第3章 やっぱり好きだから
直樹を彼氏として失ってから2週間。
教室で目があっても、いつも私からそらしてしまっていた。
「ねぇ柚乃さぁ、直樹君のこと、好きなんでしょ?」
お昼の時間、お弁当を広げて友達の朱里と千弘と話している。
この質問を投げてきたのは朱里だ。
朱里はズバズバしている性格で
言いたいこと、気になることはなんでもすぐ言う子。
「すっ好きだよ。」
「ほらねっなんで別れるって、うなずいたの!」
怒られる私。
直樹のあの言葉にうなずいたのは、私が一番馬鹿だったと思ってる。
分かってるよ。
でも、あの時はあぁするしかなった。
もう付き合ってる意味なんてあの関係にはなかった。
「ねぇ、私、聞いたんだけどさ、直樹君がいるバンドの
キーボードの子、直樹君のことすきみたいだよ。
ほら、あの子。」
千弘が指さしたのは
ツインテールの背の小さなおっとりした女の子。
同じクラスで、名前は崎原 花音。
結構人気な子みたい。
「ふーん」
私は冷静を装うのに必死だった。
どうしよう。
あんな子に、勝てる訳ない。
もう、2度と直樹ともとには戻れない。
そんな予感が脳を走った。
「柚乃、ほんとに戻れなくなるよ?いいの?」
「・・・わけ・・・ない・・・」
「え?」
「いいわけない」
そう、いいわけない。
当たり前だ。
「そうでしょ!そうだよ!柚乃!偉い!」
「協力するから!」
「・・・ありがとう」
高校1年の冬のこと。