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007



オーナーに紅茶を淹れてもらい、またカウンターに座る。話しをするために…

「今回はそんなに被害が出たのか?」

昨夜の百鬼夜行と、今日の出来事をオーナーに話したんだけど、オーナー自身も驚いている様子。

「普段は違うんですか?」

「ああ。百鬼夜行ってのは全国で年に何度かあるんだが、基本は被害者も少数な上、仮に憑かれても神聖な土地やなんかの近くを通るだけで祓われる」

「神社とかですね」

「そうだ。それ以外にも自宅なら招かれなければ入れないから落ちるし、いつまでも憑いたまま影響が出るなんてのは稀だ。よほど強力なら話は別だが…」

ああ、それも何かで読んだな。家の玄関そのものが一種の結界みたいなもので、招かれざるものは入れないと。

強力っていうのは想いの事だね、わかりやすいのは強い恨みとか嫉妬、プラス面なら愛情とか守りたい思い。

あと…最悪なのは家の結界なんてものともせずに通り抜けてくるやつ。所謂格が違う相手。


「これは何かあったな…。 瑠璃ちゃん、今日は”あっち“の依頼が増えるかもしれん。そのつもりでいてくれ」

「わかりました。と言っても私にできることなんて席へのご案内くらいですけど」

「何言ってんだ。 子狐丸がいるんだ、瑠璃ちゃんも立派な戦力だよ」

「ええぇぇ……。私、怪談とかホラーって無理なんですよ」

「あのな、うちでバイトしてて何を言ってるんだ。カレー食べながらクミンは苦手、みたいなことを言うのはやめろ…。意味がわからんから」

「オーナー、上手いこと言いますね。カレーだけに!」

「今日の賄いはカレーにしてやるから…」

「頑張ります!」

オーナーのカレーは美味しいから楽しみ。 



学校での怖かった出来事もオーナーに話を聞いてもらったら落ち着いたし、カフェのバイト頑張ろう。

せっかく先生の許可も得て早退してるんだし稼がないと…。


カフェの制服に着替えて店に戻ると早速お客さんが来ていた。

しかも昨日のお姉さん。今日って平日だけど、私服だから会社はおやすみなのかな?それともサボタージュ?

私が言えたセリフじゃないけど、それはそれ。

カウンターを拭きながら、聞こえてくる会話に耳を澄ませる。


「このお守り…ありがとうございました」

「夢はどうだった?」

「…それが…。いつもの様に制服の女の子が出てきたんですけど、その子が私のそばに来る前に、真っ白い女の人が現れて…」

「それで?」

「制服の女の子の手を取って、違う方向へ連れて行ったんです…」

「なら良かったじゃないか」

「いえ! そうでもなくて…。 二人の行き先になんかこう、恐ろしい化け物の団体みたいなのが行進してたんです。その行列にのまれるように二人は消えてしまいました」

「何!?」

つまり、亡者道へ送り届けるはずが百鬼夜行の通り道と重なり、巻き込まれたと?そんな事あり得るんだ。


「二人はどうなった!?」

「わかりません。私はそこから記憶がなくて…。でも朝起きた時には体が軽くなっていました! ですので報酬をお支払いするためにこちらへお邪魔したんです」

「わざわざありがとな…。話した通り、振り込みでもよかったんだが」

「また紅茶を頂きたくて…ちょうど今日は休みでしたから」

「嬉しいね。じゃあすぐに淹れるからゆっくりしていってくれ」

オーナーはお姉さんと話していた席を立つとカウンターへ来て紅茶を淹れる。


「お仕事お疲れ様でした。紅茶は運びますね」

「ああ。 …今回の異変の原因が掴めるかもしれんが、肝心な俺の嫁が消えた」

「二次元のですか?それとも妄想の?」

「違うわ! いや、世間的には似たようなものかもしれんが…俺の嫁は雪女なんだよ…」

「寒いジョークですか?雪女だけに」

「すまん、今は冗談に付き合ってやれる気分じゃないんだ…」

これ、本気のやつ…?雪女が嫁って…。

確か雪女って正体を知られたら相手の男を氷漬けにして殺してしまうって本で読んだけど、違った?


「オーナー、ごめんなさい。大切な方なんですね?」

「ああ、嫁であり相棒なんだ…昔からずっとな」

「私に出来ることはありますか?」

落ち込んでて冗談に付き合ってくれないオーナーなんて見てられないもの。


「百鬼夜行の終わりってのは幾つかパターンがあってな…、例えば大昔には祓われて終わる。なんて時代もあった。今では不可能だろうがな。 ま、普通なら目的地の境界へ行けばそこで終わる。」

「祓ったってあの数をですか?すご…」

「まさかそこまでしっかり見てたのか!?」

「ええ…毛玉の大行進にしか見えませんでしたけど」

「そう…だったな。 何か少しでもいい、気がついたことは無かったか?」

「うーん…子狐丸も見てたから聞いたらわかるかもしれませんけど…」

「それは不可能だな。見返りもなしに仲間の情報を売るような事はしない、基本はな」

子狐丸ってあいつらの仲間なの?毛玉の頃なら納得したかもしれないけど、今は…。


うーん、気になる事…何かあったっけ…


「…あっ…最後尾にものすごく大きな毛玉がいて、それだけは飛び抜けて怖かったです。本能的に絶対に危ない! って…もふもふの毛玉なのにわかりましたもん」

「最後尾…大きい…まさか空亡か!!」

オーナーは私の話から正体がわかったのか、頭を抱えてしまった。


というか、子狐丸なら話してくれそうな気もするけど…。

カウンターにちょこんと座る子狐丸に詳細を聞こうかどうしようか悩んだけど、もし話してくれなかったら凹みそうだからやめた。

それに今まで私は散々冷たくしてきたんだもん、こんな時だけ頼るのは失礼だよね…。

でもオーナーのためだし…なんとか頼めないかな。


「瑠璃ちゃん。もう一度、昨夜から今日ここに来るまでの出来事を順に聞かせてくれるか?」

「は、はい。構いませんけど…」

カフェをでてから家までと、夜中に見たもの、朝起きてからここへ来るまでの出来事をもう一度思い出しながらオーナーに話した。


「つまり、昨夜も今日も相当数の毛玉を見た、また今朝は影響を受けていると思われる人間もいたんだな?」

「ええ、昨日は固まってたりとかはしてても、毛玉だけでしたね。普段なら見かけても一つ二つと少数ですし、人に憑いてたりなんてのもまず見ません。でも今日は人に憑いてるのしか見てないですね、そういえば…」

ギャルやサラリーマン、学校の生徒もそう、二代目と五代目にも憑いてた…。


「ところで“そらなき”ってなんですか?オーナー」

「ん? ああ…こいつは比較的最近になって現れた妖怪でな。太陽の化身だとか妖怪の王だとか言われているが、情報がなさすぎて詳細はわからん。唯一わかっているのは、こいつが妖怪そのものを食うって事だ」

「仲間をですか?」

「ああ。 だから妖怪どもは逃げ出したんだろう。それで、人を隠れ蓑にしてやり過ごした」

「だからあちこちに…」

「祓われたとしても次へ、次へ、と乗り換えてたんだろうな」

「帰らずにですか?」

「帰ったら食われるかもしれない状況で帰るか?」

じゃああれは行き場のない妖怪たちが人の世界でやり過ごそうとしてたって事?


「まずいぞ…、食われていたらどうしたら…」

オーナーはさっき以上に落ち込んでしまい、それ以上話を聞ける雰囲気ではなくなってしまった。










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