はじまり
7月。上旬。土曜日。
もう生きるのに疲れた。
人間五十年と信長は言って、本能寺で死んだ。
享年49歳だった。五十年生きてないじゃん。
五十年生きた奴が人間五十年言ってるなら、まあ人間の人生で輝いてるのは五十歳までだとか、まあ深読みすることもできただろう。
小学生が、昔通ってた幼稚園に久しぶりに行って馬鹿みたいに叫ぶ、「なつかしー!!」並みに嘘臭い。首つって死ね。
そんなことをぼんやりと考えながら、僕は自転車を漕いでいた。
ゲーセンへ。(このへはひらがなのへです。)
金はない。ただゲーセンに行ってボーッとするだけだ。家にいると母親や妹がうるさい。
今日も塾がどうとかで、二人仲良くヒスってた。二人仲良く原付に轢かれろ。
ここで2tトラックではなく原チャリを持ち出すのが、僕の優しさだ。受け取れ。
そうこうしてるうちに、ゲーセンに辿り着いた。
このゲーセンの上はボーリング場になっていて、300メートルくらい離れたところにある、最近できた複合遊戯場に押されぎみではあるものの、マニアな人たちで常に賑わっていた。
自転車を停めて、自動ドア前まで歩くと、手を挙げた。
最近調子が悪く、上についてるセンサーに手を近づけなければ開かない。イラつく。
入ってすぐのところにキモオタどもがたむろってた。邪魔だ。
そんな君たちに僕があだ名をつけてあげよう。左から糞メガネ、牛脂、骨皮、坂井くん。
坂井くんはクラスメイトだ。体育の時間、シャツをズボンにねじ込んでいる。
彼は外部生なのに、なんであんなに頭が悪いのだろう。割愛するが、たぶん僕と同じかそれ以下だ。
坂井くんたちは僕に気づいていない。彼らはなにかのアニメの話で盛り上がっていた。「ほむほむ」「魔法少女」「神」「ワルプルギス」とか聞こえたのでたぶんそうだ。
そういうのは、なんとかちゃんねるでやれカスども。いい大人がアニメなんか見てんじゃねえよ。
「アニメは日本の文化」とかわけのわからんことを抜かす奴はみんな死ね。
たかがアニメだろ。作るほうも見るほうも人間の屑、社会の底辺だ。
面と向かってそんなことを言える筈もなく、僕はすいませんと謝りつつ、彼らをすり抜け、奥のベンチでボウッとした。
一時間ほどたった。もう帰ってもいい頃だろう。
帰って一眠りして、夕飯食ってアニメ見て寝ようと計画を立て、ずっとそこにいた坂井くんたちの間をすり抜け、自動ドア前で手を挙げた。自動ドアが開く。
夕日が眩しい。暑い。
7月は嫌いだ。そこそこ暑いし、虫も出る。いつから僕は虫をさわれなくなったのだろう。
駐輪場まで歩く、といっても5歩ほど歩き左を向いて、また4歩くらい歩くだけなのだが。
左を向く。
すると
――――――僕の自転車の荷台に少女が座っていた。
(つづく)