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アルファの記憶 Memories of Alpha  作者: 空想シリーズ
第4部 夜明け
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第12話:レギュレーターの祈り

ゾルグの仁義を知り、シンが自らの戦いの意味を改めて刻みつけてから、さらに数日が過ぎた。アンダーランドの和解と復興は、確かな軌道に乗り始めていた。


その日の夕刻、ティアはシンをかつての長老議事堂へと呼んだ。そこは共同体の新たな意思決定の場となった円卓の間だ。そこにはリラ、ケン、ザイン、ガンナー、そして旧ゾルグ派を代表する者たちも集まっていた。


「皆さん」


ティアは全員を見回し、静かに語り始めた。


「地球の再生は始まりました。惑星のエネルギーグリッドは繋がり、大気は浄化され、大地は生命力を取り戻しつつあります」


彼女の言葉に誰もが希望の光を感じた。だがティアは続けた。


「ですが、これを完全に終わらせるためには、最後のプロセスが必要です」


「最後のプロセス?」


シンが問い返す。


「はい」ティアは頷いた。


「この再生の律動を永遠に安定させなければなりません。この星の生命が二度と道を踏み外さぬよう、導くための『意思』が必要です」


「それはつまり……」


「私がこの星のコアネットワークと一つになります」


ティアのそのあまりにも静かな告白。その場にいた誰もが息を呑んだ。


「私の個としての存在を犠牲にして、この星の生命そのものとなるのです。それが私『レギュレーター』に与えられた最後の、そして最大の役目」


「そんな……!」


シンは立ち上がった。


「そんなことできるわけがない! 君は俺たちと共に生きていくんじゃなかったのか!? この新しい世界で!」


父アキトを失い、祖母エタも失った。そして、ゾルグという好敵手も。これ以上、かけがえのない存在が目の前から消えていくことに、彼の魂が悲鳴を上げていた。


「シン」


ティアは優しく彼を見つめた。


「これは死ではありません。私は消えるのではないのです。この星の全てになるのです」


彼女はそっと窓の外を指差した。その先にはKMSのホログラムが映し出す、青く輝く地球の姿があった。


「私はこの星の風になります。水になります。光になります。そして、これから生まれてくる全ての生命となります」


「あなたたちが寂しい時は、風があなたの髪を撫でるでしょう。嬉しい時は、光があなたを祝福するでしょう。私は、いつだってあなたたちの傍にいます」


そのあまりにも大きく、そしてあまりにも優しい愛。その前では、どんな言葉も無力だった。シンはただ唇を噛みしめることしかできない。彼女の決意は、彼女自身の存在意義そのものだったのだ 。彼は、受け入れるしかなかった。このあまりにも尊い自己犠牲は、彼女が選んだ、未来への祈りなのだから。

2話目は本日12時を予定しています。

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