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3-04 我、女王様(20代)に直訴に参る。

「ロンドリアで一旗を上げる男」ウィンリードは18歳。彼が挑むのはブリカス王国のバッキンガル宮殿。彼の目的は宮殿内に侵入し、警備のおざなりさをを証明するために。


女王陛下(20代)に直訴をすることだった。


中二病が昼休み明けに考えそうな行為で王国への忠誠心を示すべく、男一匹ウィンリードは、立ち上がるのだった。

俺の名はウィンリード



ロンドリアで一旗を上げる男さ!!

ーどうやって一旗上げるんですか?

ー今から考えるさ、それが男らしさってもんだろう?

ー極東で言う「凍狂にくれば何があると思ってるやつ」の典型ですね。あなたみたいな若いくせにラージサイズの態度の男ってのはそれに反比例するように〇ニスが小さいんですよね

ー………

ーあと、14歳の中二病は痛いだけで済みますが、四捨五入して20歳の中二病は普通に逮捕されますので、どうかお気をつけて。



それから一年



ロンドリアの街は、まるで絵本から抜け出したかのように古く美しい。


石畳の道は所々にひび割れがあるが、それがかえって街の歴史を物語っている。通り沿いには小さな商店やカフェが軒を連ね、色とりどりの花が窓辺を飾っている。香ばしいパンの匂いや、煮込み料理の匂いが路地に漂い、通りを歩くだけで腹が鳴りそうだ。


が、


路地に入ると、別世界である。洗濯物が窓から吊るされ、蛇口から出てくる水をそのまま飲むと下痢が止まらなくなる。



何より、屋外には松明みたいな棒を口に咥えた喫煙者がうろついている。



ーアンデッドタバコ 屋外喫煙専用のタバコ。イーストインドンと青国の二大植民地の力により、吸えば吸うほど長くなる驚異の性質を実現。1ヶ月は吸い続けられ、屋内で吸えない分まで屋外で吸い放題だ!口うるさい奴の方を向いてブゥーっと吸えば炎攻撃だってできる!



こんなロンドリアの掃き溜めのど真ん中で、ウィンリードは今年で18歳を迎えた。



そんな裏ロンドリアから這い出し、バッキンガル宮殿に赴いた。今日はバッキンガル宮殿一般公開される日だ。




バッキンガル宮殿は門の柱と門からしてデカい。王族は見てくれ重視なので全員身長が2メートル近い八頭身かもしれない可能性を差し引いてもデカい。宮殿本体もまあ白くてデカい。


しかしロンドリアで白色と聞くとどうしても、水を汲んで石灰だらけになった桶を連想するのがいけない。まぁ、王族の巣ともあろうものが水をぶっかけられて真っ白になったというわけではあるまい。400年前の革命で水をかけられた汚れがそのまんまというのも情けない気もするし



そんな自宅を人に見せて金を取って、壊れた家の修繕費にできるのなんてブリカス王室かホリウッドスターくらいのものである。



そして、今日この日ウィンリードは激怒した。

多くの一般客が何も思わない中、必ずやこの邪智暴虐を正さねばならぬと。

このバッキンガル宮殿は物々しいわりに警備がザルであると。



「この貧相な男は誰だ!」

「コイツの頭に皇太子の顔をCG合成して会見を済ませるつまりならなんのために晩餐室を開けたのだ!バカモノが!」

すなわち中二病が四年間治らずこの前初体験に失敗して半裸のまんま帰宅した男がアポなしで晩餐室にまで入れてしまったのだ。童貞を逮捕するよりも残り少ない髪の掴み合いに忙しい偉い人たちを尻目にウィンリードは宮殿を出た。


そしては気づいたのだ

「これは、オレの愛国心を万民に示す好奇なのではないかと」

ウィンリードはこう見えて女王陛下への忠誠心と愛国心に満ち溢れている、だから考えた

「女王陛下に直訴しかない」

このウィンリード。典型的なアホ国民とか勤労意欲と無能さが最高レベルで並立しているしているタイプであった。たぶんこの愛国心だってその時そう思った程度の気持ちの先走り汁程度のものである。さすが見切り発車で初体験をしようとして彼女の親が帰宅して〇ニスラケット丸出しのまま窓から飛び出していない



「バラすな!!」



1週間後

ロンドリア宮殿に、足音が響いた。ウィンリードはロープで宮殿の鉄柵を乗り越え、そのまま排水管を伝って屋根によじ登った。十五メートルほど登ると、ブリカス王国を誇る女王陛下とその王室一家の住まいと思われる窓に出くわした。そこで窓をこじ開け、宮殿の中に侵入する


直訴状を握りしめ、男一匹ウィンリードは突き進む。その身を包むのはブリカス陸軍の軍服だ。…裏通りの古着屋で売ってたものだが、こういうよそ行きの服装は持ち合わせがなかったので渡りに船である。当面の目的地は、近衛兵の詰所だ。あの宮殿内の厳重な警備を突破し、女王様に直訴を果たすためには、ここを通らなければならない。


ウィンリードの目の前に見えてきたその詰所の前に立つ近衛兵たちは、どれも背筋をピンと伸ばし、その顔を明るい光で照らしている恐るべしはスマートフォンであった。せっかくなので詰所の奥に見えた、このいかにも高級そうなワインをいただくとするか。


