『…―――…』
僕は、何をやっているんだろう。
『…―――…』
僕はあいつにこう送った。『助けて』を意味するモールス信号だ。
あいつは昔、なんかあった時のためにと、モールス信号全て覚えていた。当然僕も全て覚えたが、今となっちゃどうでもよくなって、大半は覚えていないだろう。
でも、あいつはきっと全て覚えているはずだ。
理由があるわけではないがはっきりとした確信があった。
しばらくして、返信があった。
元々、僕は死ぬつもりでここに来たのになんであいつの返信なんか呑気に待っていたのだろう。
届いたメッセージを見つめて、それから開いた。
『--・-・ ・・・・ ・-・ -- 』
僕が文章を作れるほどのモールス信号信号を覚えているはずもなく、地道に解読していく。
すると、
『しぬなよ』
そう書いてあることがわかった。
あいつは一体どこまで見透すんだ―――
そう思うと乾いた笑いが込み上げてきた。
ここで笑ったところで生きたいと思い直すわけでもないし、何かが変わるわけではなかったけど、笑わずにはいられなかった。
自分が泣いていることに気づくのにどれくらい時間がかかっただろう。
笑っていると同時に涙が流れて来て、それで初めて泣いていることに気がついた。
そして僕はとあることに気がついた。
勇者なんて、ちっぽけなモノだ。
元々正義なんて悪がいないと成り立たない。
悪がいるからこそ、成り立つ勇者なんて、傷つく人がいるからこそ成り立つ勇者じゃあないか。
悪だって、それは勇者から見た悪じゃないか。
悪がいるから勇者がいるんじゃない。
勇者がいるから悪がいるんだ。
自分でも何を思っているか分からなくなってきた。
でも、僕はこの瞬間、本当の意味で勇者になる事を諦めることができた。
そして、あいつ……
違う。
ちゃんと名前で呼ばないとな、
そして、勇叶への返信を返した。
『僕は、勇者になりたかった。』




