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あの夏の景色  作者: 伊歩
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第四章 今が幸せだから

「ほらっ行って来いっ」


「えっあっそのっ・・・」


「今更やめるの?直樹君と戻りたいんでしょ?」


「そっそうだけど。」


「だったら、ほら、行け」


「はい・・・・」


朱里と千弘に無理やり背中を押され、


教室で友達と仲良く話している直樹のもとへ向かう。


「直樹・・・・」


直樹をふくめ、ぺちゃくちゃ喋っていた男子たちが一斉にこっちを見る。


「どうしたの?」


直樹が目を見て返してくる。


「あの、これっ」


日誌を渡す私。直樹は今、千弘と席が隣で、


日直が書く日誌。


半分、千弘たちにパシられただけ。


「あ、ありがと・・・」


「じゃぁっ」


足早にその場を去り、千弘たちのもとへ帰った。


「おかえり~」


「できたじゃーん」


「あのさぁ、あれって完ぺきに私パシられただけじゃない?」


「そんなことないよ~」


「うんうん!私たちは柚乃に協力してるんじゃ~ん!」


「うーーん。まぁ、ありがとう・・・?」


二人はにこっと笑った。


久しぶりに長く合わせた目と目。


緊張した。


これだ。これが付き合いたての時の私だ。


思い出した。あの時の感情。


そうしたら、そうしたで


今度は、腹が立ってきた。悔しくなってきた。


なんで、私は幸せを手放してしまったのか。


自分にむかついて、


涙が出てきた。


教室から飛び出して、トイレで大泣き。


もうじき昼休みは終わってしまう。


そろそろ、出なきゃ・・・


廊下をとぼとぼ歩いている。


下を向いて歩いていた私はなにか人にぶつかったようだ。


「あっごめんなさいっ」


そして上を向くと、


「な・・・おき」


ギュッ


「????????」


直樹が私を抱きしめるの。


「なおき・・・?」


「柚乃・・・・」


私の名前を呼ぶ彼の力は徐々に強くなって


一回、一回、名前を呼ぶたび、


強く抱きしめてくれた。


彼の背中に手をまわして、


教室に向かう廊下の途中。


きっと、いろんな人に見られてる。


でも、そんなのもうどうでもいい。


この状況を理解できていなくても


自分が今、幸せだということはわかったから。


「柚乃、ちょっと、次サボろ?」


「え?」


「話したいから。」



そういう彼に、ついていった。

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