大海原の向日葵
早朝。
ふと車の中で目が覚めた。
乗用車の左側に凭れかかって眠っていたので、左の車窓の外の景色が始めに目に入った。
「えっ……」
思わず目を疑った。
そこに広がっていた光景。それは、朝日が昇りかかっている大海原だった。水平線から少し顔を出した金色の朝日が、大海原を白く輝かせていた。
車の前方の時計を見た。
a.m.5:32と表示されている。この季節なら、ちょうど夜明けのタイミングだ。
もう一度外に目をやる。
先程よりも増して、幻想的な光景になっていたような気がした。
だんだんと朝日が昇ってくる。
その朝日の放つ光がすごく眩しくなって、思わず顔をしかめた。
「愛理」すぐ前の運転席から、私の名前が聞こえた。
すぐ前の運転席から私の名前が聞こえた。
「起きたか?」
「うん」
声の主は父だった。
「ねぇ、お父さん」
「ん?」
「あとどれくらいで着くの?」
多分、私の顔はしかめっ面だったと思う。
「あぁ、もう海が見えているから、1時間もないだろう。着くとしたら、6時くらいだな」
昨日の夜7時ごろから10時間以上運転しているのにも関わらず、父は相変わらずだった。
左隣を見た。
私の左の座席では、兄の伊吹が眠っていた。
「兄ちゃん起こさなくていいの?」
私の言葉に父は、笑いながら
「着くまで寝かしておけ。どうせもうすぐだから」
と言った。
また外を見る。
完全に昇りきった朝日が、東の空で輝いている。
それは新しい地で生活を始める、私たち家族を歓迎してくれているように見えたのは、私の気のせいだったのだろうか。