長い夜の始まり
「ピンポンパンポーン」
突然ホテル内にアナウンスが響いた
「本日はホテル、サニーガーデンにお越し下さいましてありがとうございます」
「19時になりました、只今からナイトタイムに入ります」
アナウンスが終わると
天井にあるライトは光が抑えられ
照明灯が青い光を照らし
あっという間に夜の空間が出来上がった
ホテル内を照らす蒼白い光が涼しさを感じさせる
幻想的な青い光はまるで鈴虫のさざめきが聞こえてくるような、静寂の夜を感じさせた、
さて、ちょうど良い感じに腹も減ってきた事だ
そろそろ皆と集合しよう
確か夜に待ち合わせだったけど、集合場所は決めて無かった、
とりあえず電話して連絡をとろう
「…」
「……」
「………」
アレ?……出ない
おかしいな、まさか忘れてるんじゃ…
もう一回、
その後、何度か掛け直してみたものの電話が繋がる事は無かった
……部屋に戻ろう
少し待てば戻って来るかもしれない、ひょっとしたら部屋で待っているかも
俺は部屋に戻って皆を待つ事にした
しかし、
いつまで経ってもアイツ等は帰って来なかった
「……はぁ」
思わずため息が漏れる
どれくらい待っただろうか、
時間だけが無駄に駆け足で過ぎてゆく
時計の針は20時を過ぎようとしていた
何か…変だ
確かに皆マイペースな奴等だけど、遅れる時には連絡の一つぐらいする筈だ
やっぱり少し不安になってきた、このまま何もするより自ら探しに向かった方が得策かもしれない
「うん……探しに行こう」
広いホテル内、心当たりのある場所を全て探したが結局見つからなかった
……ずっと探し回っていて少し気になった事がある
これだけ色んな場所に行ったのに、クラスメイトの誰にも会わなかった
このホテル内には俺を含めて24人のクラスメイトがいる、これだけ歩き回ったのだ、普通一人ぐらい見かけてもいい筈なのに………
不安という名の細菌が頭の中でざわざわと増殖していく、
「たまたま……だよな?」
俺はアドレス帳に載ってるクラスメイトに片っ端から電話を掛ける
誰でもいいから頼む、電話に……
「駄目だ…やっぱり……出ない…」
本当は――最初の電話が繋がらなかった時から嫌な予感はしていた
でも、まさか……
そうだ!
部屋に誰か戻ってるかもしれない
皆の部屋を確認しに行こう!
俺はコテージを一つ一つ確認したが…
誰も部屋には戻っていなかった
何処に行ったんだよ……皆
最後のコテージの前、俺はある事に気付いた
「あれ?」
この部屋だけ鍵が開いてる
確かこの部屋は女子の班が泊まっている部屋だ、ひょっとしたら誰かいるのかもしれない
ノックをしたが返事は返ってこない
……女子の部屋に勝手に入るのは悪い気がしたが、
「…今はしょうがないよな」
扉を開いて中を覗き込む
「…おーい、誰かいるか?」
やっぱり返事は返ってこない、少しだけ中を調べてみよう、
「……」
やっぱり此処には誰も戻ってきていないようだ
ふと、視界の端にある物を見つけた
……ん?
それは机の上に置かれていた
「これって…」
鍵だ、
この特徴的な細工、多分このコテージの物だろう
あれ?何か変じゃないか?
だって部屋には誰もいないのに、
鍵がここにある…
閉め忘れならともかく、鍵を持ち出してすらいないなんて
いや、持って行く事も忘れていただけか?
でもこんな机の真ん中に置いてあるなら普通気付きそうな気もするが
「………」
夜になってからみんなの姿が見えない
誰とも連絡がつかない
どうしても嫌な予感はかりが頭の中を巡ってしまう
偶然なのか?
たまたまみんな出掛けていて
たまたまみんな電話に出られないのか?
あり得るのかそんな事……
だけど、もう俺にできる事はなんて他に何がある?
電話もさっきからずっと掛けているが、やはり誰も電話に出ない、
もはや容易に想像できる、何かまずい事が起こっていると
もう帰ってくるのを信じて待つ事しかできないのではないか?
……いや、まだ一つ残っている
不確定な可能性だが
白石さんは俺達が襲われる事を予言していた
確かに今、友人達に何かが起こっているのかもしれない
という事は……
彼女なら何が起こっているか知っているんじゃないか?
『アレ』とは何の繋がりもない話だ、まだ俺は信じた訳じゃない
だけどもう俺には
彼女に頼るしかなかった
開けてみようこの封筒を――