャとおんなじ仕掛けで、
私が分かってないだけで、
本当にその怖いナニカが
私の後ろにいるとしたなら。
私はねぇ、この話聞いてから、
すっかり怖くなっちまって、
夜中にひとりで小便行けなくなっちまったんですよ。
へえ、アンタ、笑ってください。
おわりです。
お読みいただきありがとうございました。
みなさま後ろにご注意を。