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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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一夜開けて、今日は朝から奈子さんと一緒に、街の一角で仕事をする事になった。


昨日開いた境界の先へ結構な数の人が入っていったみたいで、持ち出されたものも相当な量らしい。

明確に開いてる期間がわかるようになってから、入る人が増えたのはいいのか悪いのか…。


仕事中はいつも奈子さんが一緒にいてくれるからだいぶ慣れては来たけど、これだけの数が集まると流石に気後れするよ…。

「ほな、ちゃんと並びーや! 守れんやつは出禁やからなー!!」

血気盛んな妖怪もいるから、揉めたりとかもあるし、これだけいるとトラブルが置きかねない。

初期の頃は並ぶという事が出来なくて喧嘩したりとかもあって、大変だったから。

最近はそれもほとんどなくなったけど、油断は禁物。

今日は見兼ねた自警団の人達も来てくれてるから安心ではあるけど…。子狐丸が来てくれたほうが安心できたのに…。

あの子も頼られてるから色々と頼まれごとも多くて、ゆっくり一緒にいられるのなんて夜くらいなんだよね。


考え事をしながらも聞かれるまま使い方の説明をしていく。

報酬は持ち込まれた物の中から依頼者がくれるという物をなにかもらうか、野菜とかと交換できる例の銀の石みたいなのをもらう場合もある。

元々の相場からすると破格らしいのだけど、私の専売特許みたいな状態だから、好きにさせてもらってる。

大体、家電一個の使い方の報酬に家電一つなんてもらってたら困ってしまうし。

持ち込む人も、報酬用にと私が喜ぶものをわざわざチョイスして持ってきてくれるようになったから、ありがたいのよね。服類とかは本当に助かります。



お昼の休憩までぶっ通して対応して、お昼は奈子さんとお弁当を食べながら雑談。

「今日はなんや元気ないな? どないしてん。まさか子狐丸とケンカでもしたん?」

「それはないです。ただ、わかんなくて…」

「子狐丸がか?」

「いえ…。その…男女の関係をすすめる理由というかタイミングといいますか…」

「なんや、まだ手ぇ出されとらへんの?」

「はい。子狐丸は気を使ってくれてるんだと思います」

「嫌ではないん?」

「子狐丸なら平気…だと思います」

「にえきらん返事やな。じゃあちょっと考えてみ?」

「何を…ですか?」

「せやなー、子狐丸が瑠璃に手を出さへん間に他所で女作ってたらどうするん?」

「そんな!! 子狐丸はそんなことしません!」

「言いきれるんー? 子狐丸も年頃の男子(おのこ)や。そういう欲求もあるで? この街には肉やらと引き換えに相手してくれるような女子(おなご)もいてるしな。狩りが出来る子狐丸はモテるんよ?」

