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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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引っ越し祝い



夕方にはお引越しも片付いたみたいで、子狐丸も一度帰ってきた。

「うわ…すごい! 瑠璃これ全部作ったの?」

「奈子さんと一緒にね。あちらへ運ぶときは手伝ってもらえる?」

「わかった!」

「みんなはどうしてる?」

「新居の方で奈子がお茶を出してたよ」

休憩してるのね。


じゃあ私も少し休憩しよ…。一日中立ちっぱなしで台所にいたし。

板の間に座るスペースをあけて、子狐丸と座る。

「私は結局お引越しの方は何も手伝えなかったなぁ」

「いやいや。瑠璃が食事とか用意してくれたから奈子も楽できたと思うし、ある意味一番活躍してたと思うよ」

「そうならいいけどね。子狐丸はやっぱり力仕事してた?」

「源さんにこき使われたよ…。二階へ運ぶのホント大変だった。大きなベッドに対して階段は狭くて…あれ絶対考えなしに作ってる。せめて窓から入るサイズなら楽だったのに」

「子狐丸なら飛べるものね」

「そう。結局、分解して二階で組み直したよ」

「お疲れ様だったね」

子狐丸と他愛のない話をしながら休憩して、薄暗くなった頃に奈子さんが呼びに来てくれた。


「ほな運ぼうか! みんな驚くで!」

子狐丸と奈子さんは器用にいくつもお皿を運ぶけど、私は二皿が限界。

新居の広いリビングには大きな一枚物の木のテーブルがあり、そこへ料理を並べていく。

「子狐丸、もう何回か運ぶから手伝って!」

「任された」

奈子さんは接客もあるし、私達で運ばなきゃね。



何度か往復して、うちの板の間がようやくスッキリ。

「子狐丸、それで最後だから、先にいってて。私は引っ越し祝いを持っていくから」

「わかったよ。暗くなってきてるから気をつけてよ。何かあったら大声で呼んで」

「うん」

心配性だなぁ…。徒歩数分なのに。

子狐丸から少し遅れて、タオルの箱と冷蔵庫で冷やしてあるアップルパイを抱えて家を出た。


薄暗いけど今日だけで何度も往復した道だからもう慣れたもので、無事に新居が見えてきた。

心配性の子狐丸が迎えに来てくれて。そんな些細なことが嬉しいと思える私はやっぱりちょろいんだろうか…。

「瑠璃、みんな待ってる」

まさかの私待ち!?申し訳ない…。


持ってきた荷物は奈子さんちのキッチンに置かせてもらい、みんなが待ってるリビングへ。

「みんな今日はありがとうな! 一日で終われたんはみんなのおかげや。 瑠璃ちゃんに手伝ってもらってようさんつくったから、食べたって!」

「一日ご苦労だった。助かったぞ。酒も用意したから好きに飲んでくれ」

私、初めて源さんのワンフレーズ以上のセリフを聞いたかも! いつもは”おう“とか“うむ“しか聞かないんだもの。


賑やかなパーティみたいになって、源さんはお酒も振る舞ってる。

あれ、この間モールから持ち出したやつだよね、瓶に見慣れた文字が書かれてるし。

「瑠璃ちゃん、今日は一日ありがとうな。ほとんど任せっぱなしになってもうて…」

「気にしないでください。私も色々とご迷惑おかけしましたし…」

「それこそ気にせんでええよ」


和やかな打ち上げは夜遅くまで続き、私と子狐丸は途中でお暇させてもらう事にした。

ほっといたら夜通しやってそうなんだもの。

「奈子さん…ちょっといいですか?」

「うん?どないしたん?」

「いい時間ですし、私達はこれで失礼しますね」

「そうなん!? 寂しなるけどしゃあないか…。わかったで。またいつでも顔出してな」

「はい。 それと、お引越し祝いに用意したものをキッチンに置いておいたのでもらってください」

「そんなんええのに…。むしろこっちがお礼せなあかんのよ?」

「もしお子様が生まれたらお役に立つと思いますから…」

「気ぃはやいわー。 でもありがとうな! ほな遠慮なくもらっとくな」

「はい!」

奈子さんに見送られて、家路につく。



「子狐丸も帰っちゃってよかったの?」

「瑠璃が帰るなら帰るよ」

「そっか」

流石に疲れたし、帰宅したあとは軽くシャワーだけ浴びて布団に潜り込んだ。

遅れてお風呂に行っていた子狐丸も戻ってきて、少しだけ話をしておやすみなさい。



翌朝に奈子さんが食器とか返しに来てくれて…。まだ新居では宴会が続いていると聞いてびっくり。

「めでたいときは祝わなあかんからな! ほな暇やったらまた顔出してな!」

それだけいうと急いで帰っていった。 おつまみとか作ってるんだろうか…。お疲れ様です。


「ねえ子狐丸、妖怪って体力どうなってんの?」

「めでたいときは一週間くらいならぶっ通しで宴会とかしてるよ」

「化け物かっ!」

「妖怪だからね」

「そうだった…」

というか、子狐丸の凄まじい体力を身を持って知っていたわ…。


「瑠璃。源さんがね、お礼に家の改築してくれるって言ってたけど、なにか希望ある?」

「え、申し訳ないしいいよ!」

「決めないと勝手に増築されちゃうよ?」

「流石にそれはどうなの!? うーん…じゃあこの板の間をリビングにしちゃって、ちゃんとした寝室がほしいかな…。だって…ね?」

「わかった。伝えとくよ」

子狐丸と相談して、板の間にある押入れを扉にしてもらい、その向こうへ増築。そちらに新たな押し入れを作ってもらうことにした。


もう、私こっちに馴染みすぎてるなぁ…。こちらの人…妖怪だけどみんな温かいし、いっそこっちに住

み続けたいくらい。


子狐丸は定期的に現世の確認をしてくれているそうんだけど、時間の流れが違いすぎて未だあちらではニ日もたってないと…。

もうしばらくこの生活を続けててもいいよね…。








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