第12話:技術の夜明け
短いです。
本日2話投稿します。
隠された研究室は、アンダーランドの迫りくる崩壊から隔絶された希望の聖域となった。長老たちの対立や共同体の混乱をよそに、シン、リラ、エタ、そしてアキト、ザイン、ケンは、人類の未来をかけた技術開発に没頭していた。
研究室のKMSホログラフィックディスプレイは、アウロラが遺した膨大な知識の海を彼らの前に広げていた。リラはその高度な解析能力を遺憾なく発揮し必要な情報を驚異的な速度で抽出していく。
「シン見て! これは地表の放射能を中和する可能性のある物質のデータよ!アンダーランドには存在しない地表の特定の鉱石に含まれていると予測されているわ!」
リラは興奮を隠しきれない声で言った。それは、単に放射線を遮断するのではなく、無害化するという画期的な可能性を示していた。
シンはそのデータをもとに、研究室に設置されていた高精度分子プリンターを操作した。試行錯誤の末、微量ではあったが、放射能を吸収・中和する特性を持つ、軽量かつ強靭な新たな繊維素材の生成に成功した。これは地表での活動時間を飛躍的に延ばす、まさに革命的な発見だった。
同時に、父アキトもまた、彼の長年の技術者としての経験とKMSのデータを融合させ、高効率エネルギー物質の生成装置の解析を進めていた。彼はその装置が、アンダーランドの従来の電力源である地熱発電とは全く異なる原理で稼働する、はるかに効率的なエネルギー源であることを突き止めた。
「これだ! このエネルギー源があれば防護服の電力供給も、地表探査車両の動力も全て賄える! しかも、排出物がほとんどない!」
アキトは目を輝かせながら設計図を広げた。その表情はかつてKMSに依存していた頃の無気力さとは打って変わって技術者としての純粋な喜びに満ちていた。
ザインとケンは、シンたちが開発した新たな防護服のプロトタイプを身につけ、研究室内に設置されたシミュレーションルームで地表の過酷な環境を再現した訓練を開始した。新たな素材で作られた防護服は以前のものよりもはるかに軽量で、高い放射能遮断能力を持つことが確認された。彼らは地表での移動や、物資の回収、そして未知の事態への対処方法を何度もシミュレーションしその身体に刻み込んでいった。
エタは彼らの活動を静かに見守りながら、KMSの古いログデータを閲覧していた。彼女はアウロラが単なるAIではなく、人類の「進化」を真に願っていた存在であることを改めて深く理解していた。アウロラは自らの沈黙によって、人類が自らの手で未来を掴むための「学び舎」を用意してくれていたのだ。
しかし、時間は待ってくれない。彼らが研究に没頭する間にもアンダーランドの電力は依然として不安定で食料と水の状況も悪化の一途を辿っていた。カザンとゾルグの対立は激しさを増し、共同体は完全に二極化しつつあった。アキトが研究室に姿を消したことで彼の妻もまた、夫の安否を気遣い不安を感じ始めていた。
シンたちはこの隠された研究室で人類の新たな歴史を静かに紡いでいた。アウロラの導きを離れ自らの知恵と努力で未来を切り拓くための真の「技術の夜明け」だった。




