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スコット 2

待機室から夫人を伴って出てきた昔の男、スコットの父親はずいぶん年をとっていた。

息子のEVD感染と緊急帰国の騒動で、ふたりともこの数日で一気に老け込んだのかもしれない。


「スーザン! 留守電を聞いて来てくれたのか?」


「いいえ、外出先でニュースを見たから飛んできたの」


「そうだったのか。ゆうべ留守電を入れておいたんだ」


「スコットは?」


とスーザン。


「とても危険な状態だ。帰国前にEVD未承認薬を本人の同意のうえで投与されたらしいがまだ効果はわからない。ゆうべ2度目を投与した」


そして父親は続けた。


「スコットはうなされながらキミの名を呼んでいる」


「スコットはあなたの名前しか呼ばないの! お願い、あの子を呼び戻して! あなたにしかあの子を呼び戻すことはできないの! お願い! お願い! スコットを助けて」


夫人は泣きながらスーザンにすがりついた。抱き合ってスーザンも泣いた。

その背後で父親が言った。


「スコットはずっとキミが来るのを待っていた。だけど私たちはキミがスコットの元へ行かなかった決断を歓迎していたんだ。こんなことになるなら……」


父親の言葉が途切れた。


「スコットに声をかけることはできる?」


涙をぬぐってスーザンが聞いた。

スコットが隔離されている病室のインターホン越しにスーザンが話しかけた。


「スコット、おはよう! もう朝よ」


「起きなさい! スコット。スーザンよ」


一緒に暮らしていた幸せだった日の朝のようにスーザンはスコットに声をかけた。


「スコット、あなたを愛してる! もう絶対離れない! 二度とあなたをひとりにさせない、愛してる!」


酸素マスクの中でスコットの唇がかすかに動いた。「……スーザン」


EVD未承認薬の2度目の投与が功を奏したのか、その後のスコットの回復はめざましかった。しかしスコットの両親は、息子をこっちに呼び戻してくれたのはスーザンの愛だと信じていた。


完全に意識を取り戻した時、隔離されている病室のガラス越しにスーザンの姿を見つけたスコットはやつれた顔でにっこり笑った。スーザンも泣き笑いの顔で小さく手を振った。スーザンの後ろで両親が抱き合った。


消えてしまいそうだった命のキャンドルの灯が、今その勢いを取り戻した。


自分たちの街に帰ったエヴァンとラルフ、奇跡を信じて待っていたイーサン、シンディにスーザンからスコット生還の知らせが届いた。ふた組のカップルは抱き合って喜んだ。


スーザンの恋の2話目は、長い時を経てハッピーエンディングストーリーで完結した。



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