10年後
僕は、10年経って大人になった。
勇者になる夢なんて、とっくの昔に諦めて今は普通のサラリーマンとして働いている。
そして、あいつ……名前を思い出すことはできないが、昔勇者になろうと約束したあいつは、もう連絡も取っていない。
どこで何をしているかなんて興味も無い。
でもきっとあいつのことだから、どこかで人の為になる様な仕事をしているんだろう。それこそ、医者みたいな。
でも、僕にはもう関係ない。だって―――
僕は今、とあるアパートの屋上にいる。
ここから飛び降りるつもりだ。
そうすれば全て終わる。
後悔がないと言ったら嘘になるが、後悔したところで何も変わらない。
柵を乗り越え、あと一歩で落ちる所まで来た。
『ピロン』
びっくりした。スマホの通知が鳴ったのか。
最後に送られてきたメッセージだ。見るくらいするか。
メッセージアプリを開いて、僕はさらに驚く。
あいつからのメッセージが送られてきたのだ。
宛先にあいつの名前が書いてあった訳では無いが直感的に分かった。
僕はメッセージを見る。
『久しぶりに一緒に遊ぼうぜ』
たった、それだけ。
それだけで、僕は死ぬ決心が揺らいでしまった。
あいつに負けたくない。何が負けているのか、何に負けたくないのか、分からない。分からないけど負けたくなかった。
もしかすると、あいつは今僕が自殺する事を見越してメッセージを送ったのかもしれない。
昔からこういう事に関しては勘が良かったからな。
僕は今更何を思っているんだろう。
だが、今ここで自殺しなくともまた今度すれば良い。
僕はあいつにメッセージを返した。
『…―――…』




