第13話:迫りくる限界
本日2話目です。
隠された研究室での技術開発はシンたちの努力によって着実に進んでいた。新型防護服のプロトタイプは実用段階に近づき、高効率エネルギー物質の生成装置も安定稼働の目処が立っていた。しかし、彼らが未来の希望を紡ぐ間にもアンダーランドの現実は破滅の淵へと刻一刻と近づいていた。
電力不足は深刻化し、ついに地下都市の広範囲で完全な停電が頻発するようになった。照明が消え空気循環システムが停止し通路は暗く淀んだ空気に満たされる。人々はロウソクや簡易的なランプで明かりを灯す。その光景はまるで以前の暗黒時代に逆戻りしたかのようだった。
食料と水の状況はもはや壊滅的だった。特に水耕栽培施設はほとんどの機能を停止し、食料管理者のカイは貯蔵庫に残った食料を前に呆然とただ立ち尽くすしかなかった。配給が制限された人々は飢えに苦しみはじめていた。
医務室では医療班のアオイが過労とストレスでついに倒れた。アオイだけでなく病に苦しむ住民たちも増加の一途をたどっていった。
秩序維持隊の機能も麻痺していた。食料と水を巡る争いは窃盗から公然とした暴力と強奪へとエスカレートした。ザインとケン達秩序維持隊のメンバーは、もはや共同体全体を統制する力を失いただ目の前の惨状に無力感を覚えるばかりだった。長老カザンは、自身の信仰が打ち砕かれたことで現実から目を背け、ただひたすら祈りを捧げる抜け殻のようになっていた。
一方で、ゾルグとその支持者たちはこの混乱をさらに煽り立てていた。彼らは残された食料や資材を強奪し、自身の居住区に閉じこもるなど利己的な行動をエスカレートさせていた。共同体の分断はもはや修復不可能なレベルに達していた。
シンたちは研究室にこもって開発を進めるなかで、共同体の状況がここまで急速に悪化しているとは正確には把握できていなかった。彼らのKMSは研究開発に全リソースを割いており共同体全体の詳細なモニタリングまで手が回っていなかったのだ。
その夜、研究室に届けられた食料と水が通常よりはるかに少ないことにシンとリラは気づいた。彼らは焦燥感に駆られKMSのメインコンソールで共同体全体のリアルタイムデータを要求した。
そこに表示されたのは想像を絶する絶望的な数値だった。電力の供給だけでなく、食料や水の備蓄が激減していた。残された時間は限られていたことは把握していたが、ここまでとは想定していなかった。
「これでは……もう、時間がないわ!」リラが震える声で叫んだ。
シンはKMSのデータから目を離し、顔を上げた。彼の目に映るのは差し迫った破滅の光景だった。彼らはこの研究室で未来を開発することに没頭するあまり、足元で崩れゆく現実から目を背けてしまっていたのかもしれない。
アウロラの沈黙はもはや理論的な危機ではない。目前に迫った共同体そのものの消滅の危機として彼らに重くのしかかった。
今、彼らに残された選択肢は一つしかなかった。開発中の技術を携えこの崩壊寸前の共同体を救い未来へと導くために、危険な賭けに出たのだった。




