参。
雨。
それが地面にあたる音は障子を閉めていても私の耳に無理やり入り込んでくる。
「それーっ」
「ちょっと、ひよ危ないじゃないの」
家の中でおばばからもらった竹とんぼを飛ばすひよにともえが注意をする。
「そういうのは外でやりなさいよ」
「だって最近ずっと雨なんだもん。ひよ、おばばからもらった竹とんぼたくさん飛ばしたいよ」
「だからってここで飛ばしていいことにはならないじゃない」
ともえの声が苛立ち始める。
「おーい、何怒ってんだよ」
うめが二人の間に入ってなだめる。
私は立ち上がって廊下に出た。
障子を閉めるとうめたちの声は雨の音の中で消えてしまった。
私はぼんやりと空を眺めながらその場に座る。
こんなに長い雨はいつぶりだっただろうか。
雨は嫌い。
嫌いだこんなもの。
嫌いだから早く止んで欲しい。
間に合わなくなる前に。
「あやめ姉さん」
「あやめ姉さん、大丈夫?」
いつの間にか下がってしまっていた頭を上げるとそこにはさえとちえがいた。
「隣」
「隣に座っていい?」
「もちろん」
さえとちえが私をはさむように座る。
「雨嫌い?」
「あやめ姉さんは雨嫌い?」
「えぇ……。でもあなたたちは違ったわね」
「うん」
「うん、違う」
「双子」
「私たちは双子だから」
「ちえを嫌いになれない」
「さえを嫌いになれない」
「でも」
「でも」
「あやめ姉さんが雨嫌いなら」
「私たちも雨嫌い」
二人が左右から私の顔を覗き込む。
『早く晴れるといいね』
「……」
私はうなずく。
「そうね、晴れてくれなくちゃ困るわ。ひよとともえがいつも以上にけんかしてしまうもの」
「じゃあ」
「じゃあてるてる坊主作らなくちゃ」
ちえとさえが立ち上がる。
「あやめ姉さんも」
「あやめ姉さんも作ろうよ」
「わかったわ、せっかくだからみんなで作りましょう。先に行って準備をしておいてくれる?」
「うん」
「うん、わかった」
そう言って二人は中へと戻っていった。
きっと二人なりに私に気を使ってくれたんだろう。
私たちにはもう何もできない。
だからせめて祈ろう。
どうか一刻も早く雨を止まさせてください。
これ以上、私の家族が増えないように……。
つづく