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境界の娘 ~人ならざるものと生きていくのも楽じゃないけど、それなりに楽しくやっています~  作者: 狐のボタン


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子狐丸と妖魔界へ移住して数日。

奈子さんの仲介もあり、いろいろな妖怪の人たちの依頼を受けて、現代の物品の扱い方を伝えた。

お陰で街の市場になら一人で買い物に出られるくらいには馴染んでしまったし、みんなも当たり前に声をかけてくれたり、サービスしてもらったりと平和に過ごさせてもらっている。

子狐丸も街の人に頼まれては獲物を取りに行ったり、現代知識を活かして源さんの大工仕事を手伝ったりと忙しくしているみたい。


私が自分の意思で妖怪の人達と積極的に関わるようになったからか、自分の持つ力というのが少しわかってきた。

例えば、街で揉め事が起きていた時。

怖かったけど、知り合いだったから無視もできず、仲裁したらあっさり解決したり。


一番大きな収穫としては…

「瑠璃ちゃん! 開いた!! 確認してもらえへん?」

家に駆け込んできた奈子さんと、現場へ。


「今回はどれくらいの規模なんですか?」

「相当デカイで。色々ありそうやからみんなわくわくしてん」

「じゃあ早く確認しなきゃ危ないですね」

「せや! 毎度呼び出して悪いな」

「かまいません! みんなの安全に直結しますし、これくらいさせてください」

こちらに来てから、本当に良くしてもらってるもの。


いつも行く街から少し離れた森のそばにはびっくりするくらい大きな建物が出現していた。

これは、モール…? 

中学の時に友達と行ったことがあるけど、何もかもが高い。まぁそれも当然か、東雲が運営してるのだから。

高校生になり、一人暮らしのため引っ越してからボロアパートの近くにもあるのは知っていたけど入ることはなかった。

そのモールが目の前にドーンと…。


「これ、大型のお店です。 ありとあらゆるものがあるから便利ですが、広いから気をつけないと…」

「せやな…。肝心の時間は?」

「えっと…七日…。七日!?」

「えらい長いんやな。じゃあ当分は出入りしても問題ないな」

「そうですね。 タイマーはセットしておきますし、毎日確認にも来ます」

「手間やけど頼むわ。ほなみんなに知らせてくるな! また瑠璃ちゃんも忙しなるやない?」

「頑張ります!」

みんな色々と持ち出してくるだろうし。


と、まぁこんな感じに境界が開いた時、開いている残り時間がわかるのよね。

初めて見たときは残り時間が数分で、入ろうとするみんなを子狐丸に止めてもらったけど、それでも入り込んでしまった人がいて…境界が閉じてしまい、その人は戻ってこなかった…。

もう二度と同じ事が起きないように、子狐丸や奈子さんにも協力してもらい周知させて、境界が開いたらまず私が確認するようになった。

どうも境界の広さと残り時間は比例しているようで、今回みたいな大きなのは私も初めて。


子狐丸曰く、こんなに境界が頻繁に開くはずはないと言っていたけど、多分私がいるからだと思う…。

だからこそ、こちらの人達を危険な目に合わせないためにも残り時間の確認と、タイマーのセット、後は拡声器も設置するようになった。

タイマーも拡声器も奈子さんの倉庫にあった物で、タイマーをおいている理由は言わずもがな。

拡声器は残り時間が短くなったときに、警告のため。

もう一つ大切なものは、入る時に名前を書いておくもの。出てきたら斜線で消す。これのお陰で中に誰かがいるかどうか一目瞭然で、管理は街の自警団の人たちが交代でしてくれてる。

これらの安全対策が功をそうして、初めの一度以降、犠牲者はいない。



明日くらいから忙しくなるなぁと思いながら帰宅。

ちょうど子狐丸も帰ってきた。

「瑠璃、でかけてたの?今日は家にいるって言ってなかった?」

「そのつもりだったんだけどね、境界が開いちゃったからその確認」

「ああ。それで…。みんな慌ただしかったけど、そんなに良さそうなの?」

「モールがまるまる来てるから、楽しめると思うよ。好きに持ち出せるのなら私も入りたいくらいだもん」

「瑠璃は駄目だよ!」

「わかってるよ。何が起こるかわからないんだもんね。誰かを巻き込みかねないから行かないよ」

「ならいいけど…」

最近子狐丸が心配性というか、過保護なのよ。前はここまで口うるさくなかったと思う…。

いや、そうでもない? なんとなくそんな気がするだけ…。


「瑠璃、お腹空いた!」

「すぐに用意するね。狩りに行ってたならお風呂入ってきてね。獣臭いのヤダから」

「むー、わかったよ…」

渋々お風呂に向かう子狐丸。

あの子お風呂嫌いなんだよ…。狐だと思えば納得なんだけど、最近はいつも大人スタイルだから、キレイにしててほしい。

一度なんて狩りをして、相当大きなイノシシを担いできたらしく、全身から凄まじい獣臭がしたときは、鼻がおかしくなるかと思うほどだった。

渋る子狐丸をお風呂に連れていき、小さくなってもらって全身丸洗い。

抵抗する子狐丸との攻防は凄まじかった。


そのときに約束したんだ。洗われるのがいやなら自分で入りなさい。と。

お風呂上がりに私のチェックもあり、不合格ならお風呂に逆戻り。

その代わり、ちゃんとお風呂できれいになれば美味しいご飯にデザートもつく。

今日はオーブンレンジでカスタードプリンを作ってあるから喜ぶはず。


夕飯の仕度をしていたらお風呂から出てきた子狐丸。

「きれいになったよ!」

「おいで?」

近寄ってきた子狐丸に鼻を近づけてくんくん…。

「うん、合格! 少しは慣れてきた?」

「かな…。前に臭かった時、瑠璃にすっごい顔されてショックだったし」

あれはね…。普通の女子なら愛想尽かしてるレベルだったもの。


「瑠璃はいつもいい香りだよね」

「こら、女の子の匂いを嗅いだらだめだよ?」

「僕と瑠璃の仲なのに?」

「それでも駄目! 恥ずかしいから…」

「嫌だからじゃないならわかった」

そういう言葉遊びみたいに私の真意を拾ってくるのやめよう?

嫌じゃないよ。嫌じゃないけど恥ずかしいの! 


「子狐丸、今日も夕飯の後によろしくね?」

「わかってる。 でももう教えるようなことも殆どないけどね」

「そう?」

「うん。後はもう…ね?」

「ね?って何…」

「九城家当主の本来の力っていうのは僕と契って初めて使えるものだからね」

それってつまりそういう事よね…?

結婚っていう形だけのものじゃなくて文字通り身体の繋がり。


子狐丸への抵抗感はない。単に私の決心がつかないだけ…。

だって乙女にとって一生に一度の事だし、ものすごく痛いってのは知識として知ってる。

何より私が力を得たい、なんて理由のためにするのはなにか違う気がして。

みんなはどんなタイミングで、どんな思いでこの先へ進むのだろう。

雪乃さんなら教えてくれたのかな…。


「瑠璃?」

「…ご飯にしよっか。デザートもあるからね」

「うんっ!」

今はまだ…このままで…。







あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

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