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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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「今日、子狐丸は用事なかったの?」

「だって今日は日曜だし。みんなお休みだよ」

そういう事は早く教えて?いらない勘ぐりをして、迎えに来ない奈子さんに気を使われたのかと疑いをかけてしまったよ。ごめんなさい…。

じゃあ今は日曜の気だるい午後なわけか。私は文字通り疲れが取れなくてだるいけども。


「お休みは日曜だけ?」 

「基本はね。 年末年始は特別だし、百鬼夜行のある時はこっちもお祭りだよ」

「へぇー。こちらにもいろいろとあるんだね」

「現世ほどイベントはないけどね」 

「そなんだ」 

「うん」

「………」

「………」

なにこれ気まずい!!

今までならこんな沈黙とか気にならなかったのに何で………。


「瑠璃…」

そんな艶っぽい声で呼ばないでくれる?ドキッとするから。

「どうしたの? ってこら! 昼間からいい加減にしなさい!」

「無理。我慢できない…」

そんな切なそうな声出さないでよ…。ダメって言えなくなるじゃない…。

「…一回だけね?」

「わかった」

素直にそう返事した子狐丸を信じた私がバカだった。ううん。昼間から流されてオッケーした時点でバカだった。


………

……


ようやく落ち着いた子狐丸に離してもらえたのは日付も変わった真夜中。

もう身体を起こす気力も体力もない。

本人は幸せそうな顔をして寝てるのがまた…。流石にちょっとイラっとする。いくら私でも怒るよ?

もう絶対甘やかさない。動かない身体と働かない頭でそれだけは決意して意識を手放した。


………

……



「瑠璃ちゃん。おはよー!」

奈子さん…?


「いてへんのー? おっかしいなぁ…」

今何時!?慌てて起きあがり、時計を見ると八時過ぎ。寝過ごした!!

子狐丸を叩き起こし、私はお風呂に駆け込む。

もうもうもう! 一度ならず二度までも! 流された結果がこのザマだ。

手早く髪と身体を洗い、部屋に戻ると子狐丸が奈子さんを家に入れてるし!!

片付けてない布団とかそのままで大惨事なんですが!?

