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アルファの記憶 Memories of Alpha  作者: 空想シリーズ
第4部 夜明け
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第3話 レガシー対移動要塞

『警告。敵性部隊、包囲網を完成。攻撃が開始されます』


KMSの無機質な音声が絶望的な現実を告げた。

『レガシー』の周囲を武装したゾルグ派の兵士たちが完全に包囲していた。


「くそっ、袋のネズミか!」


ガンナーが悪態をつく。


「シン、どうする!?」


ザイン隊長が船長席のシンに問いかけた。


「リラ、エンジンの状況は?」


「メインのエネルギーラインが断線しているわ。ここからじゃどうしようもない。船外に出て直接回路をバイパスさせるしかない!」


それは自殺行為に等しかった。

船の外には銃口を向ける数十人の敵兵がいる。


「……俺が行く」


ガンナーが工具を手に立ち上がった。


「ザイン隊長、援護を頼む」


「いや、俺が行きます」


ケンがその前に立ちはだかった。


「この船の構造は俺とリラさんが一番詳しい。それに俺の方が身が軽い」


彼の瞳にはもう怯えの色はなかった。


「ケン……」


「隊長。俺にやらせてください」


シンはケンの覚悟に満ちた瞳を見て頷いた。


「ザイン隊長、ガンナー。ケンの援護を。リラ、ティア。君たちはKMSで船内のパワーバランスを調整してくれ。エンジンが再起動した瞬間、全エネルギーをシールドと主砲に回すんだ」


作戦は始まった。

まずザインが『レガシー』に残された数少ない機銃の一つを手動で操作し、牽制射撃を開始した。

その隙にケンが大破したハッチから素早く船外へと飛び出す。

彼は銃弾の雨の中を猫のようにしなやかに駆け抜け、大破した左翼エンジンの下へと潜り込んだ。


「ケン! 急げ! 敵の数が増えている!」


ガンナーが別の銃座から応戦しながら叫んだ。

ケンは焦りを必死に抑えながら断線したエネルギーケーブルを掴んだ。熱い。防護服越しでもその高熱が伝わってくる。

彼は震える手でバイパス用の補助ケーブルを接続した。


「……シン! やったぞ!」


ケンの歓喜の声が通信機から聞こえた。


「リラ!」


「了解! 動力炉、強制再起動!」


次の瞬間。

『レガシー』の鋼の心臓が再びその鼓動を取り戻した。

船全体が青白い光に包まれる。その衝撃波が周囲にいたゾルグ派の兵士たちを吹き飛ばした。


「船体が動く! ザイン隊長!」


シンが叫ぶ。


「おう!」


ザインは操縦桿を力強く握りしめた。

『レガシー』は巨人の咆哮のようなエンジン音と共にその巨体を再び起こした。


だが彼らの目の前に新たな絶望が姿を現した。

廃棄区画の奥の暗闇から地響きと共に巨大な何かが現れたのだ。

それは旧文明の大型採掘機械や建設車両をいくつも連結し、その上に無数の砲台を取り付けた、まさに「移動要塞」だった。

その醜悪で巨大な鉄の塊こそがゾルグの王国の象徴であり、最大の戦力でもあった。


『……小賢しい真似を』


移動要塞からゾルグの不快な声が響き渡る。


『だがそれもここまでだ。鉄屑にしてやれ』


要塞の全ての砲門が火を噴いた。

凄まじい弾幕が『レガシー』へと襲いかかる。


「させるか!」


シンは自ら主砲のコントロール席に座った。


「リラ、ティア! 奴の弱点を探せ!」


「解析中!……あの旧式のエネルギー炉よ! 装甲が他に比べて薄い!」


「……シン。あそこ……。とても大きな力が集まってる……危ない」


ティアが要塞の一点を指差す。


シンは二人の言葉を信じ、主砲の照準をその一点に合わせた。


「ザイン隊長! 右へ全速!」


『レガシー』が敵の弾幕をかわしながら大きく回り込む。

そして一瞬だけ要塞のエネルギー炉が無防備にその姿を現した。


「……貰った!」


シンはトリガーを引いた。

『レガシー』の主砲から放たれた一条の光が、寸分の狂いもなく要塞の心臓部を貫いた。

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