「待てぇ!」

さすがにステルスもせずにワインを借りるのはまずかったようだ。

「そのワインはオレのだ!!」

「ふざけんな!俺が目をつけてたんだ!!」

「アタシが王族の写真と一緒に街で転売してきてやるよ!!」

「この転売売女が、ふざけんなぁ!!」

「誰が渡すか!!晩餐室で女を10人連れ込んだ早漏男が!」



「ったく、近衛兵の部屋からして腐りきってやがる!ま、おかげでこのワインも良心が傷まずに嗜めるってもんさ!」


まず通り抜けたのは、王宮の広間。天井は高く、細工が施された柱や壁には 歴代王の肖像画 が並び、王族の歴史が誇らしげに飾られている。その肖像画たちは、堂々としているが、昼間ほどの威厳は感じられない。まあ王様だって人間だし、絵画になってもオフは必要なのかもしれない


次に進んだ先に、重厚な扉が見える。宝物庫だ。こんな時しか入れない場所だ。訪問しない理由はない。扉を開けると、息を呑むような光景が広がった。部屋の中は、金色に輝く装飾品や王冠、宝石がひしめき合っている。全体的にうっすら埃をかぶっているが、それでもその価値は計り知れない。


ここで適当な王冠を被り、最寄りの丈の長い装束を羽織ってながらワインをラッパ飲みすれば、今日からウィンリード一世の誕生である



オレはブリカスの王だ。当然、年収は一千万ポンドを余裕で超えている、言うまでもなく明るいイケメンである。誰の首だってはねられるし、上昇婚も果たせるし、外面だって最高だ!その証拠に孤児やホームレスとチェキだって撮ってやれるのさ!だが俺はそうなっていない。なぜか?俺は低収入で明るくないからだ、誰も彼もが俺を嫌って当然だ、憎い!俺はブリカスの国が、いや、俺自身が憎い!!こんな自己嫌悪のクソ野郎のクセに王宮に忍び込んでる、俺は自分が憎い…!




ウィンリードは泣き上戸であった


気を取り直してウィンリードは女王の寝室への道に戻った。王冠とマントは元の場所に返した。ゲームと違ってああいうレアなお宝を売り捌くのは大変だからだ。

そして彼はその目標をあっさりと達成してしまう。すでに女王は眠りについていたので、彼は女王のベッドの横に座った。あらゆることが可能だった。誘拐して人質にすることもできる。ノクターンノベルに相応しい行為を三行以内に始めてやることだってできる。世の悪党や善良な市民、あとこのサイトに集う小説家どもにとって最高の時間が始まるのだ!さあ、いよいよそのお顔を拝見である。


エリザリス二世はとてもお若い。想定より50歳ほど若い。年齢的に言えば20歳になるかならないかくらいだろうか?金色の髪が枕に広がり、柔らかな光がその髪を照らす。その繊細な髪の束が、少年少女の面影を残した、未熟さの象徴 のように見えた。

それより、もっと根本的な部分、魂のレベルというか、人間として一番大事なコアみたいな所が、18歳でロンドリアで根無草をしているウィンリードを凌駕しているようにも見える。言っておくが、エリザリス二世はまだ目覚めてすらいない。


というか、寝顔を勝手に覗かれているエリザリス女王にとっては、たまったものではない。人の気配を察してか、エリザリスはゆっくりと目を開けた。部屋の静けさに包まれ、普段ならば即座にその冷徹な表情を取り戻すはずの彼女が、今はまだ少し眠そうな顔をしている。金色の髪が枕に広がり、しばらくそのまま横たわっていたが、目をこすって視界がはっきりとした瞬間、彼女の瞳は鋭く光った。


「………」


部屋の中に、普段はあり得ないものを感じ取った瞬間、エリザリスは素早く体を起こした。頭を回して見ると、目の前に見知らぬ男が立っていることに気づく。その男は、どう考えても不審者だ。だが、彼女は表情一つ変えず、冷静にその男を見つめる。


「……あなたは、誰?」


声は低く、どこか命令的だった。しかし、さすがは女王である。史上最大の航空戦が真上で繰り広げられるなどの国難を前にしても微動だにしないのが公務だけあって、年の近い不審な成人男性が寝室にいた程度ではベッドから転げ落ちたりといったぶざまな姿は見せない。


ウィンリードは少しびっくりしながら、そして心の中で自己嫌悪を抱えつつも、必死に言葉を紡ぐ。


「え、えっと、すみません!あの、俺はウィンリード。直訴を、わ、わわ我こそはブリカス王国への忠誠心を有する者として、女王陛下に直訴を申し上げった!」




表面上は落ち着き払い、エリザリスは、目の前の男の様子を見て、まるで幼い子供を見守るかのように一瞬静かに眺めた。その後、ふっと息を吐いて、彼女はベッドからゆっくりと立ち上がる。


「直訴…?あなたが直訴をするために、私の寝室に侵入したということ?」



一応の目的は達したのだから、あとは警察がこようが勝ち逃げ決定である。ところが、一向に誰も来る気配がない。(いやだめだ。国のことを思うならせめて直訴状を直接渡す前に部屋に乱暴に入ってくるのは待ってほしい)


女王は困惑の表情を浮かべていたが、ウィンリードもまた、困っていたのである。

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