第16話:メインコアへの突入
シンとリラは、新型防護服と高エネルギー生成装置のコアユニットを抱え、内乱寸前の議事堂へと突入した。彼らの行く手は、食料と水、そして未来への不安に駆られた住民たちで塞がれていた。怒号と罵声が飛び交い、一部では殴り合いも始まっている 。
「どけ!KMSを破壊する気か!」
カザン派の住民たちが、シンたちの行く手を阻んだ。彼らはシンたちをアウロラの教えに背く「異端者」と見なしていた。彼らの顔にはアウロラの沈黙によって打ち砕かれた信仰の絶望が刻まれている 。
その奥ではゾルグ派がKMSの制御盤に群がり、破壊しようと試みていた。アウロラの支配から解放されることこそが「自由」だと信じ現状の混乱を逆手に取ろうとしていた。ゾルグ自身は不敵な笑みを浮かべ、この状況を楽しんでいるかのようだった 。
「これはアウロラ様への冒涜だ!止まれ!」
カザンが叫びゾルグ派に向かって飛びかかった。議事堂は瞬く間に両派の衝突の場と化した 。
シンは混乱をかき分けメインコアへと向かおうとしたが、住民たちの波に押し戻される。
「皆、聞いてくれ!この装置は、アンダーランドを救うためのものだ!このままでは、本当に滅びてしまう!」
シンは必死に声を上げたが、彼の言葉は騒乱の中でかき消された 。
その時、エタの声が響き渡った。彼女は、ザイン隊長とケン、そして数名の秩序維持隊員に護られながら議事堂の入り口に立っていた。
「止まれ!愚かな争いをやめなさい!」
エタの声には、怒りよりも深い悲しみがこもっていた。
「アウロラはあなたたちがこんな争いをすることを望んではいない!未来は、あなたたちの手の中にあるのだ!」
ザイン隊長は混乱する住民たちの前に立ちはだかった。
「道を開けろ!シンたちが、アンダーランドを救う唯一の希望だ!」
秩序維持隊員たちは荒れた声で命令を下し、住民たちを押し分けた 。
エタの言葉とザインの介入によって、わずかながらも通路が開いた。シンとリラは、その隙を逃さず、メインコアへと走り出した。彼らの背後では、再び衝突の音が激しくなる 。
KMSのメインコアは議事堂の中央にそびえ立つ、巨大なクリスタルのような構造物だった。かつてはアンダーランドの全てを司る光を放っていたが、今はその光も失われ、鈍く輝いているだけだ。ゾルグ派の数人が、破壊用の工具を手に、メインコアに群がっていた 。
「くそっ、間に合わない!」
シンは焦った。メインコアが破壊されれば、アウロラの「遺言」も、彼らが開発した全ての技術も水の泡となる 。
リラがKMSのポータブル端末を操作しゾルグ派の足元の床に簡易的な電磁フィールドを展開した。彼らの動きが一時的に鈍る。その隙に、シンはメインコアへと飛び込んだ 。
「邪魔するな!」ゾルグが振り返り、シンに飛びかかってきた。彼の目には、支配欲と、KMSへの憎悪が燃え上がっていた 。
その瞬間、シンは高エネルギー生成装置のコアユニットを構えゾルグの攻撃を受け止めた。コアユニットから放たれる微かなエネルギーがゾルグの身体を押し返す。シンは渾身の力でゾルグを押し返し、メインコアへと到達した 。
「リラ!接続を!」シンは叫んだ。
リラはすぐにKMSのケーブルをシンが持つ高エネルギー生成装置のコアユニットに接続した。シンは残るエネルギーを全て集中させ、KMSのメインコアへとパワーを供給し始めた 。
メインコアの表面にかすかな光が宿り始める。しかし、その光は不安定で起動にはまだ時間がかかる。その間にもゾルグ派の怒号と、カザン派の混乱が、シンの耳に届いていた 。彼は知っていた。これは技術的な問題だけではない。共同体の未来をかけている。アンダーランドの人々が再び一つになることを信じこの賭けに出たのだ。