まさかあの子…。毎日狩りに行ってるのはそのため!? ううん…そんなはずないよ。


「うちかて独り身やったら誘惑してたで? 美形やし、強いし、優しいし…」

「源さんに今のセリフ伝えていいですか?」

「やめーや!! 洒落んならんて!! たとえ話や!」

「冗談です。 その…奈子さんは初めての時怖くなかったですか?」

「せやなー…。 怖さとかより、好きな相手と結ばれる、いう嬉しさのが大きかったな。 まぁそれもあまりの痛みでソッコー後悔に変わったけどな! あれもいい思い出やわ」

「怖いこと言わないでくださいよ…」

「なんにせよ、瑠璃ちゃんの気持ち次第やと思うで? 確かに焦らして焦らして引き止めておくってのも手ではあるんやけど、度をすぎると他に行ってまうよ」

それは…。五代目から言われた捨て台詞からも想像はできる。あの人は堪え無さすぎだとは思うけど。

同じ事を子狐丸に言われたら…。

無理…。耐えられる気がしない。


「子狐丸の事好きなんやろ?」

「それは間違いないです。もう他に誰かを、なんて考えられませんし」

「なら、その思いだけでも伝えたるといいと思うで。気持ちは口に出さな伝わらへんよ?それは人も妖怪も同じや」

「はい…」

「色々言うたけど、子狐丸は昔から瑠璃ちゃん一筋やし、他に行くなんてあり得へんから心配せんでもええ思うよ。ただ、瑠璃ちゃんの想いだけは伝えたると喜ぶ思うで」

「わかり…ました」

まだ怖さはあるけど、私の気持ちを子狐丸にきちんと伝えてないのも確かだから。せめてそれだけははっきり伝えよう。

そう決意して、午後も仕事をこなした。



大量の銀の石と貰った現世の物。今回は小さな電気スタンドと、香水とか服類も沢山。

私、衣装は殆ど持ってないから助かるんだよね。

それらを奈子さんも一緒に運んでくれてる。

「いつもありがとうございます」

「ええよ、うちも恩恵はあるし。瑠璃ちゃんのおかげで家の改装やら建て替えとか仕事もようさん増えたからな!」


帰り途中に境界になっているモールへ立ち寄り、残り時間とタイマーのズレがないかも確認。

「大丈夫ですね。昨日設定した通りズレもありません」

「ほなまだ当分は安心やな」

まだ六日はあるし私の仕事もしばらく続きそう。



家まで奈子さんに送ってもらい、”頑張りや!“と謎の応援をされ…。

一人悶々と悩みながら夕食の仕度をしていたら、来客が。

「すいません、だれかいてはります?」

「はーい!」

応対に出たらキレイなお姉さんが…。

「子狐丸はんは今いてはります?」

「まだ帰ってません。何か御用でしたら私が伝えておきますけど…」

「…あんさんが九城の小娘かえ?」

お姉さんはそう言いながら私を舐めるように見てくる。視線が感じ悪い…なんなのよ…。

「なんですか?」

「何もあらへんよ〜。 ほな伝言頼めるやろか? ”また来てくれるん待ってるから“ と伝えてもらえる?」

「はい。 お名前をお聞きしても?」

「必要あらへんよ〜。伝言だけで伝わるはずやから」

それだけ言うとお姉さんはさっさと帰ってしまった。

何あれ! ムカつく!! 明らかにバカにされた! たしかに私にはあんな色気なんてないし、スタイルも負けたけど!

…子狐丸。あの子!! そう、そういう事…。よーくわかったよ! 



「ただいまー! 瑠璃、玄関でどうしたの?」

「……さっきすごくきれいなお姉さんが訪ねてきました。”また来てくれるん待ってるから“だそうです」

「うん? 誰だろ…話し方からすると奈子だと思うけど、奈子なら瑠璃も知ってるはずだし。名前は言ってなかった?」

「伝言を伝えればわかると言ってました」

「瑠璃、話し方変だよ。どうしたの?」

「知りません!」

「瑠璃!!」

「待ってるらしいから行ってきたらどうですか?大人できれいなお姉さんでしたし、子狐丸もそっちのがいいんでしょう?」

「瑠璃が何を言ってるのかわかんないよ…。どうして怒ってるの? 僕なにかした?」

「私は知りません! 子狐丸がよく分かってるんじゃないですか?」

「本当にわかんない! その他人みたいな話し方やめてよ…」

知らないよ! まさか浮気してたなんて…。


……浮気?明確にお付き合いしてるわけでも夫婦な訳でもない。なのに私に責める資格なんてあるのだろうか。

奈子さんの言うとおり、きちんと気持ちを伝えてハッキリさせておかなかったから…。

今更後の祭りだ。しかも今まで散々子狐丸を傷つけてきた私に怒る資格なんて…ない。


「瑠璃!」

「なに?」

「どうしたの? 今日の瑠璃はいつもにましておかしいよ?」

普段からおかしいみたいに聞こえるのだけど気のせいでしょうか?


「ご飯作るからお風呂行ってきて」

「瑠璃!」

「いらないの?ご飯」

「…わかったよ」

追い払うように子狐丸をお風呂に行かせて、ちゃぶ台に夕飯のセッティングをした後、家を出た。


あのまま家なんてにいられないよ…。








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