スーザンの恋 2
「彼と別れてから仕事ひとすじだったわ。彼とご家族が幸せに暮らしていることで私の決断が正しかったと思えるようになるまでにはそんなに時間はかからなかった。でも自分はもう恋には疲れてしまったの。エヴァン、お酒のおかわりいい?」
基本的に酒が強いギルバート家の中でもスーザンは飛び抜けて酒豪だった。
「もう何年も恋を封印した私を、激しく愛する男性が現れたの」
それでもまだシングルだってことはまた道ならぬ恋だったんだろうなとエヴァンは思った。
「私の教え子の学生なの。最初は大人をからかってるの? って笑っちゃったわよ。だって20近くも年下よ、スコットは。バカなこと言ってると単位あげないわよって相手にしなかったの」
「でも講義中も他の学生とは違う真剣な目で私を見つめてるの。私はつい意識して彼を無視してたわ、大人気ないと思う。彼、おかげで成績は良かったわね、熱心だったもの。彼にとっての恋の障害は20歳の年齢差だけじゃなかったのよ。当時の彼は知らなかったことだけど」
静かな期待と戦慄に支配されたリビングの一同は次のスーザンの言葉に耳を傾けていた。
「私は父親とその息子に愛されたの。スコットは若い日に愛した男の息子だったの」
「現実は小説より奇なり……だな」
使い古された言葉がエヴァンの口から漏れた。
「昔の男から呼び出されたわ。苦渋に満ちた表情で『スコットがキミを愛してると言い出した』『彼の将来を考えて行動してくれるよな、頼む』って懇願されたの、もうすっかり父親の立場だけの彼にね。昔の男に復讐するほど悪女じゃないわよ、だってきれいに別れたんですもの」
「でもその夜、家まで車を運転しながらなぜか涙が溢れたわ。どうしてだかわかってた。スコットのひたむきで純粋な思いに、すでに私の心は揺れていたのよ、おばさんのくせにね」