「なんや、やっと契ったんか! 良かったなぁ! で?どないやってん? 瑠璃ちゃんはよかったん?」

「うん。最高だった。くせになる…」

「おおう…そらごちそうさまやな!」

ちょっと、何話してるの!! はぁ…なんかもう…今更だね。私も奈子さんには聞きたい事があるし。


「瑠璃ちゃんもおはよー」

「おはようございます」

「身体は平気か? 痛いとかあったら言うてな。いい薬あるよって」

「痛みは大丈夫です、ただ少し不安なことがありまして…」

「うん?相性悪かったんか!?」

「瑠璃?僕ダメだった…?」

無茶するのはダメだった! って言いたいけど落ち込むのが目に見えてるから飲み込んだ。

「そういうのとは違うから。 ごめん、ちょっと子狐丸は外に行っててくれる?」

「えー」

「大切な話だから」

子狐丸は不貞腐れてるけど素直に外に行ってくれた。



「子狐丸に聞かせとうないような話なん?」

「正直わからないんですが…。 …あの子容赦なくて…その…全部私の中に…」

「ああ! 妖怪やしなぁ。そら自重なんてせえへんよ。 うちかてそやで?」

「大丈夫でしょうか…。まだ私は年齢的にもちょっと…」

「あははっ! その心配はないで。 人と妖怪では子供はできひんからな」

「え…でも…」

「九城の家のことやな? それはアレや九城家当主だけが使える秘術言うとったか…それを使うと子供ができるんよ」

「なるほど…その秘術を使わない限りは…」

「やりほーだいやな!」

言い方にもう少し気を使ってもらえないでしょうか。

でも最大の不安がなくなっただけありがたい。あの子本当に容赦ないし。普通なら無責任な男としてダメ出しするところだよ、まったく。

…抵抗できない私も悪いんだけどね…。一度あの感覚を知っちゃった上で理性も飛んでいる時にダメなんて言えない…。意志の弱い私を誰か叱って…。


「もう一つ。我慢させるのは無理なんでしょうか」

「そんなに嫌なん?」

「嫌とかではなくて、限度の問題です。昨日も半日離してもらえなくて…」

「うーん…。妖怪毎に差はあるけどなー。 よほど相性がいいんやろうな。受け止めたれへんの?」

「気持ちとしては受け止めたくはあるんですが、身体が持ちません。今もかなりだるくって…」

「九城言うても人やもんな…。普通は元気になるんやで?妖力そのものを注がれとるようなもんやし」

「妖力ですか…?」

「せや。子狐丸ほどの力なら瑠璃ちゃんもパワーアップするはずやねんけどなぁ…」

妖力でパワーアップって。少年漫画じゃあるまいし…。


「あっ、もしかして瑠璃ちゃんって元々の妖力弱いん?」 

「わかりません。妖力とか初めて聞きましたし…」

「多分やけど、馴染むまでの数日はダルいかもしらへんけど、それ以降は身体もようなるし、妖力も強なるから色々できるようなる思うで」

「そう…ですか」

仮にそうだとして、毎日あれをされるのはいくら何でも。

これはきちんと子狐丸と話し合わなきゃだめだな。今後のためにも…。


「ほな今日はゆっくり休んどき。仕事は明日からでもええから。夕方にでもタイマーだけ確認したって」

「すいません。ありがとうございます…」

正直、街まで歩いていける気もしなかったから助かります。


今日は休みだとみんなに伝えてくれる為に奈子さんは市場に向かい、入れ替わるように子狐丸が。

「奈子も帰ったし、もういい?」

「うん…。子狐丸、誤解の無いよう最初に言っておくね。私は子狐丸の事を大好きだし、子狐丸に初めてをあげたのも後悔してない。でも、私を見て?元気に見える?」

「…ううん。疲れてる感じがする」

「理由はわかるよね?」

「うん…」

「もうしないとは言いたくないよ。それは私も寂しいから。でも毎回毎回こんなに無茶されるのなら、しないという選択肢も選ぶ覚悟だよ」

「そんな!!」

「私、昨日は一回だけって言ったよね?」

「うん」

「結果どうなった?」

「十五回…」

数えてたんかい! ってびっくりな数字でてきたし! 私はその何倍?って今それはどうでもいいから!

「約束破ったね?」

「だって…瑠璃の事大好きだし」

くっ…。そんな悲しそうに言わないで。…ダメ。ここで甘やかしたらまた昨日みたいになっちゃう。


「それは理由になりません! 本当に私を好きなら私の事も考えて? 本当に辛いの。身体はだるいし、食欲もないし…」

「それ、妖力が馴染む過程だからだよ?」

「はい?その妖力ってなによ…」

「瑠璃は久しぶりに九城家に生まれた強力な力の持ち主だけど、妖怪の血は薄い。だから妖力の器は大きくても満たされてない状態が続いてた」

「えーっとつまり、最大MPは多いのに減ったままだったってこと?」

「そう。妖力だからMPではないけどね」

そこはどうでもいいの! 私のうっすいファンタジー知識から例えただけなんだから。


「ほぼ空の状態だった瑠璃に妖力はすぐに馴染まないから。もう一日、二日で楽になると思う」

「そんな事言って…したいだけでしょう!?」

「否定はしないけど嘘じゃないし…」

「じゃあなに?早いところ子狐丸に妖力を満たしてもらえば楽になるの?」

「そうなるね。 前にも話したけど手っ取り早く力を使える方法もこれ」

頭痛い…。じゃあ何?私は子狐丸にいいようにされて初めて力を使えると?


「このままでも二日もあればなんとかなるのね?」

「そうだけど…」

「わかりました。じゃあ二日。二日だけ我慢しなさい」

「無理」

即答だとぅ!?


「そう…こんなに私が辛いって言ってるのに無茶するつもりなんだ?」

「だからそれは妖力が…」

「もし私が風邪とかの病気で辛いって言っても子狐丸は無茶するの?」

「しないよ!」

「同じ事よね?私は今辛いって言ってるの。休ませてほしいってお願いしてるの」

「…わかった」

「ごめんね。落ち着いたらちゃんと受け止めるから」

「うん…」

納得してくれて良かった。



そう思っていたのに、子狐丸の落ち込みようは、それはそれはもう酷いもので…。

話しかけても上の空。ご飯も食べてはいても美味しそうにしてくれないし…。

こっちが罪悪感でおかしくなりそうな程。

一度好物を与えてしまった後に取り上げられたみたいな状態とでもいうのか。こんな無気力な子狐丸は初めて見た…。












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