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Rainy Night

雨の中、泣きながら帰宅したスーザンは車をガレージに入れようとした。

ハンドルを切り替えているとヘッドライトに照らされた人影が見えた。

傘もささず、ずぶ濡れでドアにもたれかかってるスコットだった。


「スコット・ヒューズ! なにしてるの?」


「先生を待っていました」


「ずぶ濡れじゃない、とにかく入って」


スコットにタオルを渡して、キッチンでお湯を沸かしながらスーザンは混乱していた。

彼は教え子、元カレの息子、20も年下。大人の対応をしなさい、スーザン。

リビングに戻るとスコットは髪だけ拭いてそのまま立っていた。


「座って、お茶をいれるわ」


「いえ、ソファーが濡れます」


「いいから座って!」


動揺を隠そうと強い口調になった。


「父さんに聞きました。先生と父さんがつき合っていたって真実ですか?」


ああ、昔の男は息子の将来を守るために自分の過去をカミングアウトしたんだわ。父親としてのプライドも捨てる覚悟で。そうしてでも息子の恋をあきらめさせようとしたんだ。


「そうよ。何年もつきあったわ」


わざと平たい声でスーザンは言った。


「母さんが病気の時も父さんと先生はつき合っていたんですか?」


「そうよ。もしかしたら妻の座につけるかと思っていたわ。結果は違ったけど」


「嘘つかないでください」


「本当よ」


「嘘つかないでください! 幼かった僕だけど、病室で母さんに言われたことを覚えています」


「……」


『ママが天国へ行っても、すぐにすてきな新しいママが来てくれるわよ。ママがお願いしたの。ブロンドの美人でお医者さんで、パパのこともあなたのことも愛してくれるわ、だから悲しまないで』


「それって先生のことですね? 母さんから頼まれたのは」


スーザンは言葉を失った。沈黙が肯定を意味することになった。


「僕は母に感謝してますよ。生きていてくれたことに。もし先生が僕のお母さんになっていたら今のようにひとりの女性として先生に出会うことができませんでしたからね」


スコットはスーザンに近づいて続けた。


「先生をひとりの女性として愛することができて僕は幸せです。受け入れてもらえなくていいんです」


そう言いながら涙する生徒を、スーザンは抱きしめていた。スコットの体はすっかり冷えていた。


翌朝、ふたりは先生と生徒の関係ではなくなっていた。